表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に何も貰えなかった転生者、実は成長上限がありませんでした  作者: Nagiousen


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
76/82

第76話 「静かな朝」

 朝早く、俺は鍛冶屋の跡に向かった。


 まだ日が完全に昇りきっていない時間だった。だが、扉を開けると、すでにエリナがいた。


 一人で、修行をしている。


 俺は、邪魔をしないように、静かに壁際に座った。


 エリナは、目を閉じて、マナを引き寄せる練習を続けていた。手のひらの上に、小さな光の粒が、少しずつ集まっていく。


 しばらく見ていると、カルロが現れた。


 老魔法師は、エリナの様子を見て、静かに微笑んだ。


「早いな」


 カルロは言った。


 エリナが、目を開けた。


「おはようございます」


 エリナは答えた。


「一人で練習した方が、集中できる気がして」


「悪くない考えだ」


 カルロは頷いた。


 カルロは、俺の隣に座った。


 しばらく、三人で、静かな時間を過ごした。


 エリナが、修行を続けている間、カルロが俺に向かって、小さく言った。


「そろそろ、話しておくべきことがある」


 俺は、カルロを見た。


「何ですか」


「フェリクスのことだ」


 カルロは静かに言った。


 俺は、少し身構えた。


「フェリクスさんに、何かあったんですか」


「いや」


 カルロは首を振った。


「私自身の、過去のことだ」


 俺は、カルロの言葉を、静かに待った。


「フェリクスと私は、同じ師のもとで学んだ」


 カルロは続けた。


「なぜ、五十五年も、疎遠になっていたのか、まだ話していなかった」


 俺は頷いた。


「理由を、聞かせてもらえますか」


 カルロは、しばらく目を閉じた。


「私たちの師は、ある事件で命を落とした」


 カルロは、静かに語り始めた。


「その事件に、私とフェリクスは、大きく異なる考えを持っていた」


「どんな事件だったんですか」


「師が、始祖の力に関する研究をしていた時のことだ」


 カルロは続けた。


「その研究の過程で師は、力を求める者たちに、命を狙われた」


 俺は、黙って聞いていた。


「私は、力を求める者たちから、師を守れなかったことを、悔やんだ」


 カルロは言った。


「そして二度と、同じ悲劇を繰り返さないために、静かに力の使い方を教えることに、専念しようと決めた」


「フェリクスさんは、違う道を選んだんですね」


 俺は言った。


「そうだ」


 カルロは頷いた。


「フェリクスは、力を求める者たちを、根本から止める必要があると考えた。そして、天秤という組織を立ち上げた」


「二人の考え方が、対立したんですか」


 俺は聞いた。


「対立、というよりは」


 カルロは続けた。


「別々の道を、選んだということだ。フェリクスは、積極的に動く道を。私は、静かに、待つ道を」


 俺は、少し考えた。


「五十五年間、一度も、連絡を取らなかったんですか」


「取らなかった」


 カルロは答えた。


「お互いそれぞれの道を、信じていた。連絡を取ることで、迷いが生じることを、恐れていたのかもしれない」


 俺は、カルロの言葉を、深く受け止めた。


「なぜ今、その話をしてくれるんですか」


 俺は聞いた。


 カルロは、俺を見た。


「お前が始祖の意思と、直接対話したと聞いたからだ」


 カルロは続けた。


「力は統合するのではなく、支え合うものだと、教わったんだろう」


「はい」


「フェリクスと私も、本来は、そうあるべきだったのかもしれない」


 カルロは静かに言った。


「別々の道を選んでも、支え合うことは、できたはずだ」


 俺は、少し驚いた。


「フェリクスさんと、また、繋がりを持とうと思っているんですか」


「考えている」


 カルロは答えた。


「まだ、決めてはいないが」


 俺は、少し微笑んだ。


「いい考えだと思います」


 カルロは、少し笑った。


「お前に、背中を押されるとは、思わなかった」


---


 その日の午後、エリナと二人で、街を歩いた。


「カルロさんの話、聞いた」


 エリナは言った。


「壁の向こうにいたから」


「今度は、本当に聞こえたのか」


 俺は、少し笑いながら言った。


「うん、今度は本当に」


 エリナは、少し照れたように答えた。


「近くにいたから」


「フェリクスさんとカルロさんの過去、複雑な話だったな」


 俺は続けた。


「でも、なんか、いい話だった」


 エリナは言った。


「別々の道を選んでも、根っこは、同じだったんだね」


「そうだな」


 俺は頷いた。


 俺たちは、市場を歩きながら、久しぶりに、ゆっくりとした時間を過ごした。


 エリナが、屋台で、串焼きを買った。


「食べる?」


 エリナが、俺に差し出した。


「ありがとう」


 俺は受け取った。


 二人で、串焼きを食べながら、歩き続けた。


「こういう時間、大事だね」


 エリナは言った。


「そうだな」


 俺は答えた。


 俺は、ステータス画面を確認した。


 ゼロ Lv.13

 HP:58/58

 MP:31/31

 筋力:18 敏捷:21 魔力:11 耐久:15 知力:22

 スキル:なし

 備考欄:◇◇◇◇◇◇


 エリナも、自分のステータス画面を確認した。


 エリナ Lv.6

 HP:24/24

 MP:15/15

 筋力:8 敏捷:16 魔力:13 耐久:9 知力:12

 スキル:精密投擲


 数値に変化はなかった。


 だが、この平穏な日々が、俺たちにとって、大切な時間であることは、間違いなかった。


 夕方の光が、街並みを優しく照らしていた。

 俺とエリナは、宿に向かってゆっくりと歩いた。



**次回・第77話「フェリクスへの手紙」**


> カルロが、フェリクスに手紙を書き始めた。五十五年ぶりの、心からの言葉。その手紙が、二人の関係に、新しい風を吹き込むことになる。


カルロとフェリクス、五十五年の空白の理由が明かされました。同じ師を失った悲しみから、別々の道を選んだ二人。「力は支え合うもの」というラグド編のテーマが、師弟関係にも繋がっていく回でした。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

「続きが気になる」と思っていただけたら、ぜひ★評価・ブックマークをお願いします。ブックマークしておくと更新通知が届きます。

感想・コメントも全部読んでいます。毎日21時更新中です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