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お願いなので不敬、不敬と極刑にしようとしないでください

 

 イケメンフェンリル(仮)はあろうことか私を霊王様とかうんたらかんたら訳の分からないことを言って来るのだが、正直それならアリア嬢と殿下に対してキレた理由も分かる。だって私、世間一般から見たら婚約者を常識のない格下の子爵令嬢に奪われた公爵令嬢だもん。

 前に一度マオリーヴ子爵と話したこと─と言っても挨拶程度だが─あるけど常識的で優しそうな人だったもん。夫人も母様とはタイプの違った穏やかな美人だったし。今回のことを子爵と夫人が知ったら顔を青くするんじゃないの?


 うん。それにしても、私が霊王様か…正直実感が湧かない。だって私普通の公爵令嬢よ?霊力が学年で一番強かったけど、霊王様ほどじゃないでしょ。って、何かの間違いじゃない?とイケメン兄さんに聞いたら、


「いえ、貴女様が霊王様で間違いありません。」


 と、返されたからもう反論も出来ない。あと、兄さんや。君は敬語キャラなの?それともタメ口なの?私が言えたことじゃないかもしれないけど統一しなよ。それと今思ったけど、このイケメンフェンリル(仮)兄さんの呼び方が随分とバラバラな気がしてきたんだけど、なんて呼べばいい?


「…とりあえず、ローゼ嬢。少し話を伺いたいのだがいいかな?」


 不意にディアマス殿下に話しかけられる。うん、バカ殿下じゃなくてディアマス殿下に事情聴取されるならちゃんと受けます。バカ殿下だったら百パー拒否するけど。


「霊王様に上からの目線で話しかけるなど万死に…」


「フェンリル…様?ディアマス殿下は私より身分が高い方ですし、私の兄の御友人なので万死には値しないでほしいのですが。」


「畏まりました。それと、敬称など付けずにフェンリルとお呼びください。」


 うん、どうしよう。このイケメンフェンリル(仮)…もう面倒臭いからフェンリルでいいや、本人からもそう呼べって言われたし。それで、フェンリルに尻尾をブンブンと振っている幻覚が見えたんだけど、あれはフェンリルが幻覚の術でも使ったのかな?それとも私が末期なの?数々の予想外の展開に私の脳が正常に機能しなくなったのかな?


 とりあえず、それは水に流しておいて今はディアマス殿下の事情聴取を受けるとしますか。


………


 ヨシュア・フォン・アイリーンは困惑していた。

 それもそうであろう。実の妹が突然婚約破棄を言い渡され、そこに最高位の霊であるフェンリルが乱入し、その妹が霊王の生まれ変わりだったというのだ。これを困惑せずに、何に困惑しろというのだろう。


 ローゼ自身は霊王の事をよく知らない。だからあんな楽観的な感想を持てたのだろうが、学園でしっかり一、二年間学んできた二、三年生はそうはいかない。霊は人間と殆ど干渉しない。精霊と契約を結んだものさえも、一年に一度目にすれば幸運だと言うほどに出てこない。霊としては比較的低い地位にいる精霊でさえそうなのだから、最高位の霊であるフェンリルを見た事がある人間などいないだろう。もしかしたら、人間より圧倒的に長い時を生きるエルフ族や獣人族なら遠目には見た事があったかもしれないが人間はまず無理だろう。だが、人間の国にも霊に関する本ならあった。

 その内容には全て、霊を見たなら絶対に機嫌を損ねてはいけない。仮に損ねてしまったとすれば次の瞬間、自分の首は胴体と繋がってはいないだろう。との記述が。


 大袈裟だろうと考えた者もいたかもしれない。だが、


「…全く大袈裟ではなかった、か。」


 思わず呟いてしまった所を妹に聞かれてしまい、失態だったかと額を押す。まず、本当に妹が霊王なのだろうかと考えてしまったが、妹の霊力の強さは他ならぬ彼がよく知っている。妹の霊力の強さに、誰よりも一番驚いた彼自身が。妹が霊王…その事態に何を考えればいいか分からず、ヨシュアは妹と共に事情聴取場所に向かった。


