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お次はスイーツ販売ですね。3

 マルコとマルオが始まったので、うきうきと本の注文をしました。

 10%引きは大きいですよね。

 注文し忘れがないように再確認しないと……。

 


 次の日はお昼頃バルヒエットの館へ向かった。

 ノワールが事前に窺いを立ててくれたようだ。

 エックハルトは数日家を空けているらしく、クレメンティーネの対応で問題ないか? と返されたらしい。

 聡明なクレメンティーネが相手ならばむしろ有り難いと返事をすれば、ではランチの用意をしてお待ちしております、と返事があったとのこと。

 抜かりないクレメンティーネの手配である。

 彼女が正妻として健在であるなら、この街の運営は安泰だろう。


 しかし玄関先で出迎えてくれたクレメンティーネの顔色は良くなかった。

 化粧で取り繕っても落ち込んでいる雰囲気はそれとなく伝わるものだ。


「顔色が悪いですね、クレメンティーネさん」


「! はしたなくて申し訳ございません」


「いいえ。誰でも調子の悪いときはありますから、出直しても構いませんよ?」


「あの! その……相談に、乗っていただけますでしょうか?」


 応接室へ着く前に縋られてしまった。

 随分と切羽詰まっているようだ。


「座ってから、ゆっくりとお話を聞きますわ」


「重ね重ね申し訳ございません。どうぞ、こちらへ……」


 頬を赤く染めた美女は良き良き、と心の中で思いつつ、応接室のソファへと腰を下ろす。


「先日ノワール殿からお話を伺いまして、作ってみましたの。アフタヌーンティーセットでございますわ!」


 クレメンティーネが頬を紅潮させて掌でテーブルを指し示す。

 なるほど。

 そこには三段ティースタンドが鎮座していた。

 ランチにアフタヌーンティーセットはマナー的に問題があるのかもしれないが、私は大賛成だ。

 ぱっと見ると本来のアフタヌーンティーセットよりセイボリーが多い気がする。

 何よりカレーライス! 

