3話 W V 前編
レッドラビットのCMを
観た映画館みたいな部屋から、
訓練用の部屋に移動した。ここも広い。
四方が灰色の壁に囲まれているが、
壁と壁の間はゆうに50メートルはある。
床は黒く、ゴムマットのようだった。
そこでマニュアル本を広げた
冥華からURとゴビートに
ついて説明を受ける。
3分後、
…絶兎はイライラしていた。
冥華は気にせず、
マニュアルを読みながらの説明を続ける。
「じゃから…ゴビートは…じゃな
未練を…じゃな。
禍根という核にして…じゃな。
強くなると…いう…」
「じゃな、じゃな、うるせえ!」
「なんじゃと!貴様ぁ!コンプラをふまえて、
ちゃんとマニュアルを読んでるんじゃ!
我慢して聞かぬかぁ!」
「そのマニュアルを俺に渡せ!
原因不明の死にはゴビートが
関わってるってことと、
URがゴビートを倒せるチカラってのは、
わかった!なんとなくだけどな!
だが!それ以外がわかりにくい!」
イライラした絶兎が声を荒らげる。
冥華もそれに比例して声を荒らげた。
「じゃから、今、説明の途中じゃあ!
しかと理解せねば、訓練で
痛い思いするんじゃぞ!」
ピリピリした冥華を応援しようと
妄兎もがんばる。絶兎にむかって
注意する。
「は、はわわ。あ、あのぉ!
訓練なめんなよぉ〜」
「ちょっと黙ってろ!デカパイがぁ!」
「はわわぁ!」
応援終了。
「いい加減にするんじゃ絶兎っ!
品性のカケラも無いヤツめ!
もう良い!コンプラなんか無視じゃぁ!
実践で教えてやるわ!」
「最初からそうしろ」
冥華が右手を挙げる。
「練習用のゴビートじゃ」
そう言って右手を下げた。
「ん?どういうことだ?」
部屋には何もいない。
「ほら、理解できんじゃろ?
説明を聞いてないから
そうなるんじゃ。
実戦だったら、もうすぐ
お主は死ぬぞ?」
「いや、死んでんだろ!すでに!
死んでるから
今ここにいるんだろ?
それに、下手くそな説明を
何分もーーっ!?」
急に絶兎の右肩あたりの空気が
グンと重くなり、何もない空間に
体が引き寄せられる。
「うお!」
ドン!
車に轢かれたかのように、
吹っ飛ばされた絶兎。横になったまま
床を五回ほど転がった。
「い、痛え。死んでるはずなのに痛え」
「霊体同士の攻撃はぁ、
痛みも消滅も起こりますぅ」
ダウンしている絶兎を妄兎が
のぞきこみながら言った。
「うむ。
妄兎、誠に手間じゃが、頼むぞ」
冥華がため息まじりに言う。
「お手間じゃなぁいでぇーす。はーい、
絶兎様ぁ〜、失礼しますねぇ〜」
そう言いながら、妄兎は絶兎の顔を
右手で鷲掴みにする。
プロレスに詳しい方なら
アイアンクローを連想するだろう。
「おぉいっ!ぃぃい痛え!」
「すぅみませぇん。
今、霊体をぉ
組み替えてますのでぇ〜」
妄兎はダウンした絶兎の顔を
鷲掴みにしたまま、上にグイッと持ち上げた。
しかも片手で。
「痛えっ!痛えって!こめかみもげるっ!」
絶兎の身長は193センチあるが、
妄兎の身長も190センチある。
伸ばした右手に頭を鷲掴みされた
絶兎。地に足がつかず、
痛さに足をバタバタさせる。
「ぐあああっ!」
「ふふふ、すごいじゃろ?
妄兎の握力は生前400キロ
あったらしいからのぉ」
冥華が心から嬉しそうにニヤケている。
「ゴリラじゃねえかぁ!ぐああ!」
「ふは。
妄兎、もう少し時間かけても良いぞ。
強者に格の違いを思い知らされる
チンピラの構図みたいじゃ!ふははは!」
冥華はとうとう笑いだす。
「悪趣味がぁぁ!ぁぁぁっ!」
絶兎は軋むコメカミと頬骨の痛さに
言葉にならない。
「そんな構図じゃないですぅ!
ブランブラン揺れてぇ、
UFOキャッチャーの
お人形さんみたいな構図ですぅ!」
握力400キロのUFOキャッチャーが
あってたまるか!
景品が全部、はじけるわ!
そうツッコミたいが、言葉にならず、
意識が遠のきそうになった絶兎
「完了でぇすぅ」
ーードサァ!
妄兎が鷲掴みを解除したとともに
床に倒れた。
「はぁ、はぁ、クソ痛え。
なんだ、この仕打ちは?
デカパイって言ったことへの
怒りか?」
「ち、違いますぅ!霊体を変えるのは
結構、アタシもキツいんですよぉ」
たしかに
妄兎も少し疲れているように見えた。
「阿保ぉ、絶兎。
お主が吹っ飛ばされたところを、
もう一度、見るが良い」
「あぁん?」
絶兎は妄兎を睨んだ目のまま、
視点を移動させた。
「うお!デケエ!」
さきほど肩の重さを感じたところに、
3メートルはあろうかというほどの
大きなパンダ種がいた!
ただ、普通のパンダ種と違うのは、
白い部分がやや灰色がかっており、
輪郭から白い湯気のようなものが
ゆらゆら漏れているところだった。
「俺を吹っ飛ばした奴か!?」
「その通りじゃ。
お主の霊体を、霊資に反応する形へ
少し組み替えた。
だから見えるようになったんじゃ」
「霊資!?」
「簡単に言えば、
ゴビートに触れるための力じゃ。
ワシやお主のように、
体ひとつで戦える者は霊体強者。
妄兎のように、
霊資や道具を操って戦う者は霊資使いじゃ」
「妄兎も戦えんのか?」
「当然じゃ。
死神のエリートは、
霊資使いが多いからのう」
「デカパイでゴリラで
エリートなのか!?」
「言い方があるじゃろうが!」
冥華が眉を吊り上げたあと、
ふん!と鼻を鳴らす。
「まあ良い。口で説明しても、
お主はどうせ理解せんじゃろ。
どれ、ワシがひとつ見本を
見せてやろう」
「はぁ?ちびっ……」
「冥華様じゃよな!
冥華様、勉強させていただきます!
じゃよなぁ!?
まさか、地獄行きがなくなったとは
思ってないじゃろうなぁ!?」
「い、いや、ちびっと心配になっただけだ。
冥華様ぁん、勉強サセテ イタダキマスゥ」
「なんか腹立つアクセントじゃが、
いいじゃろう。見ておけ」
「指先のビームとか
魔法で勝つのか?」
「残念じゃが、遠距離攻撃では
ゴビートを倒せぬ。
何百、何千回と繰り返した動きにこそ、
URは宿るのじゃ」
冥華は小さな体をさらに低く構えた。
両手の人差し指と中指を突き出す。
絶兎は、
その構えに見覚えがあった。
「あ?虫?…カマキリか?!」
「ワシの祖父から受け継いだ技じゃ。
特別に見せてやろう。
ワシのUR ーー
蟷螂拳を」
つづく
ここまで、お読みいただき、
ありがとうございますっ!
感想、レビュー、ブクマがあると
モチベがブワーッと上がると思います!
…ブクマ1を目指し、更に読みやすさと
面白さを鍛えていく所存ですっ!




