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52. 姉と弟 後編

諦めたように笑ったアデルを見たリアンは言った。


「別に話さなくていいわ。ただ、今からわたしがいうことが合っているかどうか聞くだけだから」


そう言うと、リアンは頭の中にある情報から必要な分だけを取り出し、口頭で述べる。


「貴方の名はエリオ。元は貧民街の子供で、妹持ち。さらに子供たちのリーダーをしていた」


「はい。その時貴族がやって来て、俺と妹だけを引き取った」


「一応貴方は断ろうとしたみたいね?」


「でも、あの後子供たちがすっごい目をキラキラさせてさ。よかったじゃないかって……それに、妹も……」


なるほど、とリアンは呟く。


「断ろうにも、断りきれなかったのね……。そして貴方は妹と普通の生活をする代償としてニセモノになることを選んだ」


リアンにも弟が居るだけあって、複雑な心境だった。


「うん……」


そう呟くエリオを見ると、柄でもないのに助けたいと思ってしまう。


「……ねぇ」


「はい?」


「貴方は、どうしたい?」


「! どうしたいって……」


このままこの事実が明らかにされれば、エリオは死刑。一応被害者でもあるから多少は減刑されるかもしれないが、ほとんどの確率で二度と青空を拝めなくなるだろう。下手すれば、妹の方にも刑が行く可能性はある。

だからと言って黙って仕舞えば、最悪の事態になることも考えられる。


「……変なことを聞いたわね。でも……どうしても今それが聞きたい」


「そうですね。……俺としてはもし叶うことなら、もう一度あそこで生きたいです」


「……そう」


リアンは小さく呟く。そして少しの沈黙を挟んで口を開いた。


「今日のことは秘密にしておいて頂戴。それと貴方には暫く今まで通りにやってほしい」


「わかりました。ありがとうございます」




***




(……情けない)


リアンは唇を噛む。あの状況で今まで通りにやってほしいとしか言えなかった自分が悔しくて堪らない。あの状況でそれを言うなんて、彼に死ねと言っているのと同じなのだ。当然、向こうもそれをわかっているだろう。


「あ、リアン様」


ハッとなって顔を上げると、そこにはイベルがいた。そして、背景もいつの間にか自室に変わっている。


「……イベル」


「? どうしました?」


「……鍵よろしく」


「っ! え、ええ」


イベルは戸惑う。当然だ。リアンがこれを言う時に限って引きこもる。そして……と思い巡らしたところで無駄だと頭を振った。こうなったらもう誰にも止められない。

イベルは閉じられたリアンの自室を見つめた後、女王に報告するために反対の方向にに歩き出した。





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