スライムまみれでヤバすぎる!?3
「はぁ、はぁ、はぁー。……なんとか、なったわね」
町の宿屋の前でようやく一息。四人ともスライムの体液が乾いて、青いパリパリの汚れがこびりついていた。
「酒場でクエスト報酬受け取る前に、宿屋でシャワー浴びましょ。回復もしたいし我慢できないわ」
「髪がベトベトです」
女子二人の苦情を受け、少し早いが宿屋に泊まることにした。僕の宿代はというと、スライムを倒した報酬が冒険者カードの中に電子マネーのような形で自動で転送されているらしかった。どうもモンスターの転送と同時に自動で振り込まれるシステムらしい。
シャワーを浴びるため、一旦男女で別れることに。
「思ってたんだけど、イアンの杖って魔法出せないの?」
脱衣所で隣り合って服を脱ぎながら、なんとなく尋ねる。
「は、はい。高級なものだと、魔法を補助したり、MPを吸い取ったりもできるみたいなんですが、僕のはただの打撃用です。MP切れちゃうと、役立たずになっちゃうんで……」
おどおどしながら答えるイアン。緊張しているらしい。
「へぇー。じゃあマードラのは高級なの?」
「い、いえ、あっ、いや、わかりません……。ただ、マードラの杖は僕の杖とは種類が違うので、魔法が使えるんです。その代わり攻撃力が低くて、MPが切れるとほとんどどうしようもなくなっちゃいますけど」
「なるほど?」
わからん。大きな杖と小さな杖はまったく別物ってことらしい。
話しかけるとイアンの服を脱ぐ手がいちいち止まるので、自然と会話が途切れてしまう。と、沈黙が怖くなったのか、イアンの方から話しかけてくる。
「あっ、あの、アキヒトさんの服って、その、変わってますよね? あはは……いやっ、その、悪い意味じゃなくて!」
「いや、なんとも思ってないけど」
「すいません……」
しゅんと肩をすぼめるイアン。服を脱ぎ終わったので、無言のまま二人でシャワー室へ向かう。シャワー室は例えるなら学校の女子トイレのような作りになっていて、簡易的な仕切り越しに会話ができるようになっていた。自然な流れで隣同士の個室に入る。
「僕の格好、目立つかな?」
「え!? あ、いえ、確かに、見たことない格好ですけど、そこまで奇抜じゃないですし、モンスターから狙われやすくなるようなことはないと思いますよ」
「あぁ、そう?」
頭を洗い始めると、いよいよ無言になる。それが耐えられないのか、イアンがちらほらと短い話題を振り続けてきたが、僕は適当に相槌をうちながら頭では別のことを考えていた。
この世界のこと、隣にいたはずのシスターのこと、あのとき起きた、謎の火事のこと。
この短時間でいろいろなことが起きすぎて、僕はとっくにこの状況についていくのをやめていた。
「この世界に、名前ってあるの?」
「え? この世界に、ですか? 確か聖書では、世・改なんて呼ばれてるらしいですよ」
あるのかよ。しかもせ・かいって。
「有無の神セルゼルノ様が、すべての創造神神王様に命じられて七日間でお作りになった、って、流石に知ってますよね。ごめんなさい」
聞いたことがない話だった。どうやら僕は、異世界、それも元いた世界とは根本から違う世界に、来てしまったらしい。




