お次はスイーツ販売ですね。2
変わり種アフタヌーンティーを調べていたらインド風アフタヌーンティーを発見!
行きたいお店リストに入れました。
何時か行ってみたいと思います。
中に入った途端、噎せ返るようなパンの匂いに溺れかけた。
これは人気も出るだろう。
実に美味しそうな香りなのだ。
「あら? 結局パンだけを販売しているのかしら」
「は、はい。ダンジョンドロップ品はスラム店中心で販売しています。仕入れても仕入れても売れてしまうので、こちらで売る在庫がないのです」
「パンも大人気です! 安くて美味しいと評判なのですよ」
ディアナとクラーラの話を聞くと店の経営状況は良好のようだ。
だからこそ有象無象の困った輩が押しかけてくるのだろうか。
「……正式に、最愛後援の店と銘打った方がいいかしらね」
「よ、よろしいのですか?」
「その方が厄介な奴らが押しかけてこなくなるでしょう」
イグナーツが頑張っているようだが、彼にも限界はある。
貴族からの介入は手に余るだろう。
エックハルトの手にも余りそうだ。
「スラム店の方も同じで大丈夫かしら?」
「そうじゃのぅ。貴族のプライド的にスラム店には手を出さなそうじゃが馬鹿はいるから、きちんとした契約と看板を立てておくべきじゃろうて」
「じゃあ、スラム店とは私が話をしてくるよ。早い方がいいでしょう?」
「看板でしたら……こちらを」
ノワールがすっと綺麗な板を二枚取り出した。
彩絲と雪華がそれぞれ受け取る。
「うわ!」
「す、凄い!」
クラーラとティアナが声を上げなかったら私が上げていた。
それぐらい見事に板が看板らしく形を変えたのだ。
彩絲は蜘蛛と百合、雪華は蛇と百合をモチーフとして仕上げていた。
「さぁ、御主人様。看板に力を込めてくださいな?」
雪華が看板を手渡してくる。
力を入れろって、どう入れろと? と突っ込みはしない。
脳内で夫が指示をくれるからだ。
単純に祈るだけでいいらしい。
私は看板を手に祈りを込めた。
『こちらの店は時空制御師の最愛が後援しています。無理を通そうとしないように』
と。
無理を通そうとしたら罰が与えられますよ? までは込めなかったのだけど……。
「「おぉ!」」
感極まったようなティアナとクラーラの声に、閉じていた瞼を持ち上げればきらきらと輝く看板があった。
「……主よ。これで悪人はこの店で買い物はできなくなったぞ」
「できないどころか害意を持って近寄ると全身が痺れて昏倒するみたい」
「では昏倒したら引き渡せばいいんですね!」
「これで安心して幼い子供たちも連れてこられます」
想定外に便利な効果がついたようだ。
子供たちが安心して販売できるなら、それに越したことはないだろう。
「彩絲の看板も同じでいいかしら?」
「無論じゃ」
同じように祈る。
やはり看板はきらきらと輝いていた。
……何時まで光っているのだろう。
「じゃ、届けてくるね。私の好きなパンは、彩絲が選んでおいて?」
「仕方ないのぅ……まぁ、問題がなければ全部買いでもいいのじゃが」
雪華を見送っているうちに彩絲が凄い発言をした。
全部買い……昔は凄く憧れたものだ。
夫が叶えてくれるとわかってからは、実行しようと思わなくなったが。
「新しいパンはどんどん焼いていますから、全部購入されても大丈夫ですよ?」
「はい。本日の予約分はきちんと確保できていますので」
予約もあるようだ。
孤児院を応援する気持ちが強いのかもしれない。
私の名前が役に立つならいいのだが。
「ティアナ。看板を掲げてこようぞ。あとは念の為、主がいる間は貸し切りにしたいのじゃ」
「わかりました。じゃあクラーラ。最愛様に商品の説明をお願い!」
「了解しました!」
二人が外へ出て行く。
クラーラの訴える目に苦笑しながら、私はお勧めを尋ねた。
「このパン屋さんのお勧めは? と聞かれたら、その日一番高いパンを言うように決めてあります」
「うふふ。そうなのね。しっかりしていて良いことだわ」
胸を張るクラーラの頭を一撫でしておく。
ぐるっと視線を回してから、目に留まったパンの説明を求めた。
「このパンは胡桃……ウォルナッツパン?」
「はい、そうです! 当店では常に五位以内に入る、人気のパンの一つです。ウォルナッツとクリームズーチーがたっぷり入っているんですよ」
「じゃあ、これをあるだけください」
「はい! お買い上げありがとうございます。あ、もしかしたらまだ作っている最中のパンがあるかもしれませんから、ちょっと製造の方を覗いてきますね。他に欲しい物がないかゆっくりと御覧くださいませ」
年齢の割にしっかりしている。
孤児院育ちはやはり苦労人が多いのだろう。
製造の方も少し覗いてみたいかも? と考えつつ、他の商品を見て回る。
「あ、惣菜パンもあるんだね」
イモッコぴりタラノコパン、エグックサンド、トマトゥエッグプーランパンは大人買いをしよう。
クロワッサンとベーグルに……プレッツェル! こっちも大人買いね。
あー、食パンも普通に購入でしょう。
「楽しそうじゃのぅ、主や」
