校門を通る時は気を付けるべし
新作です!前回と同じ異世界ものではありますが少し違った趣向で行こうと思っています!
皆さまは異世界というものをご存知でしょうか?
現実世界とはほとんど全てが異なり、魔術やスキルなど言ったものも存在する。それが異世界である。
ではそこに転生する主人公の話しをしよう。基本的には主人公は最強だったり無双をしたりハーレムを作ったりと、それこそ人生の勝ち組のような生活を送っている。
では、この物語はどうだ?主人公は平均、いやそれ以下。特に何か特徴があるわけでもない主人公。神様からの特典なんてものは無い。これは、そんな主人公と呼べるのかどうか分からない人間の物語なのである。
桜が舞う季節。辺りは通学する学生や通勤する社会人で満ち溢れている。そんな中、重い足取りで始業式に向かう少年が一人いた。
その少年の名は坂上拓斗。一般家庭に産まれ普通に育った何の変哲もない今年高校二年となる学生である。
(あぁ・・・・学校が無くなれな人生はどれだけ楽になるんだろうな・・・・・。)
高校生になりたての学生なら誰もが持ちそうな考えを高校二年になってまで引きずっている拓斗。
そんな憂鬱そうな表情を浮かべながら歩く様は、学生の様にはとても見えなかった。
重い足取りと憂鬱そうな表情を浮かべる拓斗はようやく校門の前に到着する。校門をくぐるのに気合を入れる為大きく息を吸うが、それは大きな溜息となって帰って来るだけであった。
(新学期に向けて頑張りますかねぇ。)
校門へ一歩を踏み出す。決して学校に行きたくは無いが、行かなければいけないと自分に言い聞かせ無理矢理足を運んでいるのである。
そしてようやく校門を抜ける。そんな拓斗を待っていたのは綺麗な校舎、初々しい新入生、笑顔の教師たち・・・・・・・・・なんてことはなかった。
(え・・・?)
目の前に広がるのは綺麗な街並み。綺麗な噴水に緑豊かな公園。賑やかな市場に積み荷を乗せて走る馬車。
先程までいた沢山の学生は辺りを見回しても誰一人といない。舞っていた桜も、教師たちも消えている。
そんな状況で平均以下の拓斗こう思うのであった。
(あぁ、異世界に来たんだ。俺。)
何にも動揺しないあたり、何とも平均以下らしい反応であった。
ある程度周りを見て回った拓斗は、公園にやって来てベンチに腰をかけるのであった。
(どうしよう。周りは何書いてあるか分かんないし、ここが何処かも分かんないし手詰まりだ。)
何度目になるか分からない溜息をつく。
市場にあるお店の値札や商品名は少なくとも英語と日本語でないことが分かった拓斗は地図を探すのであったが当然地図は見つからないのであった。
(異世界に呼び出すぐらいなら何で呼び出すか要件ぐらい教えてほしかったな。)
ベンチにもたれかかって空を見る。空の青さは現実世界と変わっていなかった。
体制を戻しベンチから立ち上がると拓斗の足元が発光する。
よく見ると発光しているのは、いつの間にか足元に出現していた魔方陣であった。
(これって召喚フラグじゃ・・・?)
平均以下の考えはまさに的を射ていたのである。その魔方陣は先程より強く発光すると拓斗を公園から消すのであった。
拓斗の視界が緑豊かな公園から埃っぽい地下室の様な場所に一瞬にして変わる。
蜘蛛の巣の張った部屋の隅、埃の被った机と椅子、ゆらゆらと揺れる蝋燭の炎。まさに地下室である。
地下室は地下室であるのだが、地下室に不釣り合いのものが一つだけあった。それは拓斗の目の前にいるポンチョの様なもの下にブレザー式の制服を着る少女である。
「貴方さっさと名乗りなさいよ。」
整った容姿に流れるような金髪のツーサイドアップ。美少女そのものであった。
しかし拓斗は、美少女のつりあがった目で睨みつけられたため見惚れる暇すらなかった。
「名乗るって名前を?」
「そうよ。さっさと種族と名前と能力を教えなさい。」
そう言われてもと困る拓斗。
(種族は人間だよな?名前は坂上拓斗。能力ってなんだ?)
