001話 ゲームのCMと泡姫は転生して異世界へ
お読み頂き、ありがとうございます!
通常は1日1話19時からになりますが、本日は2話をお読み頂けます。
全33話の約10万字を予約投稿済みなので、最後までお付き合い頂けると幸いです。
貴族達が集う舞踏会のエントランス・ロビーにて、公衆の面前でルパート王太子殿下が、アリエル公女殿下に向かって言い放った。
「アリエル! お前との婚約を破棄する!」
「……」
公女殿下は無言で目を見開いた。王太子殿下は近くに控えていた女性のプリムラの手を取って次の言葉を述べた。
「私はプリムラと結婚するのだ」
「ルパート様。私はしがない平民の女です。お戯れを……」
「何を言っている! 其方は聖女として覚醒したのだ。俺との結婚相手として相応しい」
王太子殿下と聖女プリムラは見つめ合った。
公女殿下は言われ放題だったが、悔しそうに口を開く。
「私は認めません。王家と公爵家が認めた婚約は例え王太子殿下と言え、簡単には破棄できません。失礼しますわ!」
公女殿下が二人に背を向けて立ち去ろうとする所で、ゲームのタイトル『プリンセス聖女』がテレビ画面に大きく表示された。主人公でヒロインの聖女プリムラの声でナレーションが入る。
「平民の少女が様々な男性に求婚されつつ聖女になり、やがてはプリンセスに駆け上がって行きます。乙女チック恋愛ロール・プレイング・ゲーム『プリンセス聖女』。ミリオン・ヒットで発売中!」
無名のゲーム会社から発売されたゲームのCMがテレビ画面から流れた後は、昼時に放送されるローカルなニュース番組に切り替わった。テレビを視聴している家は大きな通りの近くにあるようで、自動車の往来する振動がそれなりに伝わって居間を揺らしていた。
リビングで詰まらなそうにテレビを見ていた義母が、義理の娘である難波泡姫にボヤやく。
「さっきのゲームだけれど、貴女の勤めているゲーム会社のCMなのよね?」
「このゲームは私も開発に携わっていました。大ヒットしたので今日は休暇を頂きました」
「子供の遊ぶ物でお金が貰えて、しかも休暇まで貰えるなんてお気楽で良いご身分ね」
「……」
泡姫の勤める会社は無名だったが、パソコンだけでなく家庭用ゲーム機やスマホにまでプリンセス聖女をリリースして空前の大ヒットになった。噂では株式市場に会社を上場出来るのではないかとの事で、忙しくなる前に開発チームでシナリオライターを務めている泡姫だけでなく、チーム全体で休暇となった次第だった。
この義母は泡姫の亡くなった旦那の母親で、泡姫と旦那のどちらかが亡くなった場合は遺言で親の面倒を見る約束をしていたので、休暇が取れた機会に様子を伺いに来た感じだった。義母の夫は先に亡くなっていて、義母は片足が悪いので週に何度か訪問して掃除や炊事を泡姫が手伝っているのだ。
義母が億劫そうに立ち上がって、障子の組子を指でなぞった。
「埃があるわよ」
「す、すいません! お義母さん」
泡姫は慌てて掃除道具を持って来て、障子の埃を取り払った。次に義母は台所に向かうと、泡姫が作って置いた味噌汁を味見して言い切った。
「私は白出汁派なのよね。まさか大和にも赤出汁を飲ませていたのかしら?」
「や、大和はどちらでも美味しそうにしていました」
「あら、そう? あの子は優しい子だったから、黙って我慢していたのじゃないかしらねぇ」
「……」
大和とは泡姫の亡くなった旦那で、義母は懐かしそうに目を細め、泡姫は嫌味として感じられて言葉が出なかった。
居間に戻って、最後にいつものセリフで義母は締めくくった。
「大和との間に男の子が産まれなかったのは残念よね。私は男の子を産めたから、貴女がどこか悪いのじゃないかしらねぇ」
「……」
言いがかりのような嫌味なので泡姫は黙る。大和との間には女の子が産まれて、もう社会人になって一人暮らしを始めたので手はかからなくなっていた。
ドガァァァァァァンッ!!!!
突如、轟音と共に居間の壁が崩れて大きな鉄の塊が飛び込んで来た。飛び込んで来たのは大型のトラックのようで、2人は驚く間もなく意識を失った。
2人は真っ白の床に空が広がっている空間で意識を取り戻した。ポツンと銀髪の男の子が空中に浮かんで手招きをしているので向かう。泡姫はゲームのシナリオライターをしていただけあって、銀髪の男の子は自分が設定した神様であると認識する。
「テオ神?」
「当たりっ! 流石に僕を設定した泡姫ちゃんだねぇ!」
「どういう状況か説明して貰えるのかしら?」
義母が不安そうにテオ神に問いかけた。テオ神はマントを翻しながら空中を舞って1回転すると答えた。
「君達2人は家にトラックが突っ込んで来て、巻き込まれて死んじゃったんだ」
「「ええっ!?」」
「可哀想だから僕の世界に転生させて上げるよ!」
テオ神は自信満々に胸を張った。続けて転生ルールを説明する。
「それで転生だけれど順番があってね。亡くなった順番にキャラクターを選べるから、こちらのオバサ……奥さんが先に選べるよ」
義母に睨まれてテオ神は呼び方を変える。義母は肩を竦めながら言った。
「私、この子のゲームなんてした事がないから、急に言われても分からないわ」
「それなら主人公のヒロインなんかお勧めだけれど。聖女になって王太子に求婚されてプリンセスになれるかもよ!」
「あ、狡い! 私が選びたかったのに……」
「ふふっ! ヒロインの聖女でプリンセスって良い響きね。それで良いわよ!」
「それでは行ってらっしゃい!」
テオ神が手を振ると義母が薄っすらと消えて行って転生したようだ。そしてテオ神は泡姫の周りを周回して宣言する。
「ジャジャアーン! 泡姫ちゃんはアリエル公女殿下に転生して貰うからね!」
「ちょ、ちょっと! 創造主の私にはキャラクターの選択肢がないの?!」
「だって同じ名前だし違和感がないでしょ?」
「そ、そうだけれど設定的にアリエルは悪役令嬢なのだから、苦労しかしないじゃないのよ!」
ゲームとしてのアリエル公女殿下の名前は泡姫の同僚が遊びで組み込んで、そのままマスターアップして製品版となったので設定の方を変更した、いわく付きのキャラクターだった。
「……仕方ないなぁ。それならゲーム開始時の半年前に転生して貰うから、頑張って見てよ!」
「う~ん、半年前か……」
泡姫はシナリオを頭の中で思い出し、悪役令嬢を挽回して断罪イベントを回避可能か考えた。半年前であると王太子殿下との婚約前なので、少なくとも断罪イベントを回避する事が出来そうなので頷いた。
「アリエルで良いわ」
「やったーっ!! 悪役令嬢のご案内!!」
泡姫は義母と同じように薄っすらと消えて行って意識を失った。
泡姫 「本当に悪役令嬢しかないの?」
テオ神「悪徳領主の方が良かった?」
泡姫 「違う作品になってしまうからパスで!」
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