だいごわ!
ごわめでする。読んでいってね。
変態が帰ったのち、ひとり特に用事のなかった俺は校内をぶらついていた。そろそろだし試験の結果発表に向かいましょうかね。備品保管室の書かれたプレートの吊り下がる部屋の片隅で、椅子を前に後ろにと遊ばせていたのも落ち着かせて立ち上がる。この部屋は備品保管室と言う名の物置部屋らしい。どう言うふうに使うのかがわからない笑でできた不気味な案山子が机の上に積み上げられていた。埃を被った掃除用具でも入っていそうなロッカーはその藍色を禿げさせて静かに日光を浴びている。地面には新聞紙やよくわからん木片が散乱していてまさかこの部屋が使われているものだとは誰も思えまい。今日はいろんなことがあったなあと感慨深い思っていると足音が近づいてくる。ゴツめの靴が地面を擦れる音と軽快なリズムが地面に響く。そのおおよその数2人分。固まっているとコツコツ、ガッガと鳴るその規則的な音はだんだんと大きくなって……!?まずい、この部屋かもしれない。一応大丈夫ではあろうが面倒ごとは避けたい。こんな部屋を使うやつなんてほぼいないはずだ。ブーメランな気もするが、どこか隠れられる穴場はないかと首を360度回転させる。流石に嘘だから安心してほしい。やがて覚悟を決める埃を被ったロッカー!正直入りたくなんかないがと葛藤していると足音は部屋の前で止まる。ええいままよと急いでロッカーを開けて中に入ろうとする……が中から飛びて出てくる大量の本。なんとか全てをかろやかに避けきる。今の動き芸術点高すぎだろなんて酔いしれるのもしょうがない。おっと危ない、本来の目的を忘れるところだった。よくわからんゴミだらけの地面のお陰というべきか、散乱した本は意外にもその場に馴染む。まあいいだろと颯爽とロッカーに身を包む。数秒後にドアの開く音だけが聞こえてきて、
「ここならおそらくいいでしょう」
「北の方に出張があるものでな」
一言目を発したのはおそらく女、別に記憶にはないがどこかしらで聞き慣れていたような錯覚に陥る、そんな不思議な声。こんなところになんのようなんだか。して、二言目をしゃべったそいつの声は聞き覚えがない。低くて威厳がありいかつい。
「どうだ……例の適正の人物は?」
「今の所、ノーラヒ・ターミフやイグレナ、ロノファ・ログヴァール等々、魔法力において優れている人物はいますが、そちらのほうはどうも……」
唐突に出てきた名前は一人を除いて全員知っている。まさかの身近さだ。言い淀んでもごもごするような語尾で話す様子を見るに、上司と部下だったりするのだろうか。少しの間を置いてからより重く低く言葉が発せられる。
「ミギウデに聞いたところ二人ほどいるらしいが……」
空気が凍るのが肌でわかる。俺はロッカーの中にいるはずだがその圧は錆びた開閉部分の隙間からでもわかった。言い方から察するにそこそこに軍部の中でも地位が高いであろうあの試験官、ミギウデと同等かそれ以上の地位のお偉いさんらしい。尚更こんなところでしゃべる意味がわからない。
「……ええ、大体どなたのことを言っているのかはわかります、が両者魔法“である“のかどうかはわかりません」
まだ精査が必要ということだな?と納得した様子の上司。これじゃ部下らしき女が可哀想だ。威嚇とも取れるような圧によって圧迫感を与えてしまえば部下も報告がしにくいだろう。何かをやらかしたわけでもあるまいし。なんのことについて話しているのかハッキリとは予想も理解もできないが、魔法以外で優れている人物を探しているらしい。まったくもって妙だ。少なくとも軍部にとって何事においても魔法の才があるものを採用しないのはおかしな話。自分たちが魔法で成り上がってきたはずであって、それ以外を奨励することは不都合だと考えるはずだ。この上司?はいったい誰で何を目的としているのだろうと思考のドツボにハマっていると鼻がムズムズしてくる。おいおい、待ってくれよ、この状況、どう見ても体験しても考察しても俺の存在がバレる訳にはいかない。口封じとして消される可能性すらあるのだ。そんな俺は全力で、自らの鼻をもげるくらいに抑えてくしゃみを防ごうと
「くちゅん!」
「む……」
ダメだった。なあ軍部。金持ってるんだから掃除しとけよ。何年この部屋使ってないんだよ。おかげ様で絶賛ピンチ。今の音は?と重い足音が近づいてくる。ああ終わりだ。今からどんな酷い仕打ちにあうんだろうと未来の自分の身を案じているが一筋の可能性を考えつく。
「メイメイ:不恰好ロッカーかー……(超超爆絶全力本気の小声)」
