トワイライト 結婚式編
病院から退院した優ちゃん 、ほんわかしている。
優ちゃんと赤ちゃん。
それは絵になる。
聖母像のような絵が想像できる。
でも、生活感、まったくない。
しかし、今は未来の心配より、現在の懸念。
結婚式をどこでする問題。
翌日、皆で太郎くんの家にいた。今日も夏日で陽が地上に照りつけ、昼寝をしたい私だけど。
夏の間中、眠って過ごし、秋にほっこりと起きたい私。
でも頑張った。
「じゃ。俺、農作業がまだあるんで、後でまた」って、お昼休みに戻ってきた太郎くん。私たちの顔を見ると、さわやかに挨拶して出て行った。
「じゃ。あとで。結婚式のことは、この子と相談しおきます」と、オババ。
「ありがとうございます」
太郎退場!
その瞬間、叔母、優ちゃんにすがりついた。
「お腹、痛くない。赤ちゃんが蹴ってるとか」
「まだ、なにも感じない」
「血が欲しくなってない?」
血?
叔母さん、昨日の映画『トワイライト/ブレイキングドーンpart1および2』までしっかり観て、それも私の家のリビングのテレビ占領して、すっかりヴァンパイアに感化された。
ベラが宿したのは吸血鬼の子どもで、普通の食事ができなかった。
それで体が弱って人間の血を飲んだ。
こんなふうに、すぐ感化されるのが叔母の特徴で、変な宗教に勧誘されかけたことも何度か。
10万円の印鑑も、20万円の布団も、50万円のツボもすべて買い揃えてた。
その度にオババが立ちはだかって、返品してた。
「優ちゃん、食事はどう?」と、オババ。
「食欲が出てきたの。病院のお医者さまも言ってたけど、私、つわりが終わったみたい。でも、不思議」
「なに、なにか問題でも!」と、叔母。
叔母、なにか問題を探して詰め寄った。
もうすごい勢いで、まるで不幸がなけりゃ、自分で作るぞって勢いだ。
不幸好きな人っている。
不幸じゃないと生きてけない人。
で、その不幸好きの子は、なぜか光のなかで生きてる。
優ちゃん、病院から帰って体調もいいのか。
お肌はキラキラ、肌荒れもなく、透き通るように綺麗だった。
妊娠時はエストロゲンというホルモンが普通の数十倍はでるそうで、ま、眩しい! 眩しすぎる。
「うん、つわりがあったのか、わかんなかったの」
さすが、優ちゃん。
つわりさえ、気づかないとは、ま、こやつならって、思わずオババと目が合ってた。
「結婚式のことだけど、太郎くんは親戚とか、誰か呼ぶの?」ってオババが、再び軌道修正した。
「太郎くんね。ご両親はいないし、親戚とも疎遠だからって、特に呼ぶ人はいないって。仕事の関係の人を呼ぶのも必要ないって。だから、家族と友人だけで式をあげようって相談しているの」
「そうですか。それはいいわね。じゃあ、森の結婚式を家族だけで」
それを聞いた叔母、むふ〜〜んってすごい鼻息を飛ばした。
「何を言っているですか! この子には盛大な結婚式したいのですよ。森でちんまりなんて、そんな世間体の悪いこと、ママが許せません!」
これまでの優ちゃんなら、ここで、「うん」ってうなずく。
誰もがそう思っていた。
ところが、
「ママ」って、いつものほんわか声で言ったんです。
「ママ、太郎くんと私の結婚式なの、ママは黙って」
『鳩が豆鉄砲を食ったよう』って、古いことわざがあるが、まさに叔母がそれだった。リアル豆鉄砲だった。
「でも、優ちゃん」
「ママ、結婚式に来なくてもいいわよ」
優ちゃん、天使なんか悪魔なんか。
強い! 強すぎる! 人間界から魔界へと飛び越してる。
叔母、へにゃへにゃと、その場に座りこんでいて、オババ、びっくりしながらも、次の言葉につないだ。
「実はね、八ヶ岳のほうにレストランを持っている子がいて、うちの、ほらお仲間の息子がね」
あ、あの、オババの愉快な老人会の仲間たち。
まさか、結婚式にしゃしゃり出てくるつもりなんかい。
「これ、どう。レストランのお庭で結婚式って、素敵でしょう。八ヶ岳の森よ。アメちゃん、ホームページ見せたげて」
ホームページっていきなり振られても。
私、レストラン名を見て、グーグル検索した。
「わあ」って、優ちゃん、目を輝かせてみています。
「太郎さんに聞いてみます」
(つづく)




