第25話
ガルシア様とお茶会をして、ロン国の役人と共に王城を視察したり、ハディ国の役人から話を聞いたりしていたら、あっという間に帰国の日になった。
「メイリン様、手紙を書いてね。また遊びに来て頂戴」
「えぇ、ぜひ。ガルシア様もまたロン国にいらしてください」
そんな挨拶をして、ガルシア様に見送られながら王城を後にして、ロン国へと向かう。
帰り道に見る景色も、ハディ国へ向かっていた時と同じように美しい。
ガルシア様とは色々とお話させていただいて楽しかったし、ハディ国の珍しいものや事柄は良い思い出となった。
けれど、やっとロン国に戻れるという思いも強かった。
《《あの方》》にやっと会える……という想いが。
ただしその《《あの方》》というのがイェン兄様と皇帝陛下どちらなのか、どちらに会えることを楽しみにしているのかは、自分でもよく分からなかった。
――やっとロン国の王宮へと到着すると、安堵がまず最初に来た。
そして次に緊張、胸の高鳴り。
……王宮へと到着すると、まずは皇帝陛下への挨拶と報告のため、玉座の間へと向かう。
久しぶりに見た玉座にいる皇帝陛下は、《《皇帝陛下の顔》》をなさっていて、わたくしは先程までの緊張が嘘のように、ゆったりとした心持ちで口を開く。
「皇帝陛下。ハディ国への訪問を終え、ただいま戻りました」
「うむ、良くぞ戻った。して、ハディ国はどうであったか?」
「はい。ハディ国は自然の豊かさと文化の発展を両立させ、美しい風景を生み出しておりました。また、ダンスという男女二組で行う踊りも実に優雅で、魅力的でございました」
「ほう……」
「そして何よりも食べ物でしょうか。野菜は新鮮な状態で食すため瑞々しく、肉は柔らかく、またスイーツという甘味は甘く・柔らかく・冷たく、新鮮な味わいでした」
「なるほど。そなたがハディ国を楽しめたようで何よりだ」
「はい。ハディ国では先日ロン国へといらっしゃったガルシア様とお話する機会も多く、楽しい時間を過ごさせていただきました」
「それは良かったな」
わたくしの報告を聞いた皇帝陛下は、威厳のある表情に薄く笑みを浮かべている。
これでわたくしの報告はおしまい。
他の政治的な話に関しては、同行した役人が話すであろうから、わたくしからお伝えすることはこれ以上ない。
……そのはずなのに、皇帝陛下が何かを待つように、じっとわたくしの方を見つめている。
わたくしが皇帝陛下の意図を掴めず、ただ真っ直ぐに見つめ返していると、皇帝陛下が先に口を開く。
「そなたのいない数日間は、実に寂しいものであった。思わず仕事ばかりしてしまうほど、耐え難いものであった。これからは、私の傍を離れないでくれ」
皇帝陛下にそう言われて、わたくしは目を丸くする。
しかしすぐに皇帝陛下の意図を理解して、スッと微笑みを返して答える。
「……わたくしも寂しい思いをしておりました。これからは皇帝陛下のお傍を離れず、変わらず皇帝陛下の癒しとなれるように務めさせていただきます」
皇帝陛下の言わんとしていることはこうだ。
他の妃ではわたくしの代わりにはならないし、興味をそそられる者はいない。
そしてこれからは、わたくしを後宮の外に出したりはしない……ということだ。
要は役人たちの思い通りにはならなかったぞと、それを見せつけるための茶番のようなやり取りだ。
わたくしたちは、ニコッと微笑みあった。
役人たちが悔しそうに、残念そうにしているのを横目に見ながら。
そして皇帝陛下が満足そうな笑みを浮かべる。
「ではメイリン。今宵もそなたの宮へ行く故、それまでしばし休め」
「かしこまりました。お待ちしております、皇帝陛下」
わたくしも微笑みを浮かべて答えていたけれど、わたくしの宮で会えると……《《いつもの皇帝陛下》》に会えるのだと思うと、ドキッと胸が高鳴るのを感じていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
「続きが気になる!」「面白かった」「応援したい」と思っていただけましたら、画面下側にある**【ブックマーク登録】や、【↓↓↓↓↓の評価(星マーク)】**をぽちっと押して応援していただけると、執筆の大きな励みになります!
読者様からいただく応援の一つひとつが、物語を書き進めるための最大のパワーです☆
次回のエピソードもお楽しみに!