 アフタヌーンティーセットについてきたのは初めて見ました。

 大変美味しそうです。


「ではこちらをいただきながら、相談を聞きましょう」


「その……乾杯はシャンパンでもよろしゅうございますか?」


「ええ。豪奢なアフタヌーンティーセットにはつきものですわ」


 お酒の力を借りなければ相談ができないのだろう。

 そう伝えて背中を押した。


 フルートグラスに注がれたのは青いシャンパン。

 珍しい。

 あちらでも話に聞く程度だった。


「乾杯!」


 緊張しているクレメンティーネのグラスにそっと当てて一口飲む。

 美味しい。

 甘みと苦みが絶妙なグレープフルーツのような果実味が強く、炭酸の利き加減も秀逸だった。

 クレメンティーネは一息で干してお代わりを入れさせている。

 二杯目も一息で干してから、ようやく重い口を開いた。


「大変お恥ずかしい話なのですが、断りにくい筋から愛妾を勧められまして、主人は出かけております」


「……もしかして私と関係があるのかしら?」


「使者がはっきりと申しておりました。最愛様と御縁が結べたのであれば、主家の娘をもらってほしいと」


「うわー。嫁がせたからといって、私と縁が深くなるわけじゃないのに、馬鹿な人もいるものだわ……」


 全くもって浅はかである。

 私がこの手の柵を嫌うのだと広がってくれればいいのだけれど、難しいだろう。

 時空制御師と接触する敷居は高くとも、その最愛との接触は簡単だと考えている輩は多いのだ。


「そうじゃのぅ。そやつらは御方様の恐ろしさを知らんのじゃ。可哀想にな。少々同情するぞ」


「既に何かしらの罰が与えられているんじゃないかしら?」


 夫はしみじみ過保護だ。

 遠く離れていても私の安全を常に確保している。

 だとすればエックハルトに愛妾を持ちかけた貴族は……お家断絶かな。

 根切りにあっていないといいけれど。


「夫は大変愛情深い方ですから。そんな無茶は赦さないと思います。安心してエックハルト殿の帰宅をお待ちください」


「……釣書が届いたのですが、私より若くて可愛らしい方なのです」


 しょんぼりと落ち込んでいるクレメンティーネの肩にランディーニが止まる。

 驚いたクレメンティーネはランディーニの羽毛を優しく撫でた。


 クレメンティーネほどの美女でも系統違いの相手には嫉妬するようだ。

 若さには勝てないって言うしね。

 でも全ての男性が若さだけで女性を見るわけではない。

 エックハルトはクレメンティーネにベタ惚れだ。

 かなりの圧力がかかっても自力で撥ね除けるだろう。

 最も今回は夫の怒りが既に先方を潰している可能性が高い。

 案外その後始末に巻き込まれているのではないだろうか。


「相手がどんな方でもエックハルト殿はクレメンティーネ夫人一筋でしょう。ここはどっしりと構えて帰宅を待てばよろしいかと」


「……本当に、大丈夫でしょうか?」


「夫を疑いますか? 時空制御師が最愛に迷惑がかかっていると知って、黙っているとでも?」


「っ! 申し訳ございません。そうでございますね。私の疑心暗鬼が酷くて失礼いたしました。夫を信じて待とうと思います」


「ええ、それが間違いない対応だと思いますよ」


 夫の私への愛を疑われたような気がして、一瞬怒りで我を忘れてしまった。

 誰に疑われたとしても、私が信じていればいいので、普段は気にしていないのだけれど。

 クレメンティーネの不安が知らぬうちに移っていたのかもしれない。

 今夜辺り夢で夫に甘えておこう。


「それで……最愛様の御用件はどんなものでございましたか? どうぞ、召し上がりながらお話しいただければと思います」


 クレメンティーネはすっかり自分を立て直したようだ。

 強い女性は本当に魅力的に映る。

 美人なら尚更ね。


「私が得た譲渡可能なスキルが特殊なものでね。死蔵も勿体ないので相談したかったの」


「譲渡可能なスキル、でございますか」


 声が不安げになった。

 譲渡可能なスキル=悪いスキルみたいな印象が強いからね。

 この辺も考え方を変えてほしいところだわ。

 良いスキルが譲渡される機会だってあるってさ。


「ええ。服ダンジョンドロップアイテムが二倍で売れるスキルと服ダンジョンレアドロップアイテムが五倍で売れるスキル。この二つよ」


「え? は?」


「驚くわよね。でも私ダンジョンの厚意を受けやすいの。その関係で入手したスキルなんです。でもこのスキル、この街でしか生きないスキルなので……」


「譲渡を、考えていらっしゃると」


「そうなの。誰か相応しい人がいればすぐにでも譲渡可能よ。教会も反対はしないでしょう」


 むしろ喜んで賛成してくれるだろう。

 今の教会は真っ当な者たちが大半だ。

 街の発展を喜ぶし、自分にスキルが譲渡されれば! と意気込む者もいるに違いない。


「いろいろと考えたのだけれど、人物の選定はお任せします。商人ギルドと冒険者ギルドがそれぞれ管理して、貸し出しスキルにする……なんて方法も取れると思うし」


「それ! 凄く良い案だと思いますわ」


「ダンジョンに関わる話だから、街の運営にも絡んでくるでしょう? なのでこちらに持ち込みました」


「ありがとうございます。ギルドに持ち込まれてもおかしくない案件ですのに」


「商人ギルドには信頼を置いているんだけど、冒険者ギルドにはまだ少々思うところがあるし。街の責任者として知っておくべきだと考えての結果だから」


 あとはエックハルトやギルドマスターたちと話し合ってくれればいい。

 そこまで話し合いも長引かないだろう。

 この街でできるクエストをクリアするまでは滞在するつもりだし。 


「あとはもう一件。こちらは相談というよりはお願いね。孤児院の子たちと一緒に氷ダンジョンのドロップ品販売とイートインのお店をやりたいの。良い物件を紹介してもらえないかしら?」


