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宿屋にて。

 起床後即時飲み、30分以上飲食をしてはいけないという薬を飲み始めました。

 地味に面倒ですが早起きは三文の得と言いますし……頑張ります。

 


 宿にはフェリシアたちも連れてきた。

 エックハルトたちとの話し合いなら護衛だけで十分だろう。


「皆、元気そうで良かったわ」


「うふふ。御主人様もお元気そうで何よりですわ~」


「あ、ローレル。販売はどうだった? 変なお客さんとかいなかった?」


「紳士や淑女の皆様ばかりでしたわ~。困った方はあの老女ぐらいでしたのよ~」


 一番大きな部屋で思い思いの場所へ座る。

 このメンバーであれば私の両隣は彩絲と雪華で固定だが、それ以外は自由になっていた。

 ローレルはちょうど対面に座っている。


「結局どんな手配を取ったの?」


「蛇で拘束したままエックハルト殿へ送りつけたぞ」


「最愛様への不敬罪。女王陛下の威を借りようとする問題児。適切な処理を……と手紙を一緒につけておいたわ」


「……蛇たちが気を利かせたようですね。一度館に行って、エックハルト殿の留守を知り、陛下と会談している場所へ置いてきたようです」


 眷属たちが日々優秀になっていく気がします。

 先王の幼馴染みの母親さん、御愁傷様です。

 

「陛下の前では申し上げられませんでしたが……主殿。最近、屋敷への王城関係者の出入りが多くなっております」


「あ、あと! 神殿関係者の方も!」


 セシリアの垂れ耳がぴるるるっと激しく揺れる。

 可愛い。


「屋敷の中にまで入り込んでくるの?」


「……それはイェレミアスさんぐらいです」


「あー、彼は仕方ないかな」


「ドロシアも彼の件で主に連絡を取りたがっておりました」


「料理が美味しいから! 気を遣わなくて良いから! と真っ直ぐな目で言われてしまうと拒否しがたいのだと」


 ドロシアをも困惑させるイェレミアス。

 凄いね。

 でも彼女たちの負担になるのは許さない。


「ローレルがいないときに、貴女が販売員で屋台を出してもらえると嬉しいって話題が出たのよ」


「私は構いませんわ~。護衛のフェリシア次第だと思いますの~」


「自分は構いませんが……これ以上王城の方たちとの接触を増やすと、神殿の方々が何か言ってきそうな気がします」


「王城推薦と神殿推薦両方だせばいいのかしらね?」


「落ち着けアリッサ、目が据わっておる」


 彩絲に咎められた。

 ノワールがすっとお茶を差し出す。

 レモンバームメインのハーブティーだろう。

 湧き上がった怒りに近い苛立ちがすっと引いた。


「……私、どちらとも少し距離を置きたいのです」


 セシリアが服をぎゅっと握り締める。

 すかさずネイが彼女の肩に乗って頬をすり寄せていた。

 ふわふわの毛並みにセシリアも緊張を解いたようだ。

 ふうと溜め息を吐いて弱音を吐き出してくれた。


「……どちらにも、私を……性的対象として見る方がいるのです。全員ではありません! それぞれ一人ずつ、確実に距離を縮めてくる方がおりまして」


「やはりそうだったのだな! 止められずにすまない」


「フェリシアは何も悪くないわ! だってあの人たち……貴女の留守を狙ってくるんですもの」


 おや、随分とたちが悪い真似をしてくれる。


「フェリシアだけではなく、護衛を増やそうかのぅ」


 彩絲も怒りを覚えたようだ。

 子蜘蛛たちが何処からともなく現れる。

 同じタイミングで子蛇たちも現れた。


「それぞれ二体ずつでいいかしら?」


「そうじゃな。報告も密にさせるように手配しよう」


「それは最低限の手配ね。どちらとも距離を置かせてもらいましょう。ランディーニ。お願いしてもいい?」


「二組織相手では、ちと荷が重い」


「では彩絲と雪華もお願い。しっかりと通達して」


「……奥方の護衛は我が引き受ける。安心するといい」


 二人が声を上げようとする前に、ペーシュが現れた。

 皆が硬直する。


「あ、皆は初めてか。新しい家族になったのよ。名前はペーシュ。エンシェントスライム」


「よろしく頼むぞ。基本的には表に出ず、影から奥方を守護している」


「……初めて、エンシェントスライムを拝見しました。どうぞ、よろしくお願いします、ペーシュ殿」


 他の者が無言の圧に負ける中でフェリシアだけが挨拶をこなす。


「うむ。皆も肩の力を抜くといい。我は奥方の家族を尊重する」


「じゃ、じゃあ、触ってもいいですか?」


「ネイぃ!」


「構わない。なかなかの感触だぞ? そなたも遠慮はいらぬ」


 フェリシア以上に凄いよ、ネイ。

 遠慮なくペーシュに突進していき、その体の上で弾んでいる。

 我慢していたネマも同じ道を辿った。

 おろおろしているネルはペーシュの触手に浚われてしまう。

 ……ペーシュも可愛いもの、好きなのかしらね?

