転生者はストーリーを滅茶苦茶にする エミリアside
「転生者がいるとストーリーが滅茶苦茶になる???・・・どういう事・・・?」
悲しげな顔になってしまったマーガレットちゃんに、私は尋ねた。
「そのままの意味です。エミリアさんは悪役令嬢では無かったし、物語開始時点でリカルドとラブラブでした。リチャード様はBLものなのに、エリオス様とはお友達で、お互いに子供もいます。・・・私も逆ハーレムなんて持ってませんし、特に誰とも親しくしていません。」
・・・そっかぁ。・・・ん?
あれっ?・・・そ、そうかな???
「え、違うよね?マーガレットちゃん、アーノルド殿下と仲良しだよね?・・・あの騎士団のお芝居も、アーノルド殿下に頼まれて書いたって聞いたよ?」
マーガレットちゃんの顔が歪む・・・。
「・・・。アーノルド殿下も主人公だったので、少し、介入してみたんです・・・。」
「???・・・アーノルド殿下も転生者、なの?」
「違います。・・・この世界は、かなりライトノベルの主人公がいるんです。・・・だけど、みんなが転生者とは限りません。・・・例えば、アメリア妃も、ライトノベルの主人公です。」
「えっ?!・・・はぁ、アメリアも?・・・えっ?えっと、この世界って、お話の中って事なの???」
だとしたら、かなりショッキングだよね?
「・・・いえ。そうとまでは言えません。限りなく酷似した、現実世界だと思います。例えば、私は幾ら努力しても外交官として、仕事を与えてもらえませんでした。私が女で、下級貴族の娘だからです。・・・そんな世知辛い事はいくらでもありました。努力で夢が叶うなんて、甘い世界では無いのは確かです。・・・それに、私の話だって、突き詰めると微妙に違う点が沢山ありました。怪我や病気もありますし、お話みたいに都合よくばかり事は進みません・・・。」
「そ、そうなんだ。・・・。」
そういえば、マーガレットちゃんは・・・すごく頑張って外交官になったんだよな。確かにお話なら、大活躍してるはずだ。・・・だけど、現実だからままならない。
そっか・・・いくらチート持ちでも、現実だから、そんな事もあるんだなぁ・・・。じゃあ、頑張ってない私がショボくても仕方ないかぁ・・・。
「それで、アメリア妃の事なんですけど・・・。アメリア妃が主人公のライトノベルも、私、読んだ事があるんです。・・・ヒーローは勿論ロバート殿下でした。」
「・・・アメリアも転生者なの?」
「違うと思います。アメリア妃にそれとなく転生について聞いた時、意味が分からなそうでしたので。・・・ただ、アメリア妃とロバート殿下は私の知るお話の通りに、進展しました。全く同じって訳ではありませんが・・・。お芝居の脚本を依頼された時に、パクリになってしまうと、困るくらいには同じでした。一応、私も作家としてのプライドがあるんで、パクリはちょっと・・・それで、演出が映えるような設定を入れたら、二人の要素が薄くなってしまって・・・。あ、また話が逸れてしまいましたね。・・・多分、転生者でないと、ストーリー通りに話が進むんです。」
「えっ!?・・・な、なんで?」
「主人公と性格が同じだからではないでしょうか?・・・転生者がストーリーを滅茶苦茶にするのは、主人公と転生者の性格が一致してないからではないかと考えています。・・・例えば、エミリアさんは最初からリカルドと気が合うからラブラブ、私は逆ハーレムは気持ち悪くて無理、リチャード様は女性がお好き・・・と、主人公と違う性格だから、物語が滅茶苦茶になってしまうのではないでしょうか?」
・・・なんだろう。リカルドと最初っからラブラブ設定やめて欲しいな。いちいち入れてきますが、私たちは、やっと思いが通じて結婚したんだよ?ホントに・・・。
・・・でもな、否定すると墓穴掘るからなー・・・。
「・・・なるほどね。で、アーノルド殿下は?殿下も転生者じゃない主人公って事?」
「・・・はい。そうです。・・・殿下が主人公のお話を思い出したのは、卒業してからです。・・・だから、思い出しても、何もできませんでした。・・・卒業して外交官になって、フリード殿下にお会いした時に、思い出したんです。・・・アーノルド殿下も、主人公だった・・・フリード殿下に利用されて破滅する、悲劇物の主人公だった・・・って。」
そう言うと、マーガレットちゃんは、さらに悲しそうな顔になり、俯いた。
・・・え。
・・・アーノルド殿下が・・・フリード殿下に利用されて、破滅する?・・・確か、お兄様はアーノルド殿下をフリード殿下が唆して、何かするんじゃないかって、疑っていたよね?・・・ありそうな話、だよね?
