13 目指すべき場所
朝食が終わり、後片付けが済んだ頃に今後の予定をアダリアが話し始めた。
「さて、これから私たちは街を目指すことにするね」
するとアダリアは地面に小石を置き、
「ここが現在地ね」
と説明を始めた。
「実のところ、ここから数日歩いた場所に小さい街はあるんだけど、今回目指すのはそれより遠くにある大きな街にしようと思うの」
「なんで?」
「小さい方の街は私が長年暮らしていた街だから、知り合いが多いんだよ。
そんな街にケン坊を連れて行ったら私との関係を疑われて、最悪、私と離される可能性もあるの」
「なるほどね~。・・・ちなみに離されたらどうなるの?」
「ケン坊は魔力はあるけど何の後ろ盾もないでしょう?
だから徹底的に魔力を絞り取られて、最後には野垂れ死ぬ可能性が高いかな」
「うわーー・・・」
「だから、なるべく大きな街を目指そうと思うの」
そう言うと、アダリアは現在地から離れた場所に小枝を突き刺した。
どうやら小枝が目的地を示しているらしい。
「私の事を誰も知らない大きな街に行って、私たちは祖母と孫ということにした方がいいと思うの。
それに何をするにもお金を稼ぐ必要があるから、多くの仕事がある大きな街に行った方がいいんだよ」
「祖母と孫か・・・、未だに慣れないな~・・・」
「まあ、そのうちケン坊にも私たちの年齢が何となく分かるようになると思うから、それまでは辛抱してね?」
そしてアダリアは現在地と小枝を線で繋ぐ。
「大体、この道順で行こうと思うの」
「随分と遠回りしているように思えるけど?」
「うん、街までは道を避けて遠回りするつもりだからね」
「なんで? 道を通ったほうが早く街に着くんじゃないの?」
「確かにそうなんだけど、もしも街道に出て他のエルフ達と出会った時に、ケン坊に常識が無いとトラブルに巻き込まれる可能性が高いの。
だからワザと遠回りをして、移動中に可能な限りこの世界の常識を教えようってわけ」
「なるほどね。知識を蓄える時間を確保するってわけか」
「まあ、それだけじゃなくて、道中で売れそうな薬草とか集めて街で売って生活費にすることも考えているんだけどね。
私はお金が無いから、このまま街に行っても生活費が無いの」
そういうとアダリアは今度は財布であろう小さな袋を逆さに振る。
本当にお金が無いらしく、袋からは何も落ちてこなかった。
「それにケン坊は魔法が使いたいんでしょ? 道すがら魔法の練習もしよっか?」
「えっ!! 面白そう!! どんな魔法を教えてくれるの!?」
「そうだね~。まあ最初は簡単な奴から始めようか?
・・・んんん~~・・・、種火を起こす魔法とか?」
「それってライターみたいな物かな?」
「らいたー??」
「種火を起こす道具だよ。確かリュックの中に・・・」
俺はリュックの中からライターを取り出し、シュポッと火をつけた。
「わっ、すごい。これ、魔法じゃないんだよね?」
「そうだよ。普通に中に燃料が入っていて、電気で火をつけているだけ」
「へぇ~~~、ケン坊の世界は面白いね~。
魔法は無いのに随分と便利そうな道具があるんだね~」
アダリアはライターを凝視しながら耳をピクピクと動かし感心している。
「というか、こっちの世界にはライターみたいな道具は無いの?
アダリアは俺と会う前は魔法が使えなかったらしいし、火打石でも使ったの?
いくらなんでも不便過ぎない?」
「まあ、種火くらいは出せたけど、小さい魔法を出すのが精一杯で・・・。
結界だってケン坊の魔力が無ければ絶対に使えなかったね。
だから生活もギリギリだったんだよ」
どうやら異世界は魔法が使えないと、随分と生活に苦労する世界のようだ。
それはアダリアが着ている服と空の財布が何よりの証拠となるだろう。
するとアダリアは僅かに重くなった空気を変えるかのようにパンッパンッと手を鳴らした。
「とりあえず! ケン坊の最初の目標は魔法で種火を起こすことだね!
まあ、簡単な魔法だから直ぐに覚えられるよ」
そしてアダリアは色々と物が並んでいるベッド周囲を見渡し、
「じゃあ、やることも決まったし。
散らばっている物を集めて出発の準備をしようか?」
と言って微笑んだ。
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