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終わり

 さて、そろそろ目の前の問題に向き合うとしようかね。


「水を確保するだけなら、下流に移動すれば水は補給できますけど……」


 私が斥候役をこなしながら川を探していたのは、ライオスさん達の為を思ってだけど、魔物は想定していなかったからね。

 わざわざ戦う必要はないんだよ。


「いや……アイツらは倒していきたい」


 ライオスさんが、そう答えた。

 何故? ……と聞き返そうとしたけど、すぐにライオスさんが説明してくれた。


「ゴブリン種は繁殖力が高い魔物の内の一つだからな。この森にキリングゴブリンが居るとは聞いた事がないから、放って置けばウィーナッドはもっと状況が悪くなるかもしれない」

「アイツらは女子供も攫っていくしな」


 ライオスさんの説明にディアンさんが、嫌な情報を付け加える。

 なるほど……ウィーナッドを拠点としているライオスさん達としては倒しておきたい魔物だね。


「そこで……言い難いんだが……」


 ライオスさんが若干言い淀む。


「無理を承知で頼みたい。シラハもキリングゴブリンとの戦闘に加わってくれないか?」

「良いですよ。街が危ないなら放ってはおけないですしね」

「……助かる」


 ライオスさんが私に頭を下げてきた。

 別に気にしなくていいんですよ。

 私達が原因かもしれないんですし……


「それで……作戦とか、あるんですか?」


 私は臨時のメンバーでしかないので、連携とかは期待しないで欲しい。


「俺とディアンで二体ずつ受け持つから、ルーア、サシャ、シラハの三人は各自一体ずつ引き受けて欲しい」

「わかりました」


 作戦も簡単なものだったので安心だ。


 とにかく私は、引きつけた一体を仕留めればいいのだから。


「それじゃあ行くぞっ」


 ライオスさんの掛け声で皆が一斉に走り出した。

 私は自分が狙うキリングゴブリンを観察する。


 以前、見たことのあるフォレストゴブリンは武器として、そこらに落ちている木の棒を持っていたけど、目の前のキリングゴブリンには得物がない。


 いや……武器が無い代わりに爪が発達しているんだ。

 アレに裂かれたら、ちょっと不味いかな。


 私はキリングゴブリンの爪を警戒しながら攻撃を仕掛ける。


「ギギャー!」


 ゴブリンは私の攻撃を飛び退きながら避けていく。

 なかなかに素早いね……。


 そして飛び退いたかと思えば、自身の鋭い爪で引っ掻いてくる。


「くっ…!」


 私はギリギリで避けては突きや蹴りを放つけど、ゴブリンはヒョイっと避けていく。

 あー、鬱陶しい!



 なかなかに素早いゴブリンを、どうやって仕留めようかと考える。


 そんな私に容赦なく追撃を行ってくるゴブリンの攻撃を避けながら、次の手を模索する。

 あ、アレで良いか。


 私は攻撃を避けると同時に、手早く【竜鱗(剣)】を数枚出してゴブリンの足を狙って投げつける。


「ギッ?!」


 ゴブリンは近接攻撃しかしてこなかった私の動きの変化に反応できず、竜鱗が足に突き刺さる。


 さすがはBランクの魔物と言うべきなのか、足に小さなトゲが刺さったような攻撃じゃ動きは止まらない。


 けど、それが爆ぜて肉を抉られれば、どうかなっ!


 パリンと竜鱗が砕け、ゴブリンの足が何箇所も抉られる。


「ギャ…ギギャー!」


 一瞬何が起きたのか理解できなかったゴブリンが、一拍置いてから地面を転げ回る。


 そこにトドメとして、全力で頭を叩き潰しておく。

 よし、終了!



