涙の感動巨編回。『マトリックス』
車の運転が、もう壊滅的に下手って、毎回、書いてる耳タコ文章。でも冗談じゃないんだ。
はっきり言って、ド下手!
ときどき、自分の免許証をながめ、なにかマトリックス的な要素からAIが忖度して取れたんじゃないかって思うわけで。
で、優ちゃんと太郎くんの婚姻届。
その、車で行くってことになった。
駐車場でオババときたら、なぜか助手席じゃなくて、迷うことなく後部座席にすわった。
「助手席じゃなくていいんですか?」
なんとなくね、なんとなく察してはいたけど、一応は聞いてみた。
「統計的に運転手の後ろが一番、死ぬ確率が低い!」
生き延びる気マンマンかい!
ま、私だってね。このところ、運転の機会が多くて、多少は運転、うまくなっている。
病院の駐車場に来たときは、優ちゃんが倒れたって、ものすごく急いで運転していたから、バックで駐車せず、とりあえず前から突っ込んどいた。
これぞ、臨機応変な対応ってやつである。
ところで、病院の立体駐車場。スペースが狭いんで、これってどうよって思うわけですが、ド下手代表としては。
我らはAIではない。
全員が全員、狭い駐車場に、キチっと駐車することこそが奇跡で、少なくともアメ運転レベルが3人いるだけで、ここは修羅場になるって。
そこ、プライドをかけて保証できる。
「なにか不安でもあるのか」
オババが聞いた。
今更、不安以外のなにものでもないわ。
バックミラーから見える狭い空間。
左右のサイドミラーからは、ほとんど隙間が見えない。
右隣は、よりにもよって、アウディのでかいセダン。赤い色が眩しく光り、隙間なし。左隣はトヨタの、なんかわらないけど大きな白いバン。多分、ハイエース!
私が前から突っ込んで駐車したときは、軽自動車が右で、左は空いていた。
それがいつの間にでかい車に囲まれてんの。
悪意か、あるいは、嫌がらせか。これはもう、悪意という言葉じゃ説明できない。おそらく、車と駐車場の悪魔が喧嘩して、とばっちりを受けたって、そんな状況に近い。
「先ほどからため息しか聞こえないが。降りて、指示が必要か」
降りんな。それこそ、轢き殺しそうだ!
アウディと白いバンだけでも視界の注意を引いてるのに、この上、運転できないオババまで面倒みきれん。
で、とりあえず、まっすぐに後方へバックしてみた。
おわかりだろうか、賢明なる読者諸君。
狭い立体駐車場で、まっすぐバックする、その結果を。
そう、ボンネットの左右を大きな車にはさまれ、背後は前方に駐車している車に挟まれるという、まさに前門の狼、後門のトラ。これ以上、一歩も進まぬという限界。
「アメ、どう角度を計算しても、ここから先に進めぬようにみえる」
そんなこったぁ、わかっとる!
息を整えた。
で、少し左にハンドルを切って慎重にバック、慎重すぎてアリより遅い。
それから、前に戻して、それを繰り返せば出れるはず。
……たぶん。
何回か、切り替えしして、前に行ったり、後ろに行ったり。
で、また、50センチくらい左側にバックすると、右のアウディをコスリそうで、私、そこで車を停車して降りました。
な、なんで、運転席でみるのと、降りて見るのじゃ、ちがっているんだ。
まだ15センチほどは余裕があって、で、左を見て、青ざめましたね。もう3センチほどで、トヨタのバンをこすりそう。
ま、まずい。
数学の計算じゃ。このまま、まっすぐバックしての、そっから切り返し。
「アメ」
オババ、ドアガラスをオープンにして顔をだした。
「今、計測してます」
「いや、そこじゃない。別の問題がおきておる」
「へ?」
「先ほどから、この場所に駐車したい車が待っとる」
私、必死であって、もう駐車場から車を出すって、そのことしか頭になくって、周囲を見てなかった。
で、顔を上げると、ハザードランプをつけたグレーの車がいて、その後ろに3台の車が待ってる。
ぎょえ〜〜〜!
90度に頭を下げて謝り、もう一度、乗って、まっすぐバック!
前に戻す、後ろに下がる。
みんな待ってる。
みんな待ってるぞぉ〜〜!!
遊園地の行列じゃないんだから、きっと、呆れている。
呆れる以上に、間違いなくイラついてる。
もうすぐ怒りに変わる!
世の中、ちょっと右側車線走ったくらいで煽り運転する怖い人で溢れてんだ。
駐車場で煽られたら、どうすんの!
で、絶望的に車は駐車スペースから出る気配がない!
出る気がないとしか思えない。
もう、私のせいじゃない。
きっと、車が3歳児のイヤイヤ期にはいってる!!
買ってちょうど3年目だし、3歳児の頑固さで頑張って反抗してる!
私の車、アリの歩みでバックしながら、少しづつ後ろに下がって、でもって、病人乗せた車の渋滞、さらに増えてて、もうパニック。
慌てるな、アメ!
て、そんなこと思いながらも、こんなの不可能だって、思っていたわけで。
と、ドアが開くバタンとする音が聞こえました。
ぎょえ〜〜〜!
いよいよ怒りの鉄槌、1人目!
「いいですか」って、中年の紳士が言った。
「もう一度、前に入れてください」
え? 指導してくれる?
声、子どもをあやすみたいに優しいし。
涙が出そう。
「はい!」
「そうそう、そこでストップ」
ドアがバタンって音がした。いま、指示している人よりさらに年配の男性が来た。白髪の紳士だ。
「あ、待った。もう少し右にハンドルを切る。そうそう」
「ああ、そうですな。ここは、ちょっと待って、後ろ見ますから」って次の老紳士。
バタン。さらにドアが閉まる音がした。今度は年配の女性だ。
「大丈夫よ、あなた、みんなで出してあげますからね。おちつきなさい」
中年のさえないおじさんや白髪の紳士や、おばさん全員が白馬の王子さまに見えた。
私、涙目でうんうん頷きました。
「よ〜〜し。いいぞ、うまい。もう一度、今度はまっすぐ出して! 止まる! そこ、まっすぐに、もう一度バック」
「こっちは大丈夫、まだ隙間があるから」
バタン、またドアが閉まる音。今度は誰よ。
気にしている時間はない。ともかく、全員の指示で、私、車を動かした。
そして、数秒。きっと数秒だ。あんなに出れなかった駐車スペースから、するっと車が出た。
前に道があった!
後ろじゃない、前にあった!
その瞬間、おおきな拍手が沸き起こっていた!!!
私とオババ、車から降りて180度腰を曲げてお礼した。
ありがとう! みなさん、このご恩、一生宝として生きてきます!ってな思いで礼をしていた。
ほんとに、ありがとう!!
(つづく)
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シリーズ第1作の公開は1999年、SF映画。
従来のCGにはないワイヤーアクションやVFXを使った映像。当時、斬新で『映像革命』として話題をさらいました。
キアヌ演じる天才ハッカー、ネオ。
彼が銃弾を避ける、あの黒いコートをひるがえす超絶イナバウアーと、それを追う弾道の白い線がかっこよかった。
映画『マトリックス』はSFが哲学にまで昇華され、卓越した作品になっていたと思います。
監督兼脚本家は制作にあたって、ジャン・ボードリヤールの哲学に影響されたと言っています。
ジャン・ボードリヤール、フランスの思想家であり哲学者です。




