第28話:舌打ちと池とガマガエル
第28話
「それにしても、暇だなあ」
あたしは、部屋でパンを噛ってから特に何もしていなかった。
「フィリップさん、あのー、あたし晩御飯作りましょうか?」
あたしはフィリップに言う。
「‥‥。静かにしなさいと言いませんでしたっけ。貴女は、僕のお情けで生かされているのですよ。何なら今すぐ殺しましょうか?」
フィリップはあたしを睨んで言った。
「でもそれだと、ルール違反で立花さんの勝ちですよねー」
あたしは自信満々で言った。
「ちっ」
フィリップは舌打ちして黙ってしまった。
「あたしが居なかったら、立花さんとニーナさんは2人であの時、戦えた。そしたら、きっとアナタなんかには負けませんでした。あたしが足を引っ張ったから2人は‥」
あたしはフィリップに言った。
「なるほど、確かに僕がジンさん達を生かしたのにはそんな理由を言われる可能性があったからかもしれませんね。お約束しましょう。貴女には2人の死に顔を最初に見せてあげることを‥」
フィリップは腕を組みながら話した。
「別にそんな約束いりません。それに、2人は負けません」
あたしはフィリップを睨んでそう返した。
「まあいいでしょう。そもそも、ジンさんがココに辿り着けるかどうかも怪しいですし。来なければ、貴女の死体を見せに行くついでに殺しますが‥」
フィリップは挑発的な顔をして、あたしに言い放った。
「必ず立花さん達は、来ますよ。方法はわかりませんが、今頃この場所も見つけています」
あたしはフィリップに言い返した。
場所は立花達の居る宿屋に戻る‥
「うーむ、何か足取りを掴む方法は‥」
ニーナを買い物に行かせた、立花は知恵を振り絞って考えていた。
「涼子くんの痕跡‥そういえば‥」
立花は荷物の中から一枚の写真を取り出す。
「あの方法が使えるかもしれないねぇ」
立花は独り言を言いながらニヤリと微笑んだ。
さらに場所は変わって魔道具屋
「あとは、ラボンガマ魔神の油をくださいまし‥」
ニーナが店主に注文する。
「お客さんゴメンねー。ちょうど切らせてしまってよ。3日待ちになるけど、どうする?」
店主は申し訳無さそうに言った。
「困りましたわ。何とかすぐに手に入れる方法は無いでしょうか?」
ニーナは切実そうな顔をした。
「そうだねぇ。ここから西に10キロくらい行ったところの大きな池にガマ魔神の餌場があるからなあ。捕まえて来れれば油をすぐに取ってやれるけど‥奴ら結構手強いからね。腕利きのハンターでも‥あれっ諦めて帰ってしまったか」
ニーナは話の途中で店を出て西へ駆け出した。
「大きな池ですわね。急ぎますわよ」
人間離れしたスピードで池に向かうニーナ。
「‥‥‥」
彼女の、後をつける人物にニーナはまだ気がついて居なかった。
15分後‥
「この辺りのはずですわ」
ニーナは池に到着した。
ガマ魔神とは池近くに生息する巨大なガマガエルである。性格は警戒心が強く、獲物を捕まえるため半日ぐらい全く動かないこともよくある。
しかし、一度姿が見つかると非常に攻撃的でベテランのハンターですら捕獲には手こずることもよくある。
「ガマさん、どこに居ますの?」
キョロキョロと辺りを見渡しても見つかる気配が無い。
「諦めませんわ‥」
しかしいくら探しても、ガマ魔神の影も形も見つからなかった。
「急がないと行けませんのに‥」
ニーナの焦りがピークに達しようとしたその時、
「ガサガサ‥ドサッ」
3mはあるガマガエルの亡骸が投げ捨てられた。
「全く、こんなものもすぐに見つけられなくてどうする。これが欲しいなら交換条件だ‥」
ガマガエルの影の後ろから、男が現れた。
約束の時間まで20時間20分
第29話に続く




