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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
スキー旅行編

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95/162

95.最終日

 今日はスキー旅行6日目。


 昨日はフランツに招待された舞踏会でいろいろとあったけれど、帰ってきてすぐに寝たからか朝は快調に起きることができた。


 そして午前のスキー実習に参加すべくスキー場に向かっていたのだが。



 バシッ!


 ソフィアがオレの左頬を平手打ちで強く引っぱたいた音が、みんなの集合場所に響き渡る。


 ソフィアの目には涙が滲んでおり、傍にいるアンジェリカは顔を両手で覆ってしくしくと泣いている。


「なんだ? 朝っぱらから痴話喧嘩かよ」


「もしかして三角関係のもつれかしら?」


「これって修羅場じゃねーのw」


 オレたちのことをあまり知らない連中からは好き勝手言われて好奇の目で見られている。


 でもそういう関係じゃないんだよ、オレたちは。


 ソフィアは何か言いたげだったが、クルッと後ろを向いて何も言わずに行ってしまった。


 アンジェリカも続いて去っていく。


 何がいけなかったのか、それがわからずにオレは途方に暮れていた。


 それからすぐあとに、オレの脇腹へ強烈な打撃がボコッ! と入れられた。


「ゲホッ! 痛ってーなぁ!」


「タツロウ! あんたソフィアに何したのよ? 事と次第によっちゃ、あたしが許さないから!」


「ちょっと待てよサンドラ! オレは何もしてねーよ、むしろ何が悪かったのか聞きたいくらいだ」


「ウソ言うんじゃないわよ! ソフィアは何も理由無しに引っぱたいたりしないから」


「まあまあ、状況を確認しないと原因は掴めないよ。まずはタツロウの言い分を聞いてみよう」


 サンドラが強烈に問い詰めてきたのだが、マルコが間に入って場を落ち着かせてくれた。


「助かったよマルコ。でも、オレは本当にわからないんだ」


「もちろんそれは信じるよ。だけどさ、ソフィアから引っぱたかれる前に何か言ったりしてないかな? タツロウには大した事なくてもソフィアの気持ちを傷つけたのかもしれないよ」