「ええ、大人買いしたいパンが、たくさんあったわ」
「あら? クラーラは何処へ行ったのかしら……」
「在庫の確認をしに奥に行ったわ」
「まぁ、お客様を置き去りにして!」
「大丈夫よ。気にしないで。貸し切りだしね。少なくとも誰かに絡まれる心配はないわ」
そう、それが一番鬱陶しい。
そしてそれさえ回避できるなら、他に問題はないほどだ。
「あ、ティアナにも在庫の確認をお願いしたいの。いいかしら?」
「喜んで。どちらになりますか?」
私は選んだパンの名前を挙げる。
「たくさんのお買い上げありがとうございます。皆の励みになりますわ!」
クラーラ同様に喜んだティアナも奥へスキップしていった。
「看板を掛けた瞬間、通行人が列を作るべきか話し合っていたぞ」
「盛況で何よりだわ。雪華は大丈夫かしら?」
「何の連絡もないので、無難にやり取りをしているじゃろうよ」
「それがのぅ。絡んでくる阿呆がいたから駆除していくわねー! と伝言を受けた」
ふわりと肩にランディーニが止まる。
何時の間にか雪華についていったようだ。
「ノワールは助っ人に行ったぞ。必要ないとは言ったのじゃが心配らしい」
雪華一人でも凄い戦力だからね。
大丈夫だとは思うけれど、二人の方が安心度は増す。
ノワールが追加されたら過剰戦力には違いないけれど。
「お待たせしました! あれ? ノワール様はどちらに行かれたのですか」
「雪華の助っ人に行ったぞ。あちらでトラブルがあったのでな」
「大丈夫でしょうか?」
「あやつらは強いでな。気にせずとも大丈夫じゃ。どれ。我が好む、パンの在庫確認も頼めるかのぅ」
「あ、はい。畏まりました。どれを確認しましょうか?」
ランディーニがクラーラの肩へ移動する。
食べたいパンが幾つかあるようだ。
「あら、いけない。肝腎の人員要請の話をしていなかったわ」
「もしかして当店の売り子を使っていただけるのでしょうか?」
「ええ。氷ダンジョンのドロップアイテム販売をしようかなぁ……と思っているの。大丈夫そう?」
「……大丈夫だと思います。氷ダンジョンのドロップ品ですと……イートインも喜ばれそうですが。そちらはお考えですか?」
「暑いからねぇ……気持ちはわかるんだけど。うーん。迷うなぁ」
「せっかくならやればよかろうて。エックハルトに良い場所を提供してもらうといいじゃろ」
『例のスキルの話もしたいしのぅ』
と彩絲がアドバイスをくれた。
安全であれば夫も安心するだろうか。
……反応がないので、私の好きにやって良いらしい。
「……その、イートインの対応も勉強できるのであれば、大変有り難いのですが……」
そうだ。
育成の意味もあるんだった。
それなら両方やるとしましょうか
「では、人数の確保をお願いできるかしら? 販売員四人。イートインの店員四人」
「……イートインは倍は必要じゃろ。大人の店員も必要じゃな。そっちはスラム店に頼んでみようかのぅ」
「あ。喜ばれると思います。何時までに準備を整えればよろしいでしょうか?」
「イートインとなると……一週間後くらい?」
「や。三日で大丈夫そうじゃ。期間を長く設けると厄介な輩が嗅ぎつけてくるからのぅ」
「わかりました! 販売員四人。イートイン用店員八人を揃えておきます」
「うむ。責任を持って鍛えてやろう。良い人材を頼むぞ?」
「お任せください」
とまぁ、そんな感じになった。
想定より規模が大きくなるのはよくあることだ。
むしろ仕様だ。
今更気にするまでもないだろう。
雪華とノワールが戻ってきたので、欲しいパンを根こそぎ購入して帰宅する。
店を出たら途方に暮れたくなるほど行列ができていたので、ノワールと彩絲を捌き要員としておいていった。
柊麻莉彩 ひいらぎまりさ
HP ∞
MP ∞
SP ∞
スキル 鑑定∞
偽装∞
威圧∞
奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図
王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲
浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)
ウインドアロー ウインドカッター
固有スキル 弱点攻撃
魔改造
簡単コピー
特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。
サファイアのネックレス
サファイアの指輪
サファイアのイヤリング
特殊アイテム
リゼット・バローのギルドカード
魚屋紹介状
衣類屋紹介状
称号 時空制御師の最愛
テーブルクロスを購入しないと……とサイズを測りました。
今まで使っていたのがワンコインだったんですよね。
改めて調べると好ましいクロスは3000円超えなんです。
いろいろと迷います。
次回は、 お次はスイーツ販売ですね。3(仮)の予定です。
お読みいただいてありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。




