4話
「決闘しろ、トレニア!」
それから飽きることなく、彼は毎回私に突っかかっては勝負を挑んできた。どこにいても、何をしていても絡んでくる。結局彼を避けることは諦めて、私がいつも本を読んで時間を潰している大きな樹の下で会うようになった。
この厄介事は、いつまで続くのだろうか。手を抜こうにもこちらは適当でやってこれなのでどうしようも無い。興味のない魔術は、しているだけでなんだか疲れてくる。こんなことより機械でもいじっていたい。次下町に行った時に部品でも買って組み立ててみようか。
勝負をして50回が過ぎた頃、そんな心ここにあらずで失礼な気持ちで彼の相手をしていたからか、決闘の終わり際に彼が言い放った。
「お前はいつもいつも俺の事なんか気にもとめないで、ずっと遠くを見やがって…なあ、それより目の前にいる俺を見ろよ!」
「それとも、俺にはそんな価値さえないって言うのかよ……」
その傷ついたような表情をみて、私は呆気にとられた。
はじめて、目の前の出来事が映画のワンシーンのような他人事じゃなくて、実際にそこに存在するものだと感じた。
言葉が、でない。何か言わなければならないのに、口の中がからからで、声を奪われた人魚姫みたいに口を開閉させることしか出来なかった。
彼は業を煮やしたのか、何も言わない私を置いて顔を伏せダッと走り去る。
私は呆然と立ちつくしたまま、彼の後ろ姿を見つめていた。