「そんなこと……ああ、確かに何気なく言ったのはあるけど」


「きっとそれよ! あんたが何を言ったのか白状しなさい!」


「いや、それはちょっと言えない」


「どうして? まさか、この場で言えないようなイヤラシイことでも言ったの? だとしたら問答無用でぶっ飛ばす!」


「断じて違う! 詳しくは言えないが、昨日のことでちょっと」


「もしかして、タツロウとソフィアが地元のチンピラに絡まれた件で、それを気にかけた大公殿下の嫡男から招待されたっていう、昨日の舞踏会のことかい?」


 オレたちが舞踏会に招待されたことは宿泊所内でも通知されている。


 だけどフランツとのイザコザや招待の真意は、知れ渡ると騒ぎになりかねないので伏せられており、オレたちも口外するなと先生方から強く言われているのだ。


「そう。そこで起きたことについての話で、悪いけど他人には言えない」


「ちょっと、そう言って誤魔化そうとしてるんじゃ」


「サンドラ、落ち着いて。タツロウも、自分が言ったことが他の人にどう受け取られるのかをよく考えて、何が原因か考えてみればいいんじゃないかな」


 マルコはオレを少し突き放すように言うと、サンドラを宥めながら一緒に行ってしまった。



 何が悪かったんだろう。


 オレは昨日の舞踏会の途中で、飲み物に仕込まれた薬で眠らされて奴らに囚えられてしまった。


 それについて後から考えてみたことがあって、そのことを話しただけなんだ。


 『オレに異変があった時点で、オレの事なんか見捨ててソフィアとアンジェリカがすぐに逃げ出していれば、館の外に脱出できたんじゃないか』ってね。


 外には先生方が待機していたんだし、時間はかかっても最終的にはオレも助け出されただろう……死んでなければ。


 オレとしては合理的なことを言ったつもりなのだが、それを聞いた彼女たちは態度を豹変させてしまったのだ。


 で、考えてみたが、やっぱりわからないな。


 もう午前中の実習が始まってしまうし、とりあえず行くとしよう。



 実習に参加しに来たはいいが、ソフィアは顔を合わせるなりプイッと横を向いてしまい、アンジェリカは俯いたまま何も反応しなかった。


 これじゃ取り付く島もないな。


 そこへ久しぶりに聞く声がしてきたので、この場はそちらの対応を優先することにした。


「こちらのグループならお前と勝負できると聞いて移ってきたんだ。滑降で今日こそは決着をつけようじゃないか」


 コイツはアンドレアスといって同じく下級貴族であり、隣のクラスに所属する男だ。


 この前の夏休み前に出場した馬術大会で対戦したのだが、飛び抜けた運動能力の持ち主で大苦戦させられたのだ。


 それ以来、ヤツはことあるごとに決着をつけようと言ってくる。


「えーとね。オレ、実はスキー初心者で昨日やっと上級者クラスに昇級したばかりなんだけど」


「そうだったのか……では決着は次の機会にして、今日はエキシビションマッチといこうじゃないか」


 やっぱりやるのかよ!

 まあでもエキシビションなら別にいいか。


「タツロウっち、悪いけどスキーではぶっちぎらせてもらうよ〜」


 ヤニクも今日は同じグループか。


 それはいいが、朝起きた時、コイツとアドリアン、そしてこの前ナンパを一緒にやった奴らは何故か顔に痣と引っかき傷が残っていた。


 昨日もナンパやってたらしいが……全員彼女持ちであることを考慮すれば、何があったのかは大方想像がつく。


「やっとタツロウと一緒に滑ることができるんだね。楽しみだよ」


「おう、マルコ。オレの方こそお手柔らかに頼むぜ」


 プロ級と言っていい腕前のマルコにどこまでついていけるかわからないが、可能な限り食らいついていこう。


「うわあ、みんな凄く上手そうだね。僕はできるだけ置いてかれないように頑張るよ」


 ノアはオレと同じような実力なので、そういう意味では一緒に競い合いたい。


 実質最終日にしてオレは仲間内の連中とようやく並んで滑ることができるのだ。


 こんなに楽しいことはない。


 そしてインストラクターは……やっぱりヤツだった。


「まあ、キミたちではボクの引き立て役にもならないだろうけど精々頑張りたまえ、ハッハッハ!」


 マクシミリアンも一緒に滑降するのかよ。

 自分がインストラクターだって忘れてやがるなコイツは。


 そして滑降する直前、みんなは彼女や友人たちから声援を送ってもらっているのだが。


 オレはソフィアとアンジェリカから何も言ってもらえなかった。


 いや、オレへの声援が全く無いというわけじゃないし気にせず頑張ろう。


 そしてスタート!


