第39話:大男と階段と月の光
第39話
「申し訳ございませんですわー。私がぐずぐずしている間にこんなに時間が…」
ニーナは涙を目にいっぱいにして謝った。
「まあ、簡単に捕まった私とレオン君にも非があるしねぇ。どうせ、体力が持たなかったし、何処かで休憩したさ」
立花はニーナを慰める。
「休み過ぎですわ…。私のせいで涼子様が…もしも」
ニーナは泣きながら話している。
「やれやれ、少しは成長したと思えば泣き虫のままか。妹の失態は兄である僕が取り返してやる。あの娘も助ける。これでいいだろ?」
レオンはそう言いながら、扉を開ける。
次の部屋に入ると、身体中が筋肉で盛り上がった大男が待ち受けていた。
「サイラスごときにかなり手こずったみたいだなあ。俺は奴より数段強いぜぇ。早速、この技で皆殺しにしてやるわ。喰らえ、究極の一撃、その名も…」
バタッ…
「いくら強くても、頭が悪すぎだろ。隙だらけだったぞ」
レオンは大男を一瞬で沈めてしまった。
「何てね…。馬鹿め、俺にそんな軽い攻撃が効くかあ。隙だらけはお前だあー」
大男は素早く立ち上がり、腕をさらに巨大化させて攻撃をしようとした。
バタッ…
レオンはさらに強力な斬撃を数発加えて大男を再び沈める。
「誰が隙だらけだって?本当に急いでるんだ。倒れたふりは、お仕舞いにしてくれないか」
レオンは髪をかき上げながら言った。
「どうやら、本当に気絶してるみたいだねぇ」
立花は大男を少し観察して言った。
「結局この方の名前もわかりませんでしたわ」
ニーナはちょっぴり同情していた。
「しかし、どこまで続くのか見当もつかんな」
レオンは次の扉を見ながら言った。
「まあ、無限に続くわけないからねぇ。先を急ごうか」
立花は扉を開いた。
「おや、これは…」
立花は立ち止まり、後ろの2人もそれに合わせて止まる。
前方に見えるのは階段だった。
「ようやくか…」
レオンは少しだけ安堵した表情になった。
「フィリップまでは、そう遠くはないだろうねぇ。しかし…」
立花は顔を曇らせながら階段を見た。
「この階段にもトラップがありそうですわね」
ニーナも険しい顔をした。
「まあ、仕掛けない訳がないからねぇ。しかも今まで以上に手の込んだものだろう」
立花はじっくり階段を見つめながら予測した。
「それでも行くしかないのだろ?」
レオンは確認するように言った。
「ここで指を加える訳にはいかないからねぇ」
立花達は頷きながら、慎重に階段に足を運んだ。
「おかしいねぇ…」
立花は少し階段を登りながら首をかしげる。
「どうしたんだ。確かにまだ何も起きないが、油断させてからズドンというパターンもあるだろ」
レオンは剣を構えながら歩いている。
「そうではなくてね。トラップが【既に】発動した形跡があるんだ。しかもことごとく破られている。嫌な予感がするねぇ」
立花は額に少し汗をかいて言った。
階段を上がりきると、目の前に大きな扉があった。
「本当に何も起きませんでしたわね」
ニーナも不安そうな顔になった。
「ここが終点のような気がするが、それにしては警備が手薄だな」
レオンも怪訝な表情である。
「考えても分かりそうに無いねぇ。私が扉を開けよう。2人とも油断禁物だよ」
立花は意を決して扉を開いた。
部屋は少し薄暗く視界が悪かった。
テーブルにソファがあり、テーブルには飲みかけのティーカップが置かれていた。
「待っていましたよ。思ったより遅かったじゃないですか、ジンさん‥」
部屋の奥からフィリップの声が聞こえる。
「ようやく君の元に辿り着いたよ、フィリップ。いやあ中々の歓迎だったねぇ」
立花はニヤリとしながら語りかけた。
「貴様には僕の部下が世話になった。借りを返しにきたぞ」
レオンは臨戦態勢に入る。
「涼子様を返して頂きますわ」
ニーナも剣を構える。
「皆さんお揃いですね。それでは僕も全力でおもてなしをしま‥ぐっ」
フィリップは言い終わらない内に床に膝をついた。
その時、月の光が部屋に明かりを灯す。
フィリップの体は血だらけで既に満身創痍だった‥。
約束の時間まで後、3時間30分‥
第40話に続く