 私が周囲を見回すと、サシャさんはすでに自分が受け持っていたゴブリンを倒していて、ディアンさんの援護に向かっていた。

 ディアンさんは大丈夫そうだね。


 ライオスさんは二対一だけど、完全に受けに回ることで攻撃を捌くことができているみたいだった。


 ならばと、ルーアさんを見てみればゴブリンの素早い動きに翻弄されているように見えた。


 ルーアさんはメイスだし、当てるのは大変そう……


 でも、ちゃんと攻撃は回避できてるんだから、さすがはAランク冒険者って感じだね。

 とはいえ、連携も不慣れな私が飛び込んでもルーアさんの邪魔になるだろうし……よし。


 私は川辺に落ちている石を拾う。

 うん。これくらいの大きさなら問題ないでしょ。


 そして拾った石を握り締めて構えると、それをゴブリンに向かって投げつけた。


 ゴズン! と鈍い音とともに石が砕け、ゴブリンが膝をついた。

 そこへ、ルーアさんが隙を逃さずにゴブリンの脳天に一発お見舞いする。


「グビャ?!」


 ゴブリンが汚い悲鳴をあげて動かなくなった。


 ゴブリンを倒したルーアさんが私に駆け寄ってくる。


「シラハさん、ありがとうございます。それと、続けてで申し訳ないのですけど、ライオスの援護もお願いできますか?」

「了解です。大丈夫ですよ」


 私は返事をすると、すぐに石を拾い上げる。


 そして、それを持ってライオスさんが戦っているゴブリンに狙いを定める。


 くらえっ!


 私の投石はゴブリンの側頭部に直撃した。

 ふふふ……私の命中率もなかなかのものだね。


 自画自賛しながら次弾となる石を拾っていると、ライオスさんが怯んだゴブリンを仕留めて、もう一体と対峙していた。


「シラハさん。あと一体なのでライオスは大丈夫です」

「そうなんですか」


 ルーアさんって戦闘中だと、吃ったりしないんだなぁ……と考えながら拾った石をポイっと捨てる。


 ライオスさんの戦いを見ていると、ライオスさんの左手が光りだした。


「一閃!」


 一瞬、ピカッと光ったかと思うとゴブリンが焦げついてフラフラしていた。

 そして、そこへトドメを刺すライオスさん。


 アレを使えば余裕で勝てたんじゃないのかな……


 そんな事を考えていると


「ライオスの祝福の雷閃は、放つまでに若干の溜めが必要になるので、相手が素早かったりすると、なかなか溜めが作れないんですよ」

「祝福も万能じゃあないんですね」

「雷閃も魔力を消費していますし、万能には程遠いですね。強力なのはたしかですけど」


 魔力も使ってるんだ。

 ノーコストって訳にもいかないんだね。



 そんな事をしていると、ゴブリンを倒し終えたサシャさんとディアンさんも集まってきた。


「アイツらは、早いから面倒なんだよなぁ……」

「Bランクにもなってくると本当に面倒なの多いよねぇ」

「とはいえ、守っているところに後ろから槍が伸びてくるのは恐ろしいぜ……」

「助けてあげたのに文句を言うとは、いい根性してるじゃないか」


 ディアンさんとサシャさんが、言い合いを始めた。

 ルーアさんは気にも留めずにライオスさんのところに向かっているから、平気なんだろうね。


 私もライオスさんのところへと向かう。


 ライオスさんはゴブリンを見下ろしたままだ。

 どうかしたのかな?


「ライオス、どうかしたんですか?」

「ん? ああ、ルーアか……。いや、なんかキリングゴブリン達の様子がおかしかった気がしてな」

「おかしい……ですか?」


 そうだったかな?

 私には分からなかったや……


「何というか、必死だったような……」

「命のやり取りですし、彼らも必死になるのでは?」

「うーん……そうなんだが。こう…怯えていたような……」



 怯えか……分かんなかったなぁ。

 私も父さん達もゴブリンは食べないから、ここいらでは怯える必要ないと思うんだけどなぁ。


 なんで食べないのかって?

 そりゃ不味いからですよ。


 私、大抵の魔物は美味しく食べられるんだけど、ゴブリンはダメなんだよなぁ……

 もう、とにかく不味いんだ。



 以前、食べたゴブリンの味に身震いしていると、草木を掻き分ける音を捉えた。


 まだ遠い……けど……

 不安を感じた私は【側線】を使って、遠くの音を拾う。


 雑多な音の中から、こちらに近付いてくる音だけに集中する。


 思ってたより遠い……けど、凄く速い!



「皆さん! 何か来ます!!」


 私の声で、皆が警戒をする。

 この早さはさすがだと思う。

 けど――


 ソレは木々の隙間を縫うように走り抜けて来た。


 速い!