 最初は一斉だがスタート直後から先頭グループとはどんどん離されていく。


 先頭はマクシミリアン、その後にマルコ、アンドレアス、ヤニクと続く。


 オレはなかなかスピードが上がらずに、気がついたら最下位争いをしていた。


 途中から盛り返していったが、最終的にはノアのすぐ後ろの順位、中盤後方グループでのフィニッシュとなった。


「タツロウ、後半はスピード乗ってきてたね。抜かれるんじゃないかとヒヤヒヤだったよ」


「ノアこそ昨日より腕前上がってたじゃん」 


 オレとノアは健闘を称え合ったが……上位4人が談笑しているのを見ると、オレたちもあそこに加わりたかった。


 その後の女子のたちの滑降ではソフィアたちに声援を送ったが反応は無かった。


 そういうわけで、午前中の実習はなんとも味気ないまま終わってしまった。



 なんでこんなふうになっちゃったんだろう。


 一人悩んで歩いていたオレだが、いきなり背中をバチーン! と叩かれて目から星が出そうになった。


「痛ってーな! 今日2度目!」


「必要なら2度でも3度でも叩いてやるわよ。ところで、あたしの方でソフィアたちと話をつけてきたから。お昼休みで宿泊所へ戻る前に話に応じてくれるって」


「サンドラ、いつの間にかそんなことをしてくれてたんだ。オレはお前のことを誤解していた」


「なんか引っ掛かる言い方ね……まあでも、あたしたち友だちじゃない。今度こそちゃんとやんなさいよね」


「ありがとうよ。お前の厚意は無駄にしない」


「それじゃ俺たち先に行くから。頑張れよタツロウ」


 マルコとサンドラは先に行ってしまった。


 これだけのお膳立てをしてもらったんだ、あとはオレが頑張るのみ。


 そして歩いていくと、男女の宿泊所へそれぞれ分かれる箇所の手前で彼女たちが待っていた。


 どう話を切り出そうか考えていたが、オレは自分の思うところを素直に言ってみることにした。


「ソフィア、アンジェリカ。オレさあ、お前たちに言ったことの何が良くなかったのか結局わかっていないんだ。頼むから教えてくれよ、この通り!」


 オレは彼女たちへ向かって深く頭を下げた。

 下手に言い訳するよりもこれでいくしかない。


 ソフィアは小さく溜め息をついたあと、おもむろに話に応じてくれた。


「……貴方が、自分を大切にしないからです」


「えっ? どういうことだよ」


「私たちが、貴方が囚えられたと聞いて、どれだけ心配したと思っているのですか?」


「わたし、心臓が飛び出るくらい、タツロウくんの姿を見るまで不安で仕方がなかったんだよ!」


「いや、あれは薬で眠らされてただけだよ」


「……それは後から聞いた話です。それにフランツは何をしでかすかわからない人ですから。現に、元々は貴方のことを公開リンチするつもりだったと言っていたじゃないですか」


「それなのに、タツロウくんを置いていったら、命の保証なんてなかったんだからね!」


「そんなの大丈夫だよ。オレは奴らのリンチなんかで死んだりしない」


「そんな根拠のない虚勢を張らないでください……」


「あの時わたしたちは、どうにかしてタツロウくんを助けたかったの。なのに、『オレの事なんか見捨てて』だなんて軽々しく言ってほしくなかった!」


 アンジェリカが泣きそうな声でオレに訴えかけてきた。


 ソフィアも怒りではなく悲しみの表情をしている。


 オレはようやく彼女たちの心情を理解した。

 いや、本当はわかってないかもしれないが、何をこの場で言うべきかはわかった。


「あの時、オレを見捨てないでくれてありがとう。お陰でこうしてお前たちに再会できたんだ」


「……やっとわかっていただけましたか。それでは、今回だけは許します」


「でも、ただ許すだけだと物足りなくない? ねえソフィア」


「……そうですね。それではこういうのはどうでしょう。タツロウ君は罪滅ぼしとして、帰りの船内では私たちの執事……いえ下僕になってもらうというのは」


「さんせーい! わたし、タツロウくんのことメッチャこき使っちゃうからね!」


「……わかったよ。お好きなようにどうぞ、お嬢様方」


 ようやく彼女たちの機嫌が治ったらしい、良かった〜。


 それにしてもオレも変わったものだ。


 しばらく前までは自分のことしか考えない人間だったのに、いつの間にか極端に逆方向へ振れていたらしい。


 まあ、そういう難しいことを考えるのは学校に帰ってからにして、今日の午後は最後の実習を楽しもう。



 そして午後の実習は、まずは女子たちの滑降から始まった。


 オレはソフィアとアンジェリカに声を枯らして声援を送った。


 その効果があったのかどうかはわからないが、彼女たちは2位と3位でフィニッシュしたのだ!


 オレたちは輪になって好成績を喜びあった。


 ちなみに1位はサンドラ。

 彼女もマルコと同じくプロ級の実力で他を圧倒していた。



 さあ、いよいよオレにとっても最後の滑降だ。


 今度は2人から沢山の声援をもらえて、オレは俄然やる気が高まってきた。


 ついにスタート!


