1、『無才の終演』
素人小説、3作目です。
この度初の長編にチャレンジしてみます。
既に短編を2作品投稿しているので、そちらもよろしければご覧ください。
この先どれくらい長くなるかはわかりませんし、面白さも保証できませんけど…。
更新遅めかもですが、温かい目で見ていただけると嬉しいです。
それでは、よろしくお願いします。
「─これで終わりだな」
「くっ…」
目の前の女、リュカが絶望を突きつけてくる。
どうしてこうなったのだろうなんて甘えた考えはない。
自らの実力は弁えているつもりだ。
では、なぜこんなにも悔しいのか。
その理由は至極単純だ。
相手は魔術師の最高峰。
才能の化身。
才能のみで自らを圧倒するその実力が、酷く理不尽で、それでいて羨ましく思えたからなのだった。
駄目だ。相手が強すぎる。
やはりこの世界、とりわけ魔術という分野では才能こそが全てなのか。
諦めが、男を支配する。
膝をついたまま、立ち上がることは出来なかった。
そして──
─程なくして、男は敗れた。
◇◇◇◇
いつまで経っても、あの屈辱は忘れられなかった。
男は若くして大病を患ったため、既に魔術師としての生命を終えていた。
日を経るごとに病態は悪化していく。
「もうそろそろ、俺も限界なのかね…ってこれじゃフラグか」
哀愁を漂わせた男は呟く。
ベッドの寝たっきりの男は、短い生涯を振り返る。
─天才が嫌いだった。
男は魔術師としての才能は皆無で、どこにでもいるような有象無象の魔術師だった。
だが、男は才能がないことを自らが燻る理由にしたくなかった。
だから、男は必死で抗った。死ぬ気で努力した。寝る間を惜しみ、食事を忘れるほど研鑽を重ねた。文字通り、命を削った。
「一体何のために…」
男は周囲とは一線を画した努力でどん底から這い上がってきた。
命を賭した努力の末に魔術師の最高峰の称号である『原初ノ精霊王』の一歩手前、『精霊使い』まで上り詰めた。
気付けばいつしか魔術のために生きるようになっていた。
そこで、先のリュカとの戦いだった。
◇◇◇◇
「ふむ」
リュカが何かを言おうとしている。思わず身構えてしまう。
「才はないが、研鑽のみで成り上がってきたか…その実直さは認めてやろう。…だが」
直後の一言が未だ深く男に突き刺さっていた。
「無才がいくら踠こうが、天才には届くはずもないのだよ」
◇◇◇◇
─本当に、その通りだと思った。
才能が無ければ、出来ることも限られてしまう。
努力だけで到達できる域なんて、たかが知れている。
これまで死ぬ気で積み上げてきた努力を否定されたはずなのに、怒りなどは湧いて来なかった。
代わりに在るのは、自分が無才で力不足であることへの悔しさ、これ以上どう頑張ろうが成長が見込めないことへの諦め──
本来、この男には「負け」という選択肢は存在しないはずだった。
だがそんなことがどうでも良くなる程にこの言葉は、心に深い傷をつけた。
「まぁ、俺にしては頑張った方じゃないか、な…」
世界は無情だ。
『生まれながらにして人は平等』などと言う人がいるが、そんなのは詭弁だ。
人と人の間には、生まれた時から才能という穴がある。
そしてその穴は、どれだけ時間が経っても、努力しても、決して埋まることの無い穴だ。
身体がどんどん弱っていくのを感じる。
自らに才ではなく向上心しか与えなかった天は、何を考えてそんなことをしたのか。
「…もう少し、やりようはあったのだろうか…どう、すれば良かったのだろう…」
意識が薄れていく。
もうすぐ死ぬというのに、過去の最善を考えてしまうのは、今更変えることの出来ない男の諦めの悪さの表れだった。
そして最期に投げかけた問いは、誰の耳に届くこともなくただあたりに響いただけだった。
こうして、“努力の天才”だったある男は若くして命を落とし、人生の幕を下ろした。
─この後すぐに第二幕が始まろうとしていることを、男は知る由もない。
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