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第48話:カズヤとルーシーと居場所

第48話



「全くだらしないな、少し運動するくらいで倒れるなんて」

ホテルまで歩く途中で合流したレオンが悪態をつく。


「お兄様、涼子様は殆んど旅の経験が無いのですから倒れて当然ですわ。責めないでくださいまし」

ニーナはあたしを庇ってくれた。


「まあ、具合はいいみたいだから、ホッとしたよ。私も涼子くんの疲労に気付かなかった。もうしわけなかったねぇ」

立花はあたしに謝ってきた。


「そんな、謝らないでくださいよ。あたしこそ心配かけてごめんなさい」

あたしは皆に謝った。


「そういえば、涼子くん。倒れたときに変な夢を見たと言っていたが、具体的にはどんな内容だったのかな?」

立花は話題をあたしの夢の話に変えた。


「えーと、大した話じゃないのですが…」

あたしはさっき見た夢の話をした。


「なるほどねぇ、いよいよ君がこの国で生まれ、幼い日を過ごした可能性が現実味を帯びてきたわけだね」

立花は興味深くあたしの話を聞いていた。


「とりあえず、今日はゆっくり休んで、明日から例の失踪事件について調べてみよう」 

立花は皆に提案した。


「それで父の居場所に近づきますか?」

あたしは立花に質問した。


「現時点では、何とも言えないねぇ。でもね涼子くん、あらゆる可能性を洗うことが大事なんだ。もしも見当違いという結果になっても、それがわかるだけで一歩前進なんだよ」

立花はあたしの方を見て説明してくれた。


「そうですよね。少し焦っていたみたいです。すみません」

あたしは馬鹿な質問をしたと思った。


「謝らなくてもいいさ。私だって早く君の依頼を解決したいのだから。まあ私も本気で頑張ってみるよ」

立花は力強くあたしに宣言した。


その日の夜あたしはまた夢を見た。


「姫様、ここにおられましたか」

若い男が、ドレスを着た女の人に話しかけている。


「姫様は止めてカズヤ、2人きりのときはルーシーって呼んでください」

ルーシーと呼ばれた女はあたしとそっくりだった。


「そういう訳にはいきませんよ姫様。俺は王族親衛隊に入りましたから。前みたいには呼べません」

カズヤと呼ばれた男は多分あたしの父なのだろうと自然にわかった。


「あなたって本当に頑固なんだから、だったらあたしと結婚しませんか。そしたら普通に話せますし。父上もあなたのこと気に入ってますし」

ルーシーは笑顔でカズヤを見た。


「俺をからかって楽しいですか?素性もよくわからない俺のことを親衛隊にまでしてくれた王様には恩があります。それを裏切れませんよ」

カズヤは困った顔をして言った。


「あなたが遠い世界の人間だったことは何となくわかりました。だから何だと言うの。それに約束してくれましたよね。いつかあなたの世界に連れていってくれるって」

ルーシーはカズヤの手を握って言った。


「あなたは、そうやっていつも俺を…。わかりましたよ、頑張って手柄立てて姫様を嫁さんにしますよ」

カズヤはニヤリと笑って言った。


「約束ですよ」

ルーシーもカズヤに微笑み返した。


そこで夢は終わった。

気付けば朝になり、あたしは皆と一緒に朝食を食べることにした。


(王族親衛隊ってヒースさんの居るところだよなあ、お父さんは昔…。お母さんはルーシーって呼ばれてたけど…どういうことなんだろう。というかあたしが生まれる前の話をなんで夢で見れるのかな?)


あたしは考えが纏まらずボーッとしていた。


「涼子様、どうかされましたの?また気分を悪くされましたの?」

ニーナは心配そうに尋ねる。


「あっニーナさん。すみません。ちょっと考え事をしてました。あれっ立花さんとレオンさんは居ないんですね」

あたしは、2人がいつの間にか居なくなったことに気が付いた。


「ええ、二人とも調査に出かけましたよ。私は涼子様の護衛ですわ」

ニーナはニコリと笑って答えた。


「そうだったんですね。それじゃあこの後どうしますか?出歩いてたりするのはマズイですよね」

あたしはニーナに確認した。


「そうですわね。先生は念のために全員で行動するとき以外は出来るだけ目立たないようにと仰っていましたわ。ヒースのような人が居るかもしれませんから」

ニーナは少し険しい顔つきになった。


「アハハ、確かにヒースさんの件みたいなことは絶対に嫌だなあ」

あたしは苦笑いした。


「ですから、調査の間はお待ち頂けないでしょうか?」

ニーナは申し訳なさそうに言った。


「わかりました。とりあえず立花さんの帰りを大人しく待ってます」

あたしは納得して答えた。


夜になると立花は宿屋に戻ってきた。

そして、あたしを呼び出した。




「結論から言おう、君のお父さんの居場所がわかったよ」

立花がそうあたしに告げると、あたしはいい知らせなのに、何故か背中がゾクッとした。


第49話に続く





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