 皆の警戒よりも、ずっと速くソレはやって来て、私達に前足を振るってきた。


 私は考えるよりも先に体が動いていた。

 とにかく防御を固めようと身体強化系のスキルと竜鱗を使い、ライオスさんとルーアさんを突き飛ばした。




 魔物の爪が迫る。


 ドン、と吹き飛んで何回か地面を転がって川の中に落ちる。


 すぐに川の水が赤く染まったけど、構わず私は飛び起きる。追撃が来たら避けられないしね。


 だけど上手く体が動かない。


 右手は動いてくれたので、それでどうにか這いつくばって川から這い上がる。

 川が浅くて助かった。


 そう思ったのに。


 川から出て気が付いた。


 左腕が無くなっていた。


 お腹の辺りも半分くらい抉られていて中身が溢れてる。



 自分の現状を理解すると、もう駄目だった。


「あ゛……」


 声も出せそうになくて叫べなかった。


 ドチャリと完全に倒れ伏すと、自分の命が溢れていくのを待っている事しかできなかった。











◆ルーア視点


 シラハさんが私達全員に警戒を促します。


 そして僅かな間をおいて、何かが森から飛び出して来ました。


 速すぎる!


 警戒するように言われても、何処から出てくるか分からないため、反応が遅れました。

 でも、これは速すぎます。


 もう魔物の間合い……このままでは!


 殺される!


 そう思いましたが、私は誰かに突き飛ばされていました。

 一瞬、ライオスかとも思いましたが、私と一緒に突き飛ばされているので違いますね。


 すると彼女しかいません。


 森の調査中に拾った迷子の冒険者であるシラハさん。


 彼女が私達を助けてくれたのです。

 でも、その行為は私達の命の恩人の死を意味しています。


 さっきまで私達がいた場所にいる彼女は、飛び出してきた魔物の攻撃を直撃してしまいました。


 シラハさんは血を撒き散らしながら飛んでいきます。


「ルーア! シラハを頼む!」

「……っ!? はい!」


 一瞬の出来事に呆けてしまっていた私は、ライオスの声で現実に呼び戻されます。


 私達のパーティーリーダーであるライオスの指示は、シラハさんを助けることでした。


 襲って来た魔物が未知なるものであれば、全員で戦うのが最善です。

 ですが、ライオスはシラハさんを救う事を選びました。


 なら、私はそれに従うだけです!



 私はシラハさんが飛ばされた所に向かって走ります。

 すると、シラハさんが自力で川から出てきました。


 服は血に塗れていますが、もしかするとそこまで酷い怪我ではない――――


 シラハさんは、すぐに動かなくなりました。


 当然です。


 こんな状態で川から出てこれた事は驚嘆に値します。


 ですが、これはもう……



 短く息をしているシラハさんに、体力回復薬を飲ませてみますが効果があるとは思えません。


 むしろ、シラハさんを長く苦しめるだけの行為です。


 しかし、それでも私は諦めたくはないのです。

 こんな小さな子が、私達を庇って命を散らすなんて耐えられるはずがありません!


 私はシラハさんに、治癒魔法をかけていきます。


 お願いします、シラハさん!

 持ち直してください!


 私の魔力が、スルスルとシラハさんの中へと流れていきますが治る気配はありません。



 そして唐突に魔力の流れはプツリと途切れてしまいます。


 この感覚は、覚えがあります。


 治癒対象の生命活動が止まった時になる現象です。


 つまり……



 私はシラハさんを、救えなかったという事です。










狐鈴「その後、シラハの姿を見た者はいないのであった……」

シラハ「私の出番って、これで終わり?」

狐鈴「それは作者のみぞ知る……」

シラハ「じゃあ、これまでの出演料を……」

狐鈴「それは作者のみぞ……え?」

シラハ「ギャラだよ。正当な報酬だよ」

狐鈴「キ、キツネちゃん貯金箱なら……」

シラハ「ていっ」パリーン

狐鈴「ああ、キツネちゃんがっ」

シラハ「これだけじゃ、ご馳走を食べる事も出来ない……せめてあと一品。ねぇ、キツネって美味しいの?」

狐鈴「…………さあ?」

シラハ「まぁ、食べればわかる事だよね!」

狐鈴「いやぁあああ!!」

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