犬猿の仲
沖田と近田中佐が珍しく語り合っていた。一部の厳龍乗員からは、犬猿の仲だろうと言われていた、二人だったが、そんな事はない。
むしろ逆で、お互いに信頼をしているから、何を言わなくても、分かり合える。下の者には、そんな奥深い所まで、分かれという方が無理な話である。
「近田中佐、少し時間あるかね?」
「はい、あります。艦長とは、ゆっくり話す事も無いままここまで来てしまいましたね。」
「戦艦扶桑に居てくれてありがとう。あれは米内海軍大臣の無茶ぶりでな。」
「知っていました。でも自分は艦長の側で戦いたかったです。」
「副長のいない厳龍は、弾頭のない魚雷と同じだな。」
「何ですか、それ。笑 それでも充分な戦果が上がっていましたね。」
「ああ、何とかな。倉沢少佐と井浦少佐が良くやってくれた。」
「彼等は、若手エースサブマリナーです。自分が、教える事は何もないです。」
「この世界に来てもう4年以上たつか。何だか、未来の方が霞んで来るな。」
「確かに。ここにいても、何の違和感も無くなってますからね。」
「これからどうなるかは、分からないが、これからもよろしく頼む。」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いいたします。男臭い所ですけど。」
「厳龍は、よく戦ってくれているよ。私が言うのも変だが。」
「どんな戦艦もどんな艦隊も、我々には敵いません。」
「まぁ、それを可能にしているのは、未来の兵器だがな。」
「勝てば官軍、負ければ地獄って奴ですよ。」
「そうだな。でもここまでは、思い通りに来ていると思う。」
「私は、艦長についていくだけですから、そう言われると安心です。」
「逆だよ。君らが、私を安心させてくれるのだ。」
「部下達が、我々の事をどう思っているか、ご存知ですか?」
「さぁな。何だろう。全く想像がつかないな。」
「犬猿の仲だそうですよ。笑ってしまいますね。」
「犬と猿か。よっぽど、馬鹿にされているのだな。」
「下の者の言うことには、敵いませんな。」
「まぁ、良いではないか。本当の所は知られると、恥ずかしいもんだ。」
「もう少しで、日本も良い流れに、乗ることが出来るでしょう。」
そして、いよいよ日本海軍は、この長きに渡るアメリカとの戦いに、終止符を打つため、敵を沖縄に誘い込もうとしていた。




