11 アダリアはお婆ちゃん (挿絵有)
翌朝。
俺を起こしたのは昨日と同じく強烈な太陽光に自然の匂い、そして甘い香りと柔らかい感触だった。
「・・・」
ゆっくりと目を開き、寝起きのボンヤリとした視界で目の前に何があるのかを確認すると、そこにはアダリアの柔らかな胸があった。
俺は目覚めた直後の脳ミソで思案し、
(いつの間にか俺の頭はアダリアに抱きしめられていたらしい)
という結論に辿り着く。
(・・・ああ~~、つまり俺はアダリアの抱き枕になっていたわけか・・・。なるほどね~~。
背を向けて寝ていたつもりだったけど、寝返りでもしちゃったのかな・・・。
汗臭い汗臭いって言ってたけど、全然臭くないじゃん。むしろ甘い良い匂いがするくらいだよ・・・)
この直後、俺は一気に覚醒した。
「!! うわっ! うわっわ!! うおっ!! イッテェ!!」
そしてベットから飛び起きた衝撃で俺は地面に落ちてしまう。
その音を聞いたアダリアが目覚め、
「ん~~~?? ケン坊はなんで地面に居るの? もしかして寝相が悪いの?」
と寝ぼけ声で聞いてくるのだった。
「そんなにビックリするとは思わなくて、ごめんごめん」
と謝罪しつつも、アダリアはケラケラと笑っている。
「でも抱き着いた位でそんなに驚くなんて、ケン坊は面白いねぇ~」
「いや、普通驚くでしょ!」
「そうかなぁ~~~??」
どうやらアダリアにとって俺の反応は面白いらしく、ケラケラと笑い続けている。
俺はアダリアの感覚が分からず、ただただ困惑するしかなかった。
「でも本当、アダリアはもう少し気を付けたほうが良いと思う。
一緒に寝ようって提案したのは俺だけど、それにしたって俺に対して警戒心が薄すぎない?
アダリアみたいに可愛い女の子は・・・、その・・・、もう少し自分の身を守る努力というか・・・」
最後の方は小さな声になってしまったが、俺は抗議の声を上げる事に成功はした。
しかし、アダリアに効果はなかったようで、ニヨニヨと笑みを浮かべている。
「ああ、そうだそうだ、昨日言い忘れてたね。
多分だけど、私はケン坊よりもずっと年上だよ」
「・・・は? 何言ってんの? どうみても十代後半くらいにしか見えないけど・・・」
「あははははははは。ケン坊には分からないか~。
私はね? 結構なお婆ちゃんなんだよ」
「・・・お婆ちゃん? どこが?」
俺は困惑しながら、アダリアの説明を聞いた。
「ケン坊のいた異世界とこっちじゃ一年の長さは違うかもしれないけど、この世界では一年の日数が400日くらいあるんだよ。
で、私たちエルフの寿命は大体500歳。
それで私の年齢は多分400歳を少し超えたくらいなの。
だから私は棺桶に片足突っ込んだお婆ちゃんってわけ」
「・・・400歳・・・」
やはりエルフということか、信じられないほどの長寿である。
この世界に来て二日目、どうやら俺は異世界の洗礼を受けたらしい。
「・・・アダリア・・・、いやアダリアさん」
「アダリアでいいよ」
「・・・アダリア、実は面白いことがあってね」
そして俺は腕時計をアダリアに見せる。
「これは腕時計というもので、時間を測る道具なんだよ」
「へ~~。便利そうな道具だね?」
「うん、実際便利なんだ。で、この腕時計の時間を見ると、今は午前7時なんだ」
「ふーん?」
「・・・で、体感なんだけど、今って朝だよね?」
「そうだね。早朝って言っても良い時間帯だね」
「・・・この腕時計が示している時間も、大体、そんな感じの時間なんだよ」
「・・・ふんふん?」
「つまりね? 俺の居た世界と、この世界の一日の時間は大して変わらないってことなんだよ」
「あ~~~~。なるほど」
どうやら納得したらしく、アダリアは頷いている。
「つまり、一日の長さが大体同じなら、一年の日数で年齢を逆算することができるって事をケン坊は言いたいわけね?
でも計算が難しくない?」
「大丈夫。元の世界の一年は365日だったから、この世界の一年と大差はないんだ。
・・・で、さっき、アダリアは400歳って言ってたじゃん?」
「うん。大体ね? 100を越えた辺りから数えるのが面倒になって、大体400歳って感じ」
「・・・どっちにしても、俺たちの寿命は100歳くらいだから、エルフはとんでもない長寿ってことになるんだよ・・・」
「へ~~。ケン坊の種族は随分と短命な種族なんだね。
この世界の100歳なんて、魔力も体力も一番充実している年齢だけどね~」
何が面白いのか分からないが、アダリアはケラケラと笑っている。
そんなアダリアに対して、俺は小さくため息を吐き出した。
どうやら、この世界での常識を理解するには時間がかかりそうだ。
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