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異世界ニンジャと亡国の姫  作者: 青鬼
第二章:クリムゾン・リーパー・クノイチ
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ブンブブーン!バイク!

「どこへいく気で候!」


電動ママチャリに跨がって逃げていくオバチャンを見て、赤い衣を纏った少女……クノイチは、敵を逃がすまいと駆け出した。

しかし、オバチャン達の間を高速で駆け抜けようとしたその時、オバチャン達は陣形を変えた!

先程のボーリングのピンめいたピラミッド型の攻撃陣形から一転、横一列に肩を組んで立ちはだかるさまは、一分の隙もない完璧な防御体勢であった。これでは迂闊に近づけない!


「りーだーヲマモール!」

「「「マモール!」」」


彼女らの目には、リーダーには指一本触れさせないという、強い意思が感じられた。


「ワタシ達ノ絆ヲナメルナー!」


「何が絆だ! 邪魔なゴミ虫どもが!どけ!」


なんだか、どっちが悪役か分からないぞ!


「忍者ァー!手裏剣術ゥー!」


左手でタコヤキ爆弾を抱え、右手を高速で動かすことにより爆弾を連続で射出!爆発!それがママチャリに積まれていた爆弾を誘爆し、更なる爆発を生んだ! 既に倒壊していた周囲の建物が、圧倒的爆風を受けて木っ端微塵となる!


「忍者回避!」


クノイチは爆弾を射出すると同時、高速バック転を連続で繰り出し、爆風の範囲外から逃れていた。凄まじい速さだ!

爆発で生じた黒煙が晴れれば、そこにはアフロと化したオバチャンの山が死屍累々たるありさまで積み上がっている。

クノイチはそれを確認すると、小さく溜め息を漏らした。


(やはり今の私は万全ではない。この空腹が無ければ、みすみす獲物を逃すようなミスは犯さない。……いや、別にダシャレとかじゃないし。ちょっと偶然そうなっただけだし。私、本気出せばもうちょい面白いこと言えるし)


脳内で呟きつつ、クノイチは後方へと視線を向けた。

視線の先から走ってくるのは、一人の金髪の青年。フォルストだ。


「酷いじゃないですかクノイチさん! 私のタクシーを爆発炎上させるなんて! 運良く緊急脱出装置が作動したから良いものの、下手したら死んでましたよ! だから素人に運転を任せたくなかったんですよ!」


「それより飲食店がことごとく焼き払われているのが問題で候。戦争でも起きているのか、この国は?」


「知りませんよそんな事! あと、焼かれているのは飲食店だけではありませんよ! 街そのものと! 私のタクシー!」


「知ったことか。飯以外の万物は私にとっては等しく無価値だ」


「いくら美人だからって何しても許されると思わないで下さいよ!」


「分かった分かった。……だが、今はそれどころじゃないぞ」


クノイチは難しそうに腕を組んで、視線をオバチャンアフロの先に向けた。フォルストはクノイチの視線を追うものの、煙や砂埃のベールに覆われた不明瞭な視界には何も映らなかった。

しかし、クノイチの卓越した忍者視力はしっかりと捉えていた。

遥か遠方からゴツいバイクに乗った男と、何百というオバチャンの群れがやってくる姿を。



ブンブブーン!バイク!


「グッハハハ!グッハハハハハ!」


少し時は遡る。

ヘーアンの街を完全に陥落させたドドラスは、バイクに跨がりながら上機嫌で高笑いをしていた。後ろには何百人ものオバチャンが控えており、ママチャリに跨がって整列する様は、一般人が見れば失禁するほどの威圧感を秘めていた。


「グッハハハ、楽勝だな! ナッラー王国恐るるに足らず! こうも張り合いがないと逆につまらんわ! グッハハハハハ!」


「「「セヤネー!」」」


ドドラスの言葉に、オバチャンが一糸乱れぬ完璧なタイミングで同意の言葉を返す。その動作はカラクリ人形めいており、感情など感じさせない無機質さが有った。

ドドラスはどうにもこのオバチャン達の機械的な雰囲気が苦手だった。言葉では形容しがたい不気味さが有るのだ。


(フン、まあいい。どうせ後は別動隊のリリ嬢の帰りを待つだけ。任務が終わればオバチャンどもとはオサラバだ)


ヘーアンの街の制圧は、ドドラスに与えられた命令の一部にすぎない。

本命はナッラー王国の王女、クレア姫を捕虜にすることであり、現在、暗殺部隊がその作戦を遂行中だ。ドドラスは、その退路の確保を命じられている。

機動力だけならドドラスに勝る者は居ないが、追跡能力に関しては暗殺部隊の隊長、リリファルカに軍配が上がる。ドドラス自身その事は認めていたので、この役割分担に文句は無かった。


「しかし暇だな。リリ嬢の到着まで、何をして時間を潰そうか」


ドドラスが道に転がるアフロの数でも数えようかとしていたその時、電動ママチャリに跨がったオバチャンが、死にものぐるいで走ってきた。


「タスケテー!」


「ぬう?何事だ、落ち着いて説明しろ!」


「カクカクシカジカ!」


「何!? やたら強い赤い服の少女によってオバチャン部隊が全滅し、貴様はおめおめ逃げ帰って来ただと!? バカモン! たった一人に何たる無様!」


「アレハ化ケ物デス! タダチニ増援ヲ!」


「フン、ちょうど退屈しておったところだ。我輩自らが、その化け物とやらをアフロにしてくれよう!」


「アリガトー!」


「グッハハハハハ! 構わんよ! だが貴様はオバチャン部隊を全滅に導いたあげく自分だけ逃げてきたので生かしてはおかぬ」


「ヘッ?」


ドドラスがバイクに搭載されている攻撃ボタンをプッシュすると、バイクの側面ハッチが開き、二丁の無人機銃が出現した! そして発砲! ズドドドドド!ズドドドドド!


「アバババババー!」


オバチャンは蜂の巣に! なんと残虐卑劣な行いか!


「グッハハハハハ! では行くぞ!」


そんなこんなでドドラス率いる数百人のオバチャン部隊は進軍を始めた!

危うし、クノイチ!

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