シンクロ
【これまでの登場人物】
オババ・・・人類最強の、私の姑
叔母・勝江(仮名)・・・オババの妹、私のギリ叔母。ヒステリー性障害を患う。娘を溺愛し結婚に反対。娘が駆け落ちした。
優ちゃん・・・叔母のひとり娘、39歳。婚活アプリで知り合った太郎と熱愛、過保護母に結婚の邪魔をされ、太郎と駆け落ち、結婚する予定。
太郎くん・・・35歳。高校時代に親を亡くし、一人で農家を切り盛する勤労青年。最初は結婚詐欺師と思われていた。
すっかり結婚への道を歩み始めた、ほどほど若い二人。
叔母のことはどうなるの?
オババとともにの帰り道中は、なんとなく無口になっていた。
自宅までの一本道に入り、その先を見て、私、思わずヒッて声がもれた。
道路の先になにかが立っています。
いや、人です。
あの、若くない人です。
女性ですが、顔が青白くやつれ幽鬼のような……、そう叔母だ。
車は急には止まれない。
なんで一本道?
なんで狭い、Uターンできね。
バックか、バックで逃げっか?
道路の正面で、叔母が両足を広げて踏ん張ってる!
で〜〜んと立ってる。
ど、どうすんの!
元首相の犬養毅は、5.15事件で青年将校に向かって「話せばわかる」と言って撃たれたけど、きっと話したってわからなかったと思う。
なにかに凝り固まった人って、そういうものだもの。
「あ、あの」
「止めなさい」
「でも」
「逃げてもしょうがないですから。行くわよ」
行くわよって、あなたはいい。オババ、なんといっても血の繋がった姉妹。
こういう場合、誰が一番恨まれるって、血の繋がりのない私だし、立ち位置的にも、むちゃくちゃ弱いんだから。
優ちゃん>オババ>その他の知り合い・・・・>私か太郎くん
叔母にとっての、この位置関係、間違いないから。
だから、しかたなく車を止めた。
叔母、もう10歳は老けたかって顔つき、やつれきっている。
以前は年齢より若く見えたが、今日は年上のオババより、さらに上って感じ。
オババの背後を歩いて近づいた。
「あの子に会ったのね」と、低い声で叔母が言った。
あの子って、一人称。
太郎くん、いきなりの無視。
「あの子に会ったのね」って、もう一度繰り返した。
ヤケクソな気分で、大丈夫です。耳はまだ聞こえますって、言おうか迷った。
それはまずい。
オババと二人でショッピングに行ってきたって言おう。
それがいいから、もう、それで逃げよう。
このところシンクロ率100パーセントのオババに視線で語った。
「会いましたよ」ってオババ。
おい!
シンクロ率は、私たちの100パーセントのシンクロ率はどした?
ここにきて、まさかの0パーセント。
遠くからカラスの鳴き声が聞こえた。
「カラスが鳴いてるから、カラス、なぜ鳴くのって童謡も歌っていますし、そろそろ帰ろうかと」と、耳元で囁いたら、オババ、あっさりと言ったわけ。
「それは、カラスの勝手でしょ」
(つづく)