………


「…つまり、君に霊王の記憶はないと。」


 只今事情聴取中のローゼ・フォン・アイリーンです。ちなみに、何故私達公爵家の人間には名に"フォン"という名が使われているのに王族やアリア嬢の所にはないのかというと、王族は元々高貴な血筋だから証明云々はいらないとのこと。それで、名にフォンが付いている貴族は伯爵だろうが公爵だろうが国に大変貢献しているお家柄だってことらしい。残念ながら、就学して間もない私の知識はそこまでしか知らない。まず、知る気もないけど。


 あれから事情聴取をするためにパーティー会場から学園の生徒会室へ移ったんだけども、そこには国王夫妻とうちの父様母様がご丁寧に席に着いてたんだよね。皆さん多分私の後ろにいるフェンリルに威圧されたんだろうね、顔が相当青いもん。私は何も感じないけど。


「そうですね…少なくとも、私に霊王の記憶はありません。」


 って陛下に返したんだけど、そこにまたもや横槍が入る。


「霊王様がお望みになられれば貴女様からお預かりしている記憶と能力をお返し出来ますが。」


「それって人格まで変わるの?」


「いえ、人格にまで影響することはないと聞いております。」


 うん、まあそうだよね。人格まで変わっちゃったらちょっとアウトだもんね。私も口に出しておきながらもし変わったらどうしようとか考えてたよ。

 でも、人格変わらないなら別にいっか。


「じゃあ、お願い。」


「はい。」


 フェンリルがそう言ったあと、どこからともなくなんかキラキラ光ってるのが集まって出来てる塊が出てきた。それはとっても綺麗で何故か心地良さを感じる。これが霊王の力ってやつ?

 それは私の周りを囲み、そして一気に光った。うん、眩しい。とっても眩しい。私ね、身体の中に直接入ってくる感じかなーって考えてたんだけどいきなり光ってビックリしたわ。

 でも、この光を真正面から浴びたらなんか脳内にいろんな記憶がフラッシュバックしてきたんだけど。ねえ?どうすればいいこれ。正直脳が沸騰しそう。


「ローゼ!?」


 その兄様の声を最後に私の記憶は途絶えた。



 …とか、シリアス風に言ってみたけどマジで本当に気を失って倒れたらしいね私。起きたら家のベッドだったよ。でも、なんか異様にスッキリした感じなんだよね。私真面目に霊王だったよ。記憶をバリバリ思い出して能力も上がった気がする。いや、上がってないと困るんだけどね。

 そして、私の傍らに常にいるフェンリルはどうすればいい?プラスでなんか氷の精霊ズが沢山いるんだけどこれはどういう事なのかなフェンリル君。魔王が好きな漫画のテンプレとやらはこういう時は母様が近くにいるんだろう?どこにも居ねぇぞ母様。


「霊王様、記憶が戻ったなら魔王様と天王様が顔を出せと。」


 うん、知ってる。ちゃんと覚えてる。あれだよね、一回魔界と天界にいかないといけないんだけどさ、私もあの時普通に返事しちゃったけどさ。


 私一人じゃ魔界にも天界にもいけないんだけど!!


 いやマジで。これは私の実力が足りないとかそういうのじゃなくて、前に霊界と魔界と天界で決めたルール。他の界域に行くには必ず違った界域の王二人で来いっていう制約があるの!!これは覆しようがないの!!ちなみに人界とは制約結んでないから余裕で行き来できる。

 あー…簡単に言うなら、天界に行きたいなら魔王と霊王が一緒に転移しないといけないの。つまり、ここには天王も魔王も両方いないからアウト!二人の所にはいけません!

 忘れてたわ。あの二人が脳内お花畑の脳筋&馬鹿だということを。それを確認せずにあの時普通に頷いた私も馬鹿だわ。どうしようかこれ。もう、いっそ二人が来るまで霊界で待とうか。それが一番簡単だし魔王と天王が二人そろってるんだから大丈夫でしょ。


「ローゼちゃん!!」


 あ、母様きた。父様と兄様も。

 そしてフェンリルが行った。


「霊王様の許可なく部屋に入るなど不敬だぞ。極刑に…」


「値しないで!?まず、ここ建てたのお父様とお母様だから!」


 口調が崩れた事は気にしない。

 フェンリルさんや…

 お願いなので不敬、不敬と極刑にしようとしないでください。


 あと精霊君、君たちも止めて。

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