 

「ご、御不快ではありませんか?」


「ない。気にせず楽しむと良い。妹たちと一緒にな」


 ぽにょんと体を動かせば三体の体が宙に舞ったあとで優しく受け止められた。


「……ペーシュ殿も陥落する三姉妹……」


 ノワールの小さな声はしっかりと耳に届いた。

 本人も無意識だったようだ。

 口元を押さえている。


「あ、ありがとうございました」


「楽しかった、です!」


「……またお願いしてもいいですか?」


「機会があればな」


 三姉妹は名残惜しそうにペーシュの体をさすってから下がった。


「……では、妾たちは皆と王都へ戻るとしよう」


「アリッサはまだこの街にいる予定なの?」


 問われてクエストを思い出す。

 まだ街を堪能していない。

 バーニングマン似たイベントは何時だろう。


「この街で有名なイベントがあったと思うんだけど……それって何時ぐらいに行われるものなの?」


「……本来はもう少し先の予定だったようでございますが、今人が多く集まっているので、そのまま開催をしようという意見が上がっているのだとか」


「無茶だね」


「無茶ですね」


 この突発イベントを開催するきっかけになった自分が言って良いのか微妙な話だけど。


「うーん。明日屋台を見て回ったら移動かなぁ」


「了解。連絡は随時取り合って、なるべく早く合流するようにするわー」


 雪華がむんと気合いを入れた。

 彩絲も頷いている。


「じゃあ、今後は王城と神殿とは距離を置く方向で。新しいことをやりたかったらキャンベルさんに相談かな?」


「ああ、彼女なら安心だね。ギルドを通してなら屋台もできるし」


「いろいろなクエストがあるからのぅ。キャンベルに選んでもらえば良かろう」


 お茶会にも呼んだ信用できる人物だ。

 実力も権力もある。

 王城や神殿の横やりも上手く躱してくれるだろう。

 もし無茶をするなら、それこそ名前を出してもらえばいい。


「セシリアも無理しないで。屋敷に籠もっていても全く問題はないの」


「はい。ありがとうございます。私は裏方に回らせていただきます」


 ここにきてやっとセシリアが安堵の表情を見せた。

 随分と追い詰められていたようだ。

 ローザリンデもフュルヒテゴットも信用できる人物なのだが。

 トップが信用できるからといって、部下全てが信用できるわけではない。

 悲しいがこればかりは仕方がないと諦める。


「……明日には出立したいのぅ」


「えー、せっかくだから家族で仲良く屋台巡りをしたいのだけど」


「うーん。なかなかこんな機会ないもんね。彩絲。明日はアリッサの希望を叶えようよ!」


「はぁ……仕方ない。陛下たちとの同行は断るぞ。何やらそんな話が出ているようだからのぅ」


「あら、盗聴してるの?」


「当たり前じゃろ。陛下はちと、親友をこき使いがちじゃからな」


 まぁ、確かに。

 私も少々思う所があった。

 ……難しいよね。

 権力者が友人を作るのって。

 自分に権力があるのを忘れがちだけれど、都度都度自覚しないといけない。

 嫌な思いをするのは大切な相手と自分なのだから。


「うわぁ……主様と一緒の屋台巡り。嬉しいです!」


「……私も参加して大丈夫でしょうか?」


「勿論よ。楽しみましょう」


 セシリアが心配そうに問うてくる。

 私が即答すると、肩の上にいるネマとハイタッチをして喜んだ。





 柊麻莉彩 ひいらぎまりさ


 HP ∞ 

 MP ∞ 

 SP ∞ 


 スキル 鑑定∞ 

     偽装∞

     威圧∞  


 奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図

      王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲 

      浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)

      ウインドアロー ウインドカッター 


 固有スキル 弱点攻撃

       魔改造 

       簡単コピー 

      

 特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。

 サファイアのネックレス

 サファイアの指輪

 サファイアのイヤリング


 特殊アイテム

 リゼット・バローのギルドカード

 魚屋紹介状

 衣類屋紹介状


 称号 時空制御師の最愛  


 エシレのバターだけではなくスイーツも気になるのですが、地味に高いんですよね……あとは食べたいアイテムが日持ちしないのです。

 機会があったら挑戦するつもりではいるのですが。


 次回は、久しぶりの家族団らん。(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続きよろしくお願いいたします。

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