名付けが済んだ俺はロッカーを操り……扉の噛み合わせを歪ませる。ガンガンガン!ゴン!その衝撃で歪み、内側に凹んだ部分を介して頭に威力は伝播する。痛え!……けどなんとか声は漏らさない。その直後引っ張られるロッカー。いやなんて勢いと力なんだろう。サァッと血の気が引いたが今は俺の命名した武器だ。なんとか持ち堪える。
「ふん……立て付けの悪い……」
ならば……というときにロッカーに浮遊感を感じる。そう、持ち上げられているのだ。耐えたのに!?耐えたのに!?こんなに酷い仕打ちがあるだろうか。そのまま上に掲げられているのが感覚でわかる。棺桶に入れられ埋葬されんとする気持ちを味わっていると
「壊してみるか」
という無慈悲なワードが下から響く。絶体絶命の状況でいて、かつ声なんか出せない絶望的な今このとき、に救いの一手が舞い込む。
「チュウ……」
「ネズミだったみたいですね……」
女の台詞を聞いて落ち着いたのか血も涙もない上司は
「紛らわしい」
と吐き捨てて横倒しにしたまま俺インザロッカーを横たわらせる。ネズ公。お前はヒーローだ。ネズミ様マジ素敵、としみじみとヒロインの気分を味わう。やっぱり俺の運はいいらしい。最初から分かってたけどな?最近、幸運の女神に愛されすぎちゃって困っちゃうぜと余裕をもったのも束の間。
「しかし……不良品は処分すべきだろう?」
またもや尋常じゃないエネルギーと気配を感じる。実はわかってんじゃねーの?とヤケになるが当然だ。ロッカーの中で一生を終えるのは勘弁で、なんとか逃げ出したいところだが自分で細工した歪みがそれを阻む。今日は何回走馬灯を走らせればいいんだろうな。ロノファとの戦いといいノーラヒとの茶番といい。まあそんな馬実際は特に走っちゃいなかったが上映してみるかなと意識してもスラム街にいたとき以前の記憶が定かではない。しかしそんなこと気にしている余裕もなく。まな板の上の鯉な俺は静かに処されるその時を待っていようとする。
「今から出張の準備でしたよね?代わりに私が処分しておきましょう」
おう?圧が止む。
「確かなことに。既に日没か」
誰もが俺の気持ちをわかってくれるだろうし共感してくれるだろう。しかし、しかしだ。ここでまた調子に乗りすぎてもコンマ数秒でフラグを回収してしまいそうなので心を落ち着かせる。うんうん、明鏡止水。明鏡止水。できる訳ねーだろ。ジェットコースター並みの温度差で風邪ひいて風吹いて桶屋が儲かるわ。何処からか湧いてきた自分でも意味のわからない例えが出るほどハイになっていると足音の重い方が遠ざかりガララと音を立てた扉が閉まる音がする。それと同時に残っていたであろう女が近づいてくる。これはこれでマズイか?と思っているとはっきりとした声で、
「部下にでも頼むかな」
なんて砕けた口調が聞こえる。やはり激ヤバ上司といて緊張したのだろう。……詰まるところ助かったということである。女が出て行く音を聞いた俺の額が痛み出す。たんこぶができていた。痛いしつっぱりみたくなっている。まあこれで済んだだけマシだ。五体満足ありがてえ。さて部下なるものが来る前に早く出よう。しかしロッカーはぴくりとも動かない。上下感覚が先ほど無くなっていた俺だがだんだんと戻ってきた。多分出口が下を向いている。
「チュ?」
助けてくれよネズミさん。藁にもすがる思いだったが帰ってくる鳴き声はなかった。
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あれから2時間くらい経った。このまま俺は餓死するのだろうか。お腹と背中がくっつくどころか入れ替わりそうだ。どんな化け物だろうかと笑みを貼り付けるがが心は笑っちゃいない。暇だわ腹減ってるわ結果発表は見れねえわ。ロッカーと結婚したわけでもないのにこいつは俺を離してくれないらしい。するとドアが開く音。まさか遂に部下が来たのか……開けさえしてくれればそいつを消せばセーフなはずだ。シュッといってガッといこうとイメトレをしていると数時間前に聞いたはずが懐かしく感じる声が聞こえる。
「メルさん〜?どこにおられるのですか〜?」
わざわざ俺を探しに来てくれたのか。レノン様万歳だわ。ここだーと声を上げるとえ?どこにいるんです?なんて言う姉御を誘導して出してもらおうとする。
「お前の力で持ち上げて開けてくんね?」
焦りながらもわかりましたと返してくれる。いやくださる。すぐに縦に直されたロッカーだがスペースがないので自分では出られない。その旨を伝えて開けてもらおうとする。お前ならできる!行け!
