7話
その日々は、不思議なことに3年経った今も続いていた。
私よりも低かった彼の背は見上げなければならないほど高くなり、声も随分と低くなった。手も一回り大きくなって…と見た目で変わったところを上げていけばキリがない。中身は相変わらずのようだけど。
彼と関わるうちに、私の表情も幾分か豊かになった…ように思う。多分。
決闘は、体格差やらでだんだん今まで通りすぐに決着をつけるのが難しくなってきた。確実に力をつけてきているのだろう。その魔法に対する努力と執念だけは尊敬する。
「何だ、人のことジロジロ見て」
勝負し終わって休憩中、視線に気づいた彼が声をかけてきた。褒めると調子に乗るだろうから「別になんでもない」と誤魔化す。が、それでも彼は引き下がらずに「何だよ、言えよ」と絡んでくる。
「いや、君がびしょ濡れにならずに済む日は来るのかなって」
からかい半分で言った私の言葉にむっとした彼が、負けじと言い返す。
「いーや、次びしょ濡れになるのはお前だ」
「そう言いつつタオル持参してきてるじゃん」
図星をつかれた彼が、苦肉の策でわざと私に体重をかけてのしかかってくる。重いのでやめてほしい。体格差を考えてくれ。
「ほんっと、お前は人の神経を逆なでするのが上手いな」
「誰かさんが短気なだけだよ」
軽口のつもりで言った言葉に、カチンときた彼が言い放った。
「そんなこと言ううるさい口なんて、こうしてやる!」
どういう意味かわからずにぼけっとしていたせいで反応が遅れた。目の前が彼一色だ。
口と口とが重なって、ちゅ、と軽い音がする。そういえば、今まで誰ともキスしたことなんてなかったなと頭の隅で思った。
「ふっ、変な顔」
目を閉じていなかったから、状況を理解するのに時間はかからなかった。が、いかんせん気持ちが追いつかない。
目の前の彼は、そんな私にお構い無しに楽しそうに笑っていた。