バーレスク
叔母の急変。そして、太郎が病室を飛び出した。
なにが起きてるのか、まったく見当もつかないから。
私とオババ、カヤの外で黙って推移を見つめているだけで、なんの口出しもできなかった。
「太郎くん、どこへ行ったんでしょうか」
「どこだろうか」
と、二人で間抜けな会話をしていた。
なのに、当事者である優ちゃんも叔母も一向に気にしてない。
私、ついていけてない。
この状態についてけない。
だって太郎よ。
大丈夫なのか、この大事なときに飛び出して。
なぜって、叔母、究極の毒親だと思う。たぶん、優ちゃんに自分の敷いたレールに乗せるためなら、なんでもすると思うけど。
孫も巻き込まれっぞ、たぶん。
チェコで制作された『バーレスク』という映画。
学校校長である過保護な母親が、娘をカゴの中に入れて育て、そのカゴに窒息しそうになった娘が支配を逃れるために、ストリッパーになるって話だ。
優ちゃん、そうなっても奇妙じゃない育ち方。
それなのに、太郎くん、しばらくしても帰ってこない。このまま、ストリッパーに優ちゃんをするつもりかって。
「太郎くんはどうしたのです」
白黒はっきりが信条のオババ、問い詰め口調で聞くと、なんと叔母が答えた。
「まあ、いいじゃない、姉さん。それぞれ、理由もあるでしょう」
いつの間に、そんな聞き分けの良い母親に変身したんだ。
と、個室のドアがノックされ、看護師が病室に入ってきた。
「じゃあ、優子さん、診察に行きましょうか」
「はい」
看護師が、「車椅子、使いましょうね」と、用意された車椅子に素直に乗り、変身した叔母が付き添い、病室を出て行った。
私は帰ろう。
「叔母さん、結婚に反対するのやめたみたいですね」
「そのようです」
「私たち、これで失礼したほうが」
「いや」
オババ、少し上の空の様子で、宙を見つめて、無言だ。
手を腰にあて、足を広げ、軽く仁王立ちしている。
「困ったことになった。これは、まずいぞ、アメ。想像通りだと」
いや、オババ、そういう意見欲しくないから。
(つづく)
チェコ映画 『バーレスク』
小学生の教師がストリッパーになる、ぶっ飛んだ内容で、彼女の母親は同じ学校の校長先生。
娘を自分の敷いた真面目レールの上を歩かせようと、そりゃもう服装から、態度まで、すべて教えて過保護にして。娘を押し殺して育てているんです。
校長である母、正義です。自分の子育てに自信いっぱいです。
でもって、娘は息が詰まっています。
彼女、自分の容姿に全く自信がなく、まあ、いわばぽっちゃり系で、モデル体型とは真逆。
で、このぽっちゃり先生、クラブで美しい肢体を見せてダンスするバーレスク女性に憧れます。
そして、ストリッパーとして舞台に。
こんな振る舞いを、生徒の親も町の人々も許すはずがありません。
まあ、自分の子を教える教師が服を脱いで踊ってるなんて、そりゃ、親が許すはずもないですが。
ネタバレ、すみません。良い映画で、チェコ発の大人女子向けヒューマンドラマです。最後まで飽きずに見ました。