「では……い、行きます!」
勿論引くんだよな?そうだよな?なんて考えも虚しく、焦ったそいつは容赦なく拳を叩き込む。結論から言おう。空いた。扉ごと、俺の体ごと、俺の後ろ側の側面ごとだったが。何日振りか薄れゆく意識の中なんとか言葉を紡ぐ。確かに行けとは言った、が。
「逝かせろとは言ってねえよ……」
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目を覚ますと白い天井。知らない天井だ……なんてことはなく、手触りと枕でわかる寮のベッドの感触。あやうく閉所恐怖症になるところだった俺は天を仰ぎ見る。
「……起きましたか!大丈夫なのですか?」
俺の足元に顔を伏せていたそいつは体を起こす。心配そうに見つめてくるレノンだが大体お前のおかげでありせいである。よくみると顔に涙の跡がある。俺のことを思って泣いてくれていたのなら嬉しいんだが原因を考えると複雑だ。
「治癒魔法はかけたのですけれど」
とそいつが言う通り痛みも腫れも体には残っちゃいなかった。落ち着いてきた俺は気になっていたことを聞く。
「試験どうなった?」
その後の自慢げな顔で察する。
「これからよろしくお願いしますね!」
満面の笑みである。
「ああこちらこそ」
疲れた俺は声のトーンを下げて返す。試験に二人とも受かったことは喜ぶべきことであるが、こんなことがこれからも起こるとなると超憂鬱。俺の直感としてなぜだか既に長い付き合いになる予感というものが脳をよぎっていた。
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夜、レノンに王子戦の条件報酬を祝勝会も兼ねてやろうということでキッチンのある食堂に来ていた。ようやく郷土フルコースにありつけるのである。待たされていたことと腹が減っているのもあって、俺の期待は高まりに高まっていた。食堂入ってすぐ、そこの光景は悲惨であった。ビビるほどでかい巨漢が料理を貪り食っていた。背後には食べ散らかされたゴミやペロリとかけらも、カスすら残っていない皿が山積みとなっていた。そう、食堂の材料が無くなるほどだ。唖然とするレノンと俺。
「殺す」
当然のことだ。俺の食を邪魔したのである……血塗られたかわいソードを取り出した俺はそいつ向かって突進しようとするが距離は縮まらない。
「授業以外で攻撃するのは得策ではないですよ!やめなさい!」
後ろから肩を抑えられる。悲しいかな、抵抗するわけにもいかず。微妙な身長差で宙に浮かされた俺に気づいた巨漢はくちゃくちゃと口を働かせながら喋りだした。
「早いものクチャクチャ勝ちクチャですよねクチャ」
大変マナーもへったくれもない。やっぱり刺していいかな。
「そんなにクチャ欲しいのならクチャ」
まさか意外と話がわかるやつかと思ったがすぐにそれは否定された。
「はいクチャこれ」
そいつが見せてきたのは大量のブロッコリーの茎。好き嫌いでもあるんだろうか。舐めてんのか?マジでよ、あん?暴れようと腕をぐるぐるするがまたもやレノンに止められる。悲しいですけれどもうないのなら仕方ないでしょう……と諭される俺も現実を見る。確かにその通りだ。冷静になった俺は大人になってこれからのことを考え出す。まだキレてるけどな。さて、これからもこういうことをされたらたまったもんじゃない。
「お前……一生食堂に来ないっていう風に約束しろ」
「嫌に決まってるじゃクチャないですかクチャ」
睨み合うも勝負はつかない。そこで何処からともなく現れてくる変態が一人。
「話は聞かせてもらったよ……」
いつからいたんだよ。ノーラヒはぬぅっと間に立ってある情報をこぼす。
「二日後に無人街で潰し合いOKの一年生交流イベントがあるらしいんだ……そのときに戦いで決めるのはどjかな?」
詳しい内容はわかんないんだけどねと付け加える。変態にしてはいい意見だ。レノンもその情報に驚いて拘束が緩くなっている。にしても何処から仕入れてきているのだろうか。
「よし!二日後に勝負だ!」
負けたらもう食堂くんなよと条件を出すと
「僕ちゃんに……クチャいいとことがないよね?」
そう言われるとそうだ。どうしようかと迷っているとクチャらせながらそいつは条件報酬を述べる。
「じゃあ……クチャもし僕ちゃんが勝ったらその女の子頂戴よ」
「乗った!あとから無しはダメだぞ!」
「メルさん!?」
レノンは別に俺のものでもなんでも無い。しかしもとから負ける気はない。全力で切り刻む。
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後から聞くとあいつはデチャフという有名な大喰らいだったらしい。二日後に絶対潰してやると息巻いていた俺は現在絶賛正座して、レノンの説教を受けていた。
「その……ごめんじゃん」
「私はものなんかでは無いのですよ?」
ドスの聞いた声で囁く。あ……これは割とキレている。
「絶対負けないし……あのままじゃ飯もままならないだろ……許してくれ」
流れるように土下座を決め込む俺。飯を食うためにプライドなどない。横であのノーラヒにすら
「女の子はもうちょっと丁寧に扱いなよ……」
と言われる屈辱を味わいながら
「絶対ですからね???」
と圧をかけられるのだった。俺が悪いわ、これは。何回か迷惑をかけられているからかギリギリ縁は切られていないが割と危ない。最悪奥の手を解放してでも絶対に勝とうと心に決めるのだった
割と主人公は空気に流されやすい。可哀想ではあるけど最後のはメルくんが悪いわ。




