スライムまみれでヤバすぎる!?2
「なによあれ!?」
『ギィィィィ』
身の丈を超える巨大なスライム二体が、目の前に立ちふさがっていた。逃げようにも背後からは大型のスライム集団がなだれ込んできている。両脇も茂みのせいでスームズに回り込めそうにはなかった。
「倒すしかない!!」
「そんなっ」
イアンが身の丈ほどの大きな杖を抱きかかえながら頼りない声を上げる。
「陣形はどうするの?」
ペティはやる気だった。
「僕とペティが先頭、マードラが中心、イアンが最後尾の陣形でいこう!!」
「OK!!」
「二匹同時に相手するのは無理だ、右のスライムの方が若干小さい、二人で右のを狙うぞ!」
「それじゃアキヒトに私の短剣が当たっちゃうわ!」
「あそうか。……どうしよう」
そうこうしている間もスライムたちは待ってくれない。結論が定まらないうちに二匹同時に迫ってきた。
「仕方ない、僕が右、ペティが左だ!」
マードラに近づかせるわけにはいかない。僕らは左右のスライムに飛びかかった。
「きゃあぁ!!」
「ペティ!?」
左のスライムに斬りかかったペティが悲鳴をあげる。短剣を持った方の腕を、スライムに掴まれてしまったらしい。
「なんでだ? 僕が殴ってもなんともないのに」
慌ててペティの方に駆けつけ、取り込まれたペティの腕の近くを狙ってスライムを殴る。と、
『ギィィィィ』
「きゃあ!?」
奇声をあげてスライムがペテイの腕を離した。反動で尻餅をつくペティ。
スライムはなおもうねうねとその巨大な体をくねらせる。なにやらひるんでいるようだ。
「そうか! こいつら液体だから、打撃を受けるとその分振動が伝わりやすいんだ!」
「だからひるむってわけ?」
「多分! これならいけるぞ!!」
「え!? こんなおっきいの、どうやって?」
「あさってのショウだ!!」
「は?」
「漫画だよ! ボクシングの!」
「なにそれ」
「いいから見てて!」
脇を締めて、腰を落とし、内角に向かってーーーー!!
「打つべし!」
拳を勢いよく突き出す。バシン!!と大きな音が鳴り、スライムの体に波紋が広がった。
「今だ、ペティ!!」
「きゃあぁ!?」
ペティの腕を掴み、強引にスライムの脇を抜ける。大きな分動きも鈍いらしく、スライムはすぐには背後を向けないようだ。体をひねって一生懸命こちらを向こうとしている。もう片方はまだマードラたちを狙っているようだ。
「打つべし!」
マードラたちの方を向いているスライムの背中を殴る。
「今だマードラ、イアン、スライムの脇を駆け抜けろ!!」
「は、はい!」
「え? 待ってよ!」
スライムたちがひるんでいる間、安全に四人合流することができた。
「で、どうするの?」
「逃げるんだよぉぉーーーーーーーー!!!!」
ペティの腕を取り、脇目も振らずに全力疾走した。イアンたちも慌てて後に続く。