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神に何も貰えなかった転生者、実は成長上限がありませんでした  作者: Nagiousen


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105/125

第105話 「ラーテの申し出」

 ラーテが少し間を置いてから、口を開いた。


「一つ、提案があります」


 ラーテは言った。


「何ですか」


 俺は聞いた。


「私は」


 ラーテは続けた。


「見守るだけの立場を、そろそろ終わりにしたいと考えています」


 俺は、少し驚いた。


「どういう意味ですか」


「これまで私たち一族は、干渉せず記録するだけの存在でした」


 ラーテは言った。


「ですが今回の事故で、それだけでは済まされない現実を思い知りました」


「事故のことは」


 俺は言った。


「もう、謝罪していただきました」


「言葉だけでは、足りません」


 ラーテは続けた。


「私をあなたの旅に、同行させてもらえないでしょうか」


 俺は、少し考えた。


「見守る者としての立場を、捨てるということですか」


 俺は聞いた。


「そうです」


 ラーテは頷いた。


「これからは記録するだけでなく、共に歩みたいと思います」


 カルロが、静かに口を開いた。


「一族の他の者たちは、どう思うだろうか」


 カルロは聞いた。


「反対する者も、いるでしょう」


 ラーテは答えた。


「ですがこれは、私自身の選択です」


 俺は、ラーテの目を見た。

 そこには、確かな覚悟があった。


「わかりました」


 俺は言った。


「一緒に、来てください」


 ラーテは、深く頭を下げた。


「ありがとうございます」


---


 その後俺たちは、モルンの街にしばらく留まった。


 昏睡していた人々の容態は、日を追うごとに回復していった。リーゼが街の立て直しに、忙しく動き回っていた。


「本当に、ありがとうございました」


 リーゼは俺たちに、深く頭を下げた。


「街がまた以前のように、賑わうと思います」


「これからも何かあれば、連絡してください」


 俺は言った。


 俺たちは、モルンを後にした。


---


 ランドルへの帰り道。


 俺はラーテと少しずつ、言葉を交わすようになった。


「見守る者は、これまで多くの器を、見てきたんですよね」


 俺は聞いた。


「一族としては、そうです」


 ラーテは答えた。


「ただ、私自身が直接見たのは、あなたが初めてです」


「どんな、感じですか」


 俺は聞いた。


「不思議な感覚です」


 ラーテは、少し微笑んだ。


「記録の中でしか知らなかった存在が、目の前で生きている」


 俺は、少し笑った。


 道中エリナが、少し静かな様子でいることに、俺は気づいた。

 夜、野営の焚き火の側で、俺はエリナに声をかけた。


「大丈夫か」


 俺は聞いた。


 エリナは、しばらく火を見つめていた。


「ラーテさんの話」


 エリナは、静かに言った。


「二人目の器の話、聞いてて色々考えてた」


「どんなことを」


 俺は聞いた。


 エリナは、少し俯いた。


「私も」


 エリナは、続けた。


「ちゃんと話さないと、いけないと思う」


 俺は、エリナを見た。


「団長のことか」


 俺は聞いた。


 エリナは、頷いた。


「もう、隠しておく理由がない気がする」


 エリナは、静かに言った。


「ゼロが二代目の器の迷いを知ったように、私もちゃんと伝えたい」


 俺は少し緊張しながら、頷いた。


「話せる時に、話してくれればいい」


 俺は言った。


「今、話す」


 エリナは、静かに言った。


 俺はエリナの決意を、静かに受け止めた。


 カルロとアルクとセルマが、少し離れた場所から気づいて、焚き火の側に集まってきた。

 ラーテも、静かに腰を下ろした。


 エリナはしばらく火を見つめてから、口を開いた。


「団長は」


 エリナは、静かに語り始めた。


「私を鍵として、使おうとしていた。でも、それだけじゃなかった」


 俺は黙って、耳を傾けた。


「団長の上に」


 エリナは、続けた。


「もう一人、いた」


 俺は、息を止めた。


「上にいた、というのは」


 俺は聞いた。


「団長は」


 エリナは言った。


「その人の指示で動いていた。私を育てて、鍵としての力を完成させて、その人に引き渡すつもりだった」


「その人物の、名前は」


 俺は聞いた。


 エリナは少し、震える声で答えた。


「わからない」


 エリナは言った。


「団長も名前を、知らなかった。ただいつも、黒い布で顔を隠していた」


 俺は頭の中で、これまでの情報を繋げようとした。

 黒い布で、顔を隠した人物。無冠とも、旧血族とも、また違う存在。


「その人物が、団長に何を望んでいたか、わかるか」


 俺は聞いた。


 エリナは、しばらく沈黙した。


「私を」


 エリナは、続けた。


「完全な道具として、使うこと」


 俺は、その言葉の重さを静かに受け止めた。


「道具として、というのは」


 俺は聞いた。


 エリナは、深く息を吸った。


「意思を持たない、鍵として」


 エリナは、静かに言った。


「感情も記憶も消して、ただ力を引き出すためだけの器にすること」


 俺は、拳を強く握った。


「団長を、倒した後」


 俺は聞いた。


「その人物からの接触は」


「今のところ、ない」


 エリナは、答えた。


「でも、団長が負けたことを知っているはずだから、いつかまた動き出すかもしれない」


 カルロが、静かに言った。


「その人物の正体を、探る必要がある」


 カルロは言った。


 俺は頷いた。


「エリナ」


 俺は、エリナを見た。


「よく、話してくれた」


 エリナは、少し涙ぐんだ。


「ずっと、怖かった」


 エリナは、続けた。


「でも、みんながいるから話せた」


 俺はエリナの肩に、そっと手を置いた。


「必ず、守る」


 俺は、静かに言った。


「今度こそ、絶対に」


 エリナは、頷いた。


---


 その夜、俺はステータス画面を確認した。


 ゼロ Lv.16

 HP:70/70

 MP:37/37

 筋力:21 敏捷:25 魔力:14 耐久:18 知力:25

 スキル:なし

 備考欄:◇◇◇◇◇◇


 新しい脅威の輪郭が、静かに見え始めていた。

 顔の見えない黒い布の人物。エリナを完全な道具として、扱おうとする存在。


 これまでのどの相手とも違う気配を、俺は感じていた。

 対話が通じるかどうかも、わからない。


 窓の外を見た。二つの月が、静かに輝いている。

 守るべきものが、また一つはっきりとした。



**次回・第106話「顔のない男」**


> エリナの証言をもとに、ロックスが調査を開始する。その過程で見つかったのは、黒い布で顔を隠した人物が、これまで何度も、様々な事件の裏で、暗躍していた痕跡だった。


ラーテが仲間に加わり、そしてエリナが、ついに、団長の背後にいた人物について、語り始めました。「意思を持たない、鍵として使う」という、これまでで最も冷たい脅威です。ここから、エリナの過去編、本格的に動いていきます。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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