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6 三日目。栃木・福島(4)

 つい口ずさんでしまいます。

「あいづばんだいさんはー、たかーらーのやーまーよ……」

 その声音に如実に表される、風吹きすさぶ、しかも夏なのかと疑うくらい寒い、磐梯山ゴールドラインでした。

 標高1818mの主峰・磐梯山と、猫魔ヶ岳(ねこまがだけ:1404m)の間を通り抜ける山岳ルートです。気をつけないと、風の圧力に、コン吉ごと持って行かれそうです。

 思い返すにこれまでは、木々生い茂る緑が厚い山ばっかりだったのですが、ここに来て初めて、岩肌、土肌の目立つ、高山のイメージそのままの山と相まみえたのでした。


 それにしても『猫魔ヶ岳』って、なんかヤバいネーミングですね。(笑)

 マジですかと思いました。(笑)

 その名には、グエンによると、いくつかの『もっともらしい』由縁があるとのことです……。


 登るにつれ、背後にコバルト色に、両腕を広げるように広がっていくのが猪苗代湖です。東北第一位(日本第四位)の大きな湖で、周囲49km。ウォータースポーツのメッカであり、湖水浴場も多数あります。夏、すなわち今の時期ともなれば大混雑する、たいへん人気のある観光地であるのでした。

 と言ってもそれは現世でのことですから、この世界ではどうだかわかりません。なんたってここの彼らには、自由な海がありますしね……。

 あんがい蘭も、今ごろのびのびと泳いだりしてるのかもしれません――と思って、なぜか慌てたように顔を赤くして、背を返すのでした。


 最初、表側(南側)から見えた磐梯山のその姿は、いかにも秀麗で、性根の優しさを感じさせられたのですが、猫魔八方台を越してからの北側、裏磐梯は噴火跡も荒々しく、岩肌の角も目立ち、地球の怒りのさまを思い知らされたのでした。


 だいぶ下ると国道459号です。進路を西に取り、やがて桧原湖に至ります。

 県道64号に乗り移り、湖西岸を北上です。

 あえて湖に“そ知らぬ顔”をしてみせて――


 午後4時。

 ラインにして約274km。


 湖の北端域に到着したのでした。本日はここまでです。

 湖に無関心だったのは当然、蘭と一緒に見たいから、という至極まっとうな理由があったからです。ですが、ここで少し考え直します。彼女の話に付いて行くためには、最低限の知識は押さえておいた方がいいかもしれません。さっそく、パムホを操作します。

『桧原湖。標高822m。面積は日本28位。湖岸周31.5km。最大水深30.5m。透明度6.5m。成因は、磐梯山の噴火に伴う堰止めによる』

「ふむ……」

 第一の特徴は『標高822m』、高原の湖だということでしょう。

 水温は低めで、水泳にはあまり適さないもようです……。

 行はそこまででページを閉じます。あとは、蘭に存分に語ってもらえばいいのです。

 何軒かあった内から一つ、ペンションに二部屋リザーブし、蘭を待ち受ける準備を整え終わったのでありました。

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