4 一日目。栃木(5)
「次に“簡単なこと”は何でしょう」と蘭が催促します。
「うーん。この世界に二人とも来たのか、それとも違うのか、でしょうか……」
「この世界に訪れたのは、組み合わせで考えると、
(1)文太郎×花子
(2)文太郎×ハナコ
(3)ブンタロー×花子
(4)ブンタロー×ハナコ
の、どれかである、ということですね。
(1)はさきほどの第一の説だし、(4)は第二の説です」
「そうです。で、『花子さんレベルの人間ならば、その登攀跡を見つけられたはずです』という話がありましたので、理屈として、
(3)ブンタロー×花子
を、推したいところです」
「別の地球のブンタローは、この世界に来ても、富士山登攀はしなかった、ということですね」
「はい。ぼくらの文太郎は、ここではない別の世界に行き、そこの『富士山を直登し頂上を通過した』はずなのです。ですから――あの富士山では、“それ”は実現不可能です。ありえない……」声が自然に細まります。
二人とも、文太郎の“極限ルート”を思い出していたのでした。同時に、“客死”の覚悟のことも。この世界では、“あの”山ならば、登るだけで“死ぬ”ことが可能だったのです。
蘭が注意深く発言します。
「これは……どの組み合わせなのかは……データ不足。今の段階では、決定できないことのように思われます」
「了解です……」
行は少し項垂れたのでありました。
「次に簡単なことは何でしょう」
「一気に難しくなります。まず、“預言者・ハナコ”は、何をもって預言者になったのか、です」
蘭が顔を明るくさせたのでした。「それには考えがあります」
「どうぞ」
「富士山で出会えなかった彼女は、そのあと東京に来て、文太郎さんの画像を持って、『この人を見かけなかったか?』と聞いて回ったのだと思います! それも、印象に残るくらい強烈にです。なにしろ詩人ですから、得意な詩と、画像を組み合わせて、この世界のメディアを総動員して、超ヒットを現出させたのかもしれません」
「なるほど……!」
「こうして名前が残ったくらいだから、実際に大成功したはずです! さすが花子さん! そしてその後、“ブンタロー”が“神”として降臨したので、“ハナコ”は自動的に“預言者”にされてしまったのです!」
行は心からの言葉を発したのでありました。
「素晴らしい! 感動してしまいました。大いにお見それしました!」
「えへへ……」顔を赤らめてぽりぽり。
「探せば、ビデオくらい残ってるかもよ! それが証拠になる」頭がいい。
そのうえ可愛い。どんどん魅力にハマる行だったのです。




