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ユイカ 短編&SS集――異世界で出会った人々と、それぞれの時間  作者: *ほたる*


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6/6

笑い方が違う

 ある日の縁側。


 茶を飲みながら、ユーリスとサイガは庭を眺めていた。


 しばらくの沈黙。


 不意に、ユーリスが口を開く。


「……ユイカは」


 サイガが視線を向ける。


「お前といると、表情がよく変わるな」


「そう?」


 サイガは首を傾げる。


 ユーリスは静かに頷いた。


「怒ったり、笑ったり、叫んだり……」


 一拍。


「俺には、あまり見せない」


 その視線が、わずかに落ちる。


 サイガは大袈裟にため息をついた。


「……本気で言ってる?」


「何がだ」


「気づいてないんだ」


 呆れたように笑う。


「ユイカの笑い方、俺とユーリスで全然違うじゃん」


 ユーリスはわずかに眉を寄せた。


「……違う?」


「うん」


 サイガは肩をすくめる。


「結構、分かりやすいよ」


 その時だった。


 廊下の向こうから結花が歩いてくる。


 ユーリスを見るなり、ふっと表情がやわらいだ。


「ユーリスさん」


 頬がほんのり赤く染まり、嬉しそうに目を細める。


「あ、サイガも」


「俺はついで?」


「ち、違います!」


 結花は慌てて両手を振った。


「そんなこと言ってません!」


 サイガは吹き出す。


「ほらね」


 ユーリスは何も言わない。


 ただ、結花をじっと見つめていた。


「じゃあ、俺行くね」


 立ち上がり、ひらりと手を振る。


「ごゆっくり」


 そのまま反対側の廊下へ消えていった。


 結花は首を傾げる。


「……何かあったんですか?」


 そう言って、いつものように隣へ腰を下ろす。


 その瞬間。


 ユーリスの腕が、そっと結花を抱き寄せた。


「ゆ、ユーリスさん?」


 結花の頬がさらに赤く染まる。


 ユーリスは何も言わない。


 ただ、少しだけ目を細めた。


 穏やかな風が、二人の間を吹き抜けていった。

ユイカの物語はKDP版『無口な将軍は、戦場で覚醒した私を離さない』にも収録されています。


https://www.amazon.co.jp/dp/B0GX32H7NT


本編後の二人や兄視点の話なども加筆しています。

気になる方はのぞいてみてください。


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