「ねぇ、その話・・・その通りに進んでいるの?」
「・・・今は少し進行が遅くて、違いが出ています。多分、転生者のエミリアさんが居たからかも・・・。本来なら、エミリアさんはアーノルド殿下に誘拐されて、ユリウス様によって、徐々に追い詰められます。そうしてフリード殿下を頼って、どんどん泥沼に・・・。だけど、今はまだ、そうなってませんよね・・・?」
マーガレットちゃんは、おそるおそるという感じに聞いてきた。
「・・・。あのね、私ね、リチャード様と誘拐はされたんだよね。・・・でも、すぐにお父様が助けてくれたし、犯人はよく分からないままなんだよ。・・・フリード殿下が関係してそうかも?って話だけど、それも推測だし・・・。アーノルド殿下は出て来なかったはず。」
「・・・もしかすると、リチャード様も居たからかも知れません!・・・それで、更にストーリーの狂いが出たのかも・・・!ああ、良かった・・・。」
マーガレットちゃんは、ホッとした様に言うと、安堵のため息を漏らした。
・・・あのさ、マーガレットちゃん・・・ガチ惚れじゃないですか、これ。アーノルド殿下にさ。
「マーガレットちゃんてさ・・・アーノルド殿下が好きなんだね?」
「・・・そんな事っ!!!・・・恐れ多いです。・・・さっきも言いました様に、ここは現実世界です。私ごとき子爵令嬢が殿下をお慕いした所で、叶うものではありません。ちゃんと分かってます。・・・ですが、殿下の破滅だけは阻止したいんです。」
私も生暖かい目でマーガレットちゃんを見つめてみる。・・・さっきの仕返しだ。
マーガレットちゃんは、私の視線に気づくと、真っ赤になって続けた。
「・・・そうです。好きなんです・・・。学園に居る時から・・・お慕いしてました。でも、逆ハーレムとか怖くて・・・素直になれなかったんです。・・・一時的だとしても、お側にいたかったと、ずっと後悔してました・・・。」
そう言うと、マーガレットちゃんの美しい紫色の瞳から、大きな涙がポロリと溢れた。
・・・やべ。可愛い・・・。
思わず、隣に行ってギューっと抱きしめる。・・・柔らかくて、すごく良い匂いがする。やっぱりたまんないな、これ。
「大丈夫だよ。・・・私もリチャード様もいるし、リカルドに、お兄様もいるよ。・・・きっと大丈夫。破滅を回避できるよ。・・・アーノルド殿下をフリード殿下から取り戻そう?」
「・・・はい。」
マーガレットちゃんは、私にしがみついて小刻みに震えている・・・。多分、泣いているんだと思う。
「とりあえず・・・お兄様に、相談してみよう?前にね、フリード殿下がアーノルド殿下を唆してるって言ってたんだ・・・。リアリストのお兄様には、前世とかラノベとか通じないから、転生うんぬんは止めといた方が良いと思うんだけどさ。」
「も、もちろんです!・・・転生の事は、絶対に言わない方が良いです!・・・私、それで両親に気味悪がられてしまいましたから・・・。エミリアさんは、リチャード様には打ち明けてるんですか?」
「・・・ううん。言ってないんだ。リチャード様は、私とお父様には話してるけど、リカルドには言ってないみたいだし・・・。リチャード様に、言った方が良いかな?」
「・・・いえ。やっぱりリカルドに打ち明けられないなら、自分からは言わない方が良いと思います・・・。」
そうだよねぇ・・・。
リカルドには死ぬ時に話す気だし・・・リチャード様には、まぁ秘密でいっかー・・・。
私がそう考えていると、入り口のドアから、ガタガタと音が聞こえてきた。よく見ると、ドアは薄く開いている。
「リチャード!やめろって言ってる!」
ロイド様の怒号が響くと、ドアがガタンと大きな音を立てて開き、リチャード様とロイド様が倒れ込んできた。
・・・おい、何やってんの!
「痛い!痛いって!ロイド、退けよっ!」
「お前が立ち聞きしようとするからだろ!・・・ご婦人方の、秘密のお話を盗み聞くなど、紳士としてあるまじき行為だっ!」
文句を言いながら、ロイド様は立ち上がり、床に倒れたままの、リチャード様を引っ張り起こした。
「・・・何してんの。リチャード様。」
私が、冷めた目でリチャード様を見つめると、リチャード様は可愛らしく微笑んだ。・・・あざとい。あざといよ、ほんと。
「僕も、お話に混ざりたくって?」
「リチャード、邪魔はよせ。・・・申し訳ない、マーガレット嬢。」
ロイド様がそう言うと、マーガレットちゃんはプルプル震えて赤くなった。
・・・?
『エミリアさん、ロイド様もリチャード様のお相手なんです!・・・エリオス様の次に・・・私の推しです。』
興奮気味で、マーガレットちゃんが耳打ちしてくる。
・・・はっ?
『まっ、待って。リチャード様とロイド様が知り合ったのは最近だよ?・・・さっき「歳を重ねた」って言ってたくらいだから、リチャード様のお話は、もう過去なんだよね?』
『ええ、リチャード様が20代の頃のお話になると思います。ロイド様編でのリチャード様は、学園で「算術」の講師をされてるんですよ!そこに生徒としてロイド様が入学されて・・・。はぁ・・・こちらのカップルにもお会いできるなんて・・・!あぁ、生ロイド様もイイ・・・。』
・・・確かに、ガチ理系のリチャード様には、学園の算術講師なんて、余裕だろう。だが、あの性格のリチャード様が、『算数』の先生なんかやるとは思えない・・・。
計算が得意なリチャード様に、リカルドが侯爵家の収支報告のお手伝いをお願いした時も、嫌そうにしていた。「だだの足し算と引き算なんて、ロマンのカケラもないよ!美しい数式にしか、僕の心は踊らないんだ!数学は美しいパズルだからね!」とか騒いでいたな・・・。結局、面倒くさくなったリカルドと私とマックさんで手分けして頑張った。確かに面倒だけど、前世でソロバン習ってて、暗算のみ上達した私は・・・割と役に立ってた・・・と思う。
・・・そういうとこか、そういうとこがストーリーを滅茶苦茶にするのか・・・。
『あれっ???・・・あのさ・・・マーガレットちゃん、ロイド様も仮装イベントにいたよ???』
『え・・・?あ、れ?・・・すいません、エリオス様とリチャード様に夢中で、他は全く記憶にありません。』
!!!
・・・お、お兄様・・・。
お兄様の捨て身の努力は、マーガレットちゃんには全く響かなかった様だ・・・。
さすが、現実世界。・・・ままならないのは本当の様だ。