 先頭グループはやはり午前と同じ4人で形成され、徐々に引き離されていく。


 オレとノアは第3グループ。


 でも今回はこれでは終われないぜ!


「ノア、オレは先頭グループになんとしてでも追いつく。お前も付いてこいよ!」


「ええっ!? そんなことを言っても……まあ、なんとか頑張ってはみるよ」


 オレは集中力MAXでスピードに乗って前の奴らをどんどん追い抜いていく。


 そして……ようやくヤニクの後ろ姿が見えてきた!


 このまま4人をゴボウ抜きしてオレが優勝だ!


 ……といきたかったのだけど。


 この時点で、もうゴールはすぐそこまで迫っていた。


 オレはヤニクに続いて5位でフィニッシュ!


 更に続いてノアが6位に入った。


 これで上位6人をオレの仲間内で独占してやったのだ。


「タツロウっちとノアちんスゲーな。もう少しで追いつかれるかと思ったぜ」


「おうよ、これがオレの真の実力なのさ」


「いやあ、僕はタツロウに必死で食らいついて、気がついたらそうなってただけだよ」


 ワイワイと話すオレたちのもとにアンドレアスも加わってきた。


「タツロウ、お前の後半のノビは凄かった。あと2、3回ほど滑ればいい勝負になりそうだ。いっそのこと俺と一緒に留年して来年決着をつけないか?」


 冗談じゃねえよ!