拓斗は沈黙を続けていると、痺れを切らした美少女は先程より不機嫌そうな表情になる。
「さっさと答えなさいよ!」
「わかった!わかった!だからそう怒るなって!」
コホンと拓斗は咳ばらいをする。
「俺の名前は坂上拓斗。種族は人間で、能力は平均以下だってことだ。」
やる気の無い回答に場が固まる。お互い何も言わないが、美少女は驚いた表情に変わっている。
しばらく沈黙を挟むと美少女の方が口を開いた。
「人間?人間って本当なのッ!?」
急に顔を近づけてくる美少女。その顔は先程の驚いた顔とは違い、期待に満ち溢れている。
「正真正銘ただの人間だ。何の変哲もないただの人間だ。」
「なら話は早いわ。今すぐ私と契約しなさい。」
拓斗に紙を押し付ける。
その紙には何が書いてあるか拓斗には分からなかったが、下に大きく横線が引いてある。
(ここに名前を書くのか?)
しかしそんな怪しい契約書に名前を書くほど拓斗は馬鹿ではない。
「この契約書に名前を書くことについては分かったが、俺に何の得があるんだ?」
「得?そんなの決まってるじゃない。私と契約して最優秀生徒とし卒業出来たら貴方の願いを何でも一つ叶えてあげるわ。」
「最優秀生徒ねぇ。・・・・・残念ながら俺は平均以下で全然優秀じゃないぞ。」
願いを一つというのは魅力的ではあるが、最優秀生徒で卒業しなければならないという平均以下の拓斗にとっては無理難題である為、あらかじめ美少女に警告する。
「人間なんだから謙遜する必要なんてないのよ?貴方は最高クラスの使い魔なんだからもっと胸を張りなさい。」
「最高クラス?」
「あら知らないの?この世界では人間、魔族、神族が最高クラスの魔力と才能を持っているのよ。」
淡々と語る美少女は、聞いたことのない単語が幾つも出してくるが問題はそこではない。
(人間が最高クラスの一角だって?この俺が?ありえないな。)
「人間に関しては魔族と神族よりもひ弱で魔力も少ないけど能力は二つの種族よりも断然高いって聞いたわ。だから最優秀生徒も簡単に狙えるわよ。」
人間を使い魔として引き当てたことが嬉しいのか、美少女は笑顔で語るのであった。
(能力か・・・。この子には悪いけど俺に能力なんてないしなぁ。)
喜ぶ美少女を失望させたくないが現実は非常である。才能のある人間ならまだ何かフォローの一つはできたであろうが、拓斗は才能すらないのだ。
「あー喜んでいるところ申し訳ないんだけど。」
嬉しそうにしている美少女に声をかけ、いざ現実を告げようとする拓斗。
美少女は何をしてくれるのかと期待の眼差しで拓斗を見ている。
「俺、能力なんて無いと思うし、才能もなければ特に秀でているものもない、多分君の方が何倍も俺よりも優秀だと思う。」
美少女の表情から少し笑みが消えるがまだ若干嬉しそうな感じはある。
「じょ、冗談はあんまり言うもんじゃないわよ。貴方は私の魔力全てと完璧な触媒で呼び出したんだから才能が無いわけないじゃない。」
少し声が震えている。でも拓斗が言ったことは冗談じゃない為、冗談だよっと笑顔で言えるわけがなく、現実を教える。
「すまないが冗談なんかじゃない。人間であることに変わりは無いが、才能なんてない。」
キッパリと言い切る拓斗。
冗談ではないことを知り、美少女の表情は怒りと悲しみの入り混じった表情になる。
バチンとビンタした音が地下室の様な場所へと響く。綺麗なビンタが拓斗の頬に決まるのであった。放心する拓斗を気にせず、美少女は眼に涙を溜めて部屋を出て行くのであった。
(あぁ、俺の異世界暮らしの出だしは最悪か・・・。)
女の子を泣かしたことへの後悔と自分の無力さを感じはするも何もできない拓斗はその場に座り込むのであった。