「素敵なお願いですね! 何日ぐらいの販売を想定されていらっしゃいますか?」


「服の販売は一日だけだったのよ。だから今回も一日だけと考えていたけれど……」


「できれば三日間ぐらいお願いできませんでしょうか? この街も随分人の出入りが多くなって参りましたので、ちょうど良い機会ですので人を呼べる催しがあればいいと計画をたてておりました」


 三日間。

 大きなイベントだと無難な開催日数かもしれない。

 私自身は疲れれば適当に休めるのでいいが、孤児たちはどうだろう。

 これを機会に頑張って稼ぎます! と目を輝かせる姿しか想像できない。

 ついでに絡んでくる輩をちぎっては投げをやれば、悪党たちも学んでくれる気がする。


「どう思う?」


「妾は良いと思うぞ。突発的なイベントで偶然出会う者との縁は面白いからのぅ」


「同感。アリッサを着飾らせるいい機会だもの」


「……問題が起きたときにペーシュ殿に出てきていただけるのであれば」


「おお。ペーシュ殿がよろしければ是非お願いしたい。我らだけではどうにも侮られがちじゃからなぁ」


 珍しい。

 ランディーニの声が重かった。

 どうにも四人で私を守りたいという気持ちが強いらしく、ペーシュの力をできる限り借りたくないというのが本音らしい。

 それでも私の安全を考えてのノワールの発言に、賛同するのが悔しいようだ。


「ペーシュ殿?」


「……クレメンティーネ様はお会いにならない方がよろしいかと」


 クレメンティーネが首を傾げるので、ノワールが頭を下げる。

 強すぎるペーシュはクレメンティーネには毒にしかならないだろう。

 ペーシュがクレメンティーネに配慮するとも思えない。


「縁がありましたら会う機会もあると思います。でも、それは今ではないのです。御理解ください」


 私も頭を下げておいた。

 無駄な好奇心を刺激しないように。


「畏まりました。最愛様が信頼している方であれば、私どもはそれ以上何も申し上げません。最愛様のお心のままに手配くださいませ」


 ほらね。

 聡明なクレメンティーネならば上手く飲み込んでくれると思った。

 たぶんエックハルトであればあと一歩は踏み込んで、場を凍らせるだろう。


「本日中には場所の選定をして、御連絡差し上げます」


「よろしくお願いします」


「……それでは、どうぞ当家自慢のアフタヌーンティーセットを御賞味ください。感想なども忌憚なく教えていただけると有り難いですわ」


「ふふふ。どれも綺麗だし美味しそう。何から手をつけようか迷うわね」


 あちらでは、和風やチャイナ風アフタヌーンティーなどの変わり種も楽しんだ。

 今いただいているアフタヌーンティーは、インド風アフタヌーンティーといったところだろうか。

 スパイスが利いたセイボリーがすばらしく美味しい。 

 使われているスパイスなども尋ねながら、大いに美味しく楽しい時間を過ごした。





 柊麻莉彩 ひいらぎまりさ


 HP ∞ 

 MP ∞ 

 SP ∞ 


 スキル 鑑定∞ 

     偽装∞

     威圧∞  


 奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図

      王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲 

      浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)

      ウインドアロー ウインドカッター 


 固有スキル 弱点攻撃

       魔改造 

       簡単コピー 

      

 特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。

 サファイアのネックレス

 サファイアの指輪

 サファイアのイヤリング


 特殊アイテム

 リゼット・バローのギルドカード

 魚屋紹介状

 衣類屋紹介状


 称号 時空制御師の最愛  


 ほろ酔いシリーズの冬仕様が出たので、寒くなってきたのに買ってしまいました。

 去年からホットワインの調合を始めたので、そろそろ始めようかと思っていたんですけどね。

 冬限定というワードの誘惑に勝てませんでした。


 次回は、 お次はスイーツ販売ですね。4(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続きよろしくお願いいたします。 


 

 

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