小野寺純の性体験の聞き取り②
小野寺純君のことに思考を戻す。
彼の年代ではどんなに多く見積もっても、過半数が非童貞ということはないだろう。つまり、まだ童貞であることを隠す必要がない(どの年代でも隠す必要はなく、恥ずべき事でもないと俺は思っているが)年代と言っていい。
もし小野寺が童貞(このゲームの解答)なら、隠す必要のない年代の少年が童貞を必死に隠しているという、なんとも奇妙な状況に置かれていることになる。
まあ、小野寺の高校の生徒の非童貞率が二割だろうが三割だろうが、そんなマクロなことは、今は関係ない。
問題はこの少年が童貞かどうかという、ただ一点なのだ。
「初体験の話を詳しく教えてくれるかな?」
「はい」
小野寺はポケットから数枚のレポート用紙のようなものを取り出した。
「あの、これ読んでいいですか?」
「ん?」
「僕は、初体験のエピソードを語って報酬がもらえると聞いて参加したのですが、うまく話す自信がありません。それで運営スタッフの人に、紙に書いたものを読んでいいかと聞いたら、いいと言われたので、今からそれを読みます」
そういうことか。
セックスの体験談がたった一つであれば、それ以外に語ることはない。事前に紙に書いて準備したとしても筋が通る。非童貞と言っても彼はまだ精神的には半分子供なのだ。もしそれが演技でなければの話だが。
「どうぞ」
俺はペンとメモ帳を構えた。
「では読みます。二週間前の土曜日でした。映画を見てランチをした帰り道、ナツキと、あ、ナツキというのは彼女の仮名ですが、ナツキと手を繋いで玉川上水駅に帰ってきました。玉川上水はさっき話した、僕らの家の最寄り駅です。駅を出ようとしたら、急に雨が降り出しました。大粒の雨でしたが、なんとなくすぐ止むだろうと思って歩き出しました」
小野寺は少し恥ずかしそうに、そして、一つ一つの言葉を確かめるように手記を朗読した。
「もう少し早口でお願いできるかな」
俺の要望に、小野寺は頷いた。
「雨は逆に強くなり、僕たちの体を濡らしました。ナツキの薄手の服が体に張り付き、インナーが透けて見えました。セットされたポンパドールも、濡れてワカメみたいになっていました。僕はなるべくそれら見ないようにしました。でもどうしても目がいってしまいました。多分彼女も視線に気づいていたと思います。服と髪を乾かした方がいいかも、と僕は言いかけてやめました」
小野寺はここで一呼吸置いた。




