表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/21

7話

その日々は、不思議なことに3年経った今も続いていた。

私よりも低かった彼の背は見上げなければならないほど高くなり、声も随分と低くなった。手も一回り大きくなって…と見た目で変わったところを上げていけばキリがない。中身は相変わらずのようだけど。


彼と関わるうちに、私の表情も幾分か豊かになった…ように思う。多分。


決闘は、体格差やらでだんだん今まで通りすぐに決着をつけるのが難しくなってきた。確実に力をつけてきているのだろう。その魔法に対する努力と執念だけは尊敬する。


「何だ、人のことジロジロ見て」


勝負し終わって休憩中、視線に気づいた彼が声をかけてきた。褒めると調子に乗るだろうから「別になんでもない」と誤魔化す。が、それでも彼は引き下がらずに「何だよ、言えよ」と絡んでくる。


「いや、君がびしょ濡れにならずに済む日は来るのかなって」


からかい半分で言った私の言葉にむっとした彼が、負けじと言い返す。


「いーや、次びしょ濡れになるのはお前だ」


「そう言いつつタオル持参してきてるじゃん」


図星をつかれた彼が、苦肉の策でわざと私に体重をかけてのしかかってくる。重いのでやめてほしい。体格差を考えてくれ。


「ほんっと、お前は人の神経を逆なでするのが上手いな」


「誰かさんが短気なだけだよ」


軽口のつもりで言った言葉に、カチンときた彼が言い放った。


「そんなこと言ううるさい口なんて、こうしてやる!」


どういう意味かわからずにぼけっとしていたせいで反応が遅れた。目の前が彼一色だ。

口と口とが重なって、ちゅ、と軽い音がする。そういえば、今まで誰ともキスしたことなんてなかったなと頭の隅で思った。


「ふっ、変な顔」


目を閉じていなかったから、状況を理解するのに時間はかからなかった。が、いかんせん気持ちが追いつかない。

目の前の彼は、そんな私にお構い無しに楽しそうに笑っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