 あとでアンドレアスは冗談だよと釈明したが、目がマジだった。

 コイツは勝負となればとんでもない執念だが、さすがに付き合いきれん。


「フッ。キミは所詮、ボクの足元にも及ばなかったけどね。まあ、ボクが天才過ぎるから気にしないでくれたまえ、ハッハッハ!」


 最後にマクシミリアンのイヤミを聞かされた。


 腹は立つが、今回は借りがあるから苦笑いでやり過ごした。


 こうしてオレたちのスキー実習は終了してしまった。

 終わってみると名残惜しいが、今は楽しかった思い出の余韻に浸ることにしよう。



 そして最後の自由時間の外出に、みんなで商店街へと繰り出した。


 オレは木刀を買い直したかったのだが。


 マルコとサンドラにあちこち引っ張り回されて結局買いそびれてしまった。


 まあいいか、買わないと命に関わるというわけでもないし。


 宿泊所の最後の晩ごはんはとても美味しかった。


 枕投げは盛大にやり尽くしたかったが、みんな疲れて途中で眠ってしまった。


 だけど全てが楽しい思い出だ。



 最終日は、午前中は担任の先生を交えて旅の反省会だ。


 オレは『反省することなどない、我がスキー旅行に一片の悔い無し』と書いて提出したのだが。


 アーベル先生にふざけるなと怒られてしまった。


 そんなこといったって本当に無いんだけどなあ。


 あるとしたらフランツの野郎をブチのめし損ねたことか。


 それをボソッと言ったら余計に怒られてしまった。


 難しいなあ、反省会って。



 オレたちは早めの昼食をとって宿泊所を出発し、帰りの船に乗るべく山を下っていく。


 ようやく港にたどり着いた頃には足が疲れて、もう動きたくないくらいだった。


 もちろん、船内では足を休めることができるのだが、オレには許されないことだった。


「タツロウくん、あれ取ってきて」


「はい、喜んで」


「タツロウ君。私たち2人に何か飲み物を買ってきてくだ……さるかしら〜?」


「はいはい、喜んで!」


「『はい』は1回……ですわ!」


「はい!」


「あっ、そのモノマネって3年生のマグダレナ様でしょ? 似てる〜」


 ソフィアはアンジェリカに褒められてフフンとドヤ顔を披露した。


 ソフィアにこんな特技があるなんて知らなかった。


 でも女子の仲間内では時々披露しているらしい。


 ちなみにマグダレナは、オレが所属している部活『錬金術研究会』のラスボス……もとい頼れる部長であり、アウストマルク辺境伯御令嬢である。


 有り体に言えばオレが校内で唯一頭が上がらない人物であり、ソフィアのモノマネはオレに対する嫌がらせだ。


 でも文句を言ってられない、オレは急いで2人分の飲み物を買いに行った。


◆◆◆


「ソフィア……わたしね、言っておかないといけないことがあるの」


「……何でしょうか。どうぞ」


「わたし、彼のことは最初、何とも思っていなかったの。でもソフィアにとって大事な人だとは気付いていたから、ちょっとからかってやろうって」


「……」


「それでね、丁度あの事件が起きたのがチャンスだと思って。彼に文字通り接近して、わたしに夢中にさせて、ソフィアに目もくれないようにしてから最後に振ってしまうつもりだったの」


「……なんとなくはわかっていました。アンジェがわざわざ初心者コースに移ってきた時に」


「えっ?」


「以前、別の演劇部の方に『スキーは得意なの』って言っていたのが通りがかりに聞こえてきたので」


「そう。バレてたんだ」


「そこまでする理由は何なのですか?」


「意地悪だなぁ、気づいてるくせに。だって、面白くないじゃない? 途中から急に入ってきた部員に、これまで築き上げてきた『次期看板女優』の座を脅かされるなんて」


「……でもここで告白するということは、彼からはもう手を引くと」


「最後まで話を聞いて。わたしね、いつの間にか彼のことを本当に好きになっちゃってたの。彼が率直に可愛いって言ってくれる度に段々その気になっちゃった」


「……そうですか」


「渡さないから。看板女優も、彼のことも。だからね、今年の演劇大会で決着をつけようよ」


「……いいでしょう。望むところです」


◆◆◆


 オレは1つずつ違う種類の飲み物を買って、両手でそれぞれを持ち運んでいる。


 2人は何やら話し込んでいるみたいだけど、待っているのもアレなので、とりあえず声をかけてみよう。


「お嬢様方、お待たせ。飲み物を買ってきましたよー!」


「あっ、タツロウくん! ありがとう、わたしはこっちを頂くね」


「……それでは、私はこちらの方を」


 あれ、モノマネはもうやめちゃったのか。


 それはともかく、2人とも喉が乾いたのかすぐにストローに口をつけて飲み始めた。


 それからアンジェリカは、オレの方へ容器を差し出してオレの心を惑わせた。


「これ、とても美味しいよ。タツロウくんも飲んでみて?」


 えっ……これって間接キスになるんじゃ。


 いやいや、今どきの高校生がそれぐらいのことを気にするのもどうなんだろうか。


「それじゃあ一口だけ」


 オレはストローに軽く口をつけると少しだけ飲んで容器を彼女に返した。


「うん、これ美味しいね」


 オレの感想に満足したのか、彼女は可愛い笑顔を見せてくれた。


「あの……よかったら私のもどうぞ」


 今度はソフィアから差し出された。


 でも彼女は恥ずかしそうに言うので戸惑ってしまった。


 こういうのはアンジェリカのようにサラッと言ってくれる方が気恥ずかしさがない。


 でも片方だけ飲まないのも失礼だし、こちらも一口だけ飲んでみる。


「……どうでした? どちらの方が美味しかったですか?」


 もちろん飲み物の味についてだと思うけど、なんか誤解を招くような言い回しはやめてほしいなあ。


 でも気がつくとアンジェリカもオレの方をジッと見つめている。


 ここは当たり障りのない回答をしておこう。


「どっちも同じくらい美味しかったよ」


 しかし想定に反して2人は更に詰め寄ってきた。


「同じくらいって、僅かな差はあったということですよね? その差について私に詳しく説明してください」


「もちろん、わたしの方が僅かでも美味しかったんだよね!?」


 ひええっ、もう勘弁してくれー!



 そうそう、船を降りる直前に2人から『木刀』をプレゼントしてもらった。


 一応、舞踏会で頑張ったご褒美なんだと。


 オレ自身は大して役に立たなかったと思っているので申し訳ない気もするが、くれるという物は遠慮なく頂いておきますか。

「スキー旅行編」は今回で終了となります。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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