第32話:ナイフとトラップと説明書
第32話
「本当は待っているつもりでしたが、ここで終わらせてあげましょう」
フィリップは不敵に笑っていた。
「お前たちは手を出すな。僕が決着を着ける」
レオンは、一瞬で間合いを詰めて、斬りかかる。
「あっ待ちたまえ」
立花が止めたが間に合わず、レオンは剣を降り下ろした。
「ガキン」
レオンの剣はフィリップには届かず、透明な壁にでもぶつかったような衝撃が起こった。
繰り出された斬撃の威力がそのまま、レオンに跳ね返される。
「ぐわぁ」
レオンは吹き飛ばされてしまった。
「あーあ、だから言わんこっちゃない」
立花は呆れ顔で言った。
「お兄様、言わんこっちゃないですわ」
ニーナも続けた。
「うるさいな。お前はさっきから全然戦ってないじゃないか!口ばっかりの癖に」
レオンが大声を上げる。
「あらら、痛いとこつくねぇ」
立花は苦笑いして、左右に小さなナイフを投げた。
ナイフは、左右の木に突き刺さり徐々に発光していく。
ナイフの光と反比例してフィリップの姿は消えてしまった。
「どういうことだ?倒した訳ではないのだろ?」
レオンは不思議そうな顔をした。
「これは初歩的なトラップだねぇ。あのフィリップはもちろん偽者。獲物をおびき寄せて透明なバリアに誘い込む」
立花は説明を始めた。
「まあ、今みたいに魔力の発信元をストップさせると起動しなくなるけどね。最も引っ掛かるとは思ってなくて挑発のつもりで仕掛けたのだろうけどねぇ」
立花はナイフを抜きながら言った。
「それは、僕に対する嫌味か何かか?」
レオンは立花を睨む。
「お兄様、落ち着いてくださいまし」
ニーナはおどおどしている。
「別に嫌味じゃなくて、警告さ。彼が死神芸術家とも言われたのは、圧倒的な強さだけじゃない。狡猾なトラップの才能こそが彼の真骨頂だったんだ。幸い私もこの手のトラップのプロだからねぇ。この辺は任せてもらうよ」
立花は自信満々の笑みを浮かべて言った。
「こういう狡いことは嫌いなんだ。勝手にしてくれ」
レオンはそっぽを向いて答えた。
立花達は目の前に見える洋館に向かって歩みを進めた。
15分後、
「ニーナくん気が付いたかい?私たちは全くあの洋館に近づいてないよ」
立花はニーナに話しかけた。
「えっ、先生何を…。あっ確かにさっきから全く近づいてませんわ」
ニーナは驚いて反応した。
「おいおい、またトラップとか言うんじゃないだろうな」
レオンも立ち止まって反応する。
「流石に鈍感な君でも気づいたね」
立花は意外そうな表情で言った。
「お前はさっきから喧嘩を打っているのか?」
レオンは今にも剣を抜きそうだ。
「先生、余計なことをこんなときまで言わないでくださいまし」
ニーナは、立花を咎める。
「これは失敬。ニーナくん、このトラップは何かに似てないかい?」
立花はニーナに質問する。
「そういえば、この間のよろず屋さんから、もらったお札に似てますわ」
ニーナは思い出して言った。
「そう、君が解除し忘れて涼子くんを無駄に歩かせた、あのお札だねぇ」
立花は髭を触りだした。
「それは忘れてくださいまし」
ニーナは頬を赤らめて言った。
「何だ、このトラップは知っているものなのか?だったら早く解除したらいい」
レオンは会話に口を挟んできた。
「まあ、落ち着きなさい。よろず屋から説明書をもらったからねぇ」
立花は落ち着いていた。
「このトラップの解除方法はねー…。」
「…。」
「そういえば、忙しくて説明書を最後まで読んでなかったよ」
立花は頭を掻きながら言った。
「先生、ふざけないでくださいまし」
ニーナは立花に詰め寄った。
「誰がトラップのプロだって?」
レオンは立花を睨み付けた。
「いやあ、読もうと思った日に涼子くんが来てねぇ。読みそびれてしまったよ」
立花は言い訳をした。
「まあ、落ち着きなさい。時間はまだあるんだ。少し考えよう」
立花は座り込んで腕を組んだ。
「悠長なことを言うな。もういい、遠ざかるスピードより早く動いてやる」
レオンはそう言い残すと、猛スピードで駆け出した。
「君の兄さんって、あんなに頭悪かったっけ?」
立花はため息をついて言った。
「まあ、昔から面倒なことは考えない人でしたわ」
ニーナも苦笑いしていた。
30分後、息を切らせてレオンは戻ってきた。
約束の時間まで後、14時間40分
第33話に続く




