偽物聖女の疑問
引き続きアオイ視点です。
とりあえず、いくつかの探し物は見つかった。コランバイン王国の弱みもいくつか握ることができた。
聖女に関することを見ていると、大分愚かに見えるが全体的に見ればそこまで愚かではなかった。意外に思えるが内政も外交も70点くらい……まあまあ上手くやっていた。流石サルビア王国が内部で揉めている間に国際社会での影響力を強めただけはある。
まあ聖女に関しては30点という感じだけどな!!
そもそもコランバイン王国の信仰は俺とは相容れない。コランバイン王国は大陸でも珍しく月の神だけを信仰する国だ。周りの国ではその理由は昔話として結構有名な話だが。
それはともかく、一番の問題は王子だ。あいつはダメだ。聖女の役割とか、今までの功績とかを考えず、自分の感情だけで突っ走っている。
まあ、聖女が自分の婚約者になるとかいう特殊な環境だから仕方ないのかもしれないが。
「大事なものは手放しちゃダメだろ。」
そのせいで、俺は見つけてしまった。兄さんに宣言した最後の探し物。
「アオイ様、お茶がはいりました。」
「ありがとう。クレハ。」
ああ!今日もクレハは最高に可愛い!!
「私は大切なものは手放さない主義なんですよね。」
「はい?」
首を傾げるクレハににっこりと笑った。
さて、俺には疑問に思っていることがある。
とても美味しいお茶を淹れてくれる可愛らしいクレハだが、彼女こそが俺が来る前までのコランバイン王国の聖女である。
しかしそんな彼女は、偽物聖女と呼ばれていた。国際社会でもそんな噂はあって、有能じゃないから、出来損ないだからそう呼ばれているのかと思っていた。しかし
(クレハは優秀だ。)
人を守ったり、結界を張ったり、魔力を制御したり。そういう聖女らしい魔力の扱いにおいて、彼女は非常に優秀だった。それに
(クレハの魔力は、底が見えない。)
クレハが俺の魔力を感じられるように、俺もクレハの魔力を感じられる。最初はほとんどできなかったが、クレハに教えてもらってできるようになった。だけどクレハからは一般人レベルの月の魔力しか感じられなかった。
「クレハは怖くないって言ってくれた。」
無知だから言ったのではなく、理解した上で言ってくれたのだ。そんな彼女の魔力はどれほどなんだろうか。彼女は魔力を抑えるのが上手すぎて、俺より多いのか少ないのかさえ分からない。
そんな俺のところに城内の神官たちが挨拶にやってきた。
この国に来てからある程度経っているんだが……。遅くないか?
曰く俺の魔力が多すぎて体調を崩す神官が続出していたらしい。それは……ちょっと悪いことをしたな。
神官たちのトップである教皇と話すことになった。護衛を数人残して、2人で向かい合う。
今後の国の結界とかについて話し合うのだ。まあ俺はこの国がどうなっても良いし……クレハが色々と手を回してくれているので、意味がない話し合いではあるのだが。
「意外とお若いんですね。」
「いえ、前教皇は私よりも若かったですよ。」
教皇は20代くらいの男性だった。
「前教皇様は、隠居されたんですか?」
「いえ、暗殺されてしまいまして……。」
あまり触れてはいけない内容に触れてしまった気がする。
「クレハ様を連れてきてくださったのも前教皇様なのです。」
「そうなんですか。」
クレハのことに話が移ったので、気になっていたことを尋ねることにする。
「クレハは優秀だと思います。なのになぜ、一部で偽物聖女などと呼ばれているのですか?」
教皇は俺の質問に少し戸惑った表情をした。
「ええ。確かにクレハ様は優秀でしょう。真実を知る一部のものが呼んだ名称が広まり、出来損ないだと誤解されただけなのです。」
「真実?」
教皇は少し悩んでから口を開いた。
「クレハ様の次の、正式な聖女であるアオイ様にはお話しましょう。王族と国と教会の重鎮くらいしか知らない真実を。」
教皇は護衛のものに一時的に部屋から出ていくように命じた。
「クレハ様は正式な聖女ではありません。つなぎの……偽物の聖女だったのです。」
「……優秀なのに?」
「ええ。正式な聖女でもないのに10年もの間、国を守った功績は素晴らしいものです。しかし、悲しいことに彼女のもつ魔力は、月の魔力では無かった。」
コランバイン王国の聖女は、月の魔力を持つ女性。
たとえ同じ役割を果たせても、同じことができても、月の魔力を持っていなければ正式な聖女ではない。偽物聖女なのだ。
「はっ。」
教皇に変に思われないように笑う。
ああ、やはりこの国とは相容れない。そして同時に俺の中にはとある希望が膨らんでいた。いや、既に確信に近い。
「そうなんですね。それで、クレハの魔力は、何だったんですか?」
クレハこそ、俺の10年来の探し人ではなかろうか。
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