邪な妖精
あやつり人形と化してしまう素戔嗚尊。
それは数ヶ月前に遡る。
「是非素戔嗚尊様にお目通りを。さも無くばばこの国はある1人の勇者の手によって滅亡しますぞ?よろしいのか?そなたらに判断できますの?」
彼女は魔王城リオサーの城門にて素戔嗚尊にお目通りを願う。
そして勇者の到来とこの国の滅亡を示唆する。
門兵は無下に扱うことは出来ず素戔嗚尊に判断を委ねる。
「ご婦人。少々お待ちを。謁見が可能かどうかは私たちには分かりませぬ。確認して来ますのでこちらでお待ちください。」
「へぇ、、、いいの?妾にこの様なみすぼらしい部屋で待機だなんて、、、」
しかし門兵達が可能な判断の中では最大の配慮であり、これ以上の優遇は門兵が与えられた権利への侵害となる。
例えこの婦人が姫や権力者であったとしても自分の判断による謁見が可能であるはずもないのだ。
どうやら婦人の機嫌を損なってしまったようだが素戔嗚尊は自分の魔王軍に決して手を上げるような人物では無かった。
門兵は素戔嗚尊が自分たちを叱責、拷問をすることは無いことを知っているのだ。
かつて勇者が素戔嗚尊を討伐に来たことがある。
その名は《酒呑童子》
彼は魔王軍では相手にならぬ程に強かった。
剣をひと振りすれば大地が引き裂かれ、嵐が巻き起こる。
素戔嗚尊は酒呑童子との一騎打ちを望んだ。
これ以上の魔王軍の被害を許せぬから。
酒呑童子からの蹂躙。魔王軍は既に半数を殺されていた。
対して酒呑童子は1人である。
1対10万の兵の戦いだったが一般兵では全く歯が立たず素戔嗚尊が直々に闘うことを願いでるのだった。
『いいだろう!噂に聞く豪傑よ!我と一戦交えようでは無いか!』
「すまぬな、、、我が軍隊にこれ以上被害を出す訳にはいかぬのだ。場所を変えよう、、、、よし!かかってこい!酒呑童子よ!」
酒呑童子と素戔嗚尊は剣士同士だった為に相性は最悪であった。
それからは三日三晩に渡り休むことなく闘いを続ける。
一進一退の攻防。次第に彼らの戦闘の行く末を見守る兵達も疲弊の色を隠せなくなる。
座り込む者も出る始末である。
常軌を逸した闘い。
そして拮抗した実力。
一瞬の気の緩みすら命取りになり得る。
そして、、、
5日目の朝。
2人は同時にぶっ倒れる。
2人に有効打があった訳では無い。
ただの空腹と疲労で倒れたのだ。
「あははははははは!こりゃあ参った。勝てぬわ。素戔嗚尊よ。もうやめにせぬか?我とて多少なりとも魔王に恨みはあるがこの様に清々しい気分は久々だ。最早恨みなど消え失せたわ!あははははははは!」
『そうだな?酒呑童子。勇者と呼ばれし豪傑。それが如何なるものかと思うたが、、、これ程までとはな、、、。この勝負引き分けで良いか?互いに不可侵条約を結ぼうではないか。』
2人はハァハァと肩で息をしながらも地面に仰向けでになり会話する。
そして素戔嗚尊は数刻後に立ち上がり、酒呑童子に手を差し出す。
『ここに不可侵条約を!我に意見を唱えるものはおるか?』
辺りは静まり返る。
魔王軍は半数を失った。そこには恨みもある。
しかしこれ以上の戦いは無駄なことは明白。
兵士達も理解していた。
そして酒呑童子には決して勝てぬことも。
『時に何故襲ってきたのだ?我は何もしておらぬぞ?』
「いやな?俺は素戔嗚尊に謁見を頼んだのだがな?いきなり攻撃されたから戦争になったんだ。」
『うむ、、、そうだったのか。。。それはすまぬ事をした。部下達は魔族が多くプライドも高く他の種族を見下す者も多いのも事実だ。此度の件、改善させよう!我に出来る償いはあるか?あるなら申せ。できる範囲なら叶えるぞ?』
「あはははは!ならばまたいつか合間見えようぞ!そなたを気に入った!素戔嗚尊の為ならば勇者の肩書きなど要らぬわ。」
『そなたを勇者にしておくのは勿体ないのぉ、、、どうだ?俺の右腕になってはくれぬか?』
「それは断る!お前とは良き戦友でいたいからな!では俺は帰るわ!ぐははは!」
魔王素戔嗚尊から貰った秘蔵の酒《魔王殺し》を呑みながら彼はセイトへと帰る。
そしてこの時の門兵の失態を素戔嗚尊が責めることは無かったのである。
「ふふふ、、、魔王と言うからどんな輩がおるのかと思うたが、、、まっこと面白い奴じゃないか!あの忌々しい妖精め、、、騙しおったな?今度見つけたら踏み潰してくれるわ!はっはっはー」
勇者酒呑童子はある妖精に
「この先にいる魔王は妖精を喰らう邪な魔王。勇者様、、、どうか討伐してください。」
と泣いて頼む妖精に見事に騙されたのだった。
しかし酒呑童子は素戔嗚尊との戦いで気分を良くし、妖精の事はこれ以降忘れてしまう事になる。
そして、、、妖精は魔王素戔嗚尊に取り入るのだった。




