第八十五話 ミッションインポッシブル
ベルレッタエルフ族との友好関係を確立。
文化交流の為、エルフ族三名がフィガロに留学。
その帰還を待って、フィガロからの留学生をベルレッタに迎え入れる予定。
そうして問題がないとなれば、そこから技能交流が始まる。
つまりフィガロは特産品や工業、農業技術を。
エルフ族は魔法技術をそれぞれ贈り、教え、学び合うのだ。
もちろんエルフ側の魔法を教える事が出来る範囲には制限があるが、それでも今のフィガロの魔法水準を大きく上回る内容になる。
この交流がフィガロにもたらす価値は計り知れない。
「……以上がベルレッタエルフ族長、スレイ・サンジュ・ゾゾフ・クレアリア殿から了承して頂いた内容となります。
現在、前族長であるゾゾフ殿がお亡くなりになった直後と言うことで、長同士の会合は後日調整したいという事でした。
その代わりと言っては何ですが、エルフ族からはスレイ族長のご息女であるルビーナ殿が文化交流にご参加頂いております。
後はフローワ殿と引き続きアリストロメーアの計三名。
フローワ殿はアリスの母君になります」
俺の報告に、目の前に座ったネルソンの口が半開きになる。
両隣に座っているクローディアとマリアベル、そしてコルネットの隣にいるカイの目が輝いている。
王の前にエルフが三名、人族の国ではなかなかお目にかかれない光景だ。
ここはフィガロ城の近くに建てられた迎賓館。
俺達はベルレッタからフィガロに戻った後、自宅には立ち寄らず、まっすぐフィガロ城へと足を運んだ。
とにかく依頼達成の報告をまず行いたかったのだ。
フィガロに到着し王への面談を申請すると、異例の速さで許可が降りた。
そして今こうして、王族の面々とエルフ族が対面しているという状況なのである。
「お初にお目にかかりますわ、フィガロの王よ。
私はルビーナ・サンジュ・スレイ・ノーラ、こちらの作法には疎いので、無礼がありましたら失礼。
子細はノア殿が仰った通り、これから暫くの間ご厄介になると思いますので、よろしくお願い致しますわ」
少しだけ外行きの装いでルビーナが自己紹介をするが、ネルソンはそんなルビーナを眺めながら反応がない。
「ちょっとお父様……お父様」
マリアベルがネルソンの袖を引っ張りながら小声で呼びかける。
それと同時にクローディアが全く顔色を変えぬまま、わりと鋭い肘打ちをネルソンの脇腹に突き刺した。
俺はネルソンにだけ面会を申し込んだはずなのだが、何故かこの二人も集まってきたのだ。
「ぐふっ……あ、あああ、も、申し訳ない……こちらこそ、よろしくお願い致しますルビーナ殿。
それにフローワ殿、アリストロメーア殿には数か月前より大変にお世話になっておりました。
今回は母娘共々でのご訪問ということで、大変感激しております。何卒よろしくお願いします」
気を取り直したネルソンが訪問に際しての謝辞を並べてゆく。
しかし緊張からなのか、その口調は若干固めだ。
相手がエルフ族だからだろうか、口調も取引先に出向いたセールスマンのようになっている。
「わ、わわ、私こそ申し訳ない、こんなダメな女が一国の王の前などに。ほ、ほら、アリスも頭を下げるのだ!」
「大丈夫ですよお母さん、フィガロはもう私の家みたいなものなんですから。どーんとくつろいじゃってくださいよ」
「いやお前は少し遠慮しろよ」
いつも通り自由に振る舞うアリスの脳天に手刀を入れると、場の空気が僅かに和む。
お調子者はこういう時に役に立つというものだ。
「ははは、いやいやアリス殿の言われる通りです。
ご自分の家のように安らかに過ごして頂けたのなら、私もこの国で王をやっている意味があったというもの」
「き、恐縮です……」
堂々としているルビーナと、堂々を通り越して最早フリーダムの域に達しているアリス。
その真ん中でひたすら恐縮するフローワ。
そんな中、このそうそうたるメンバーが集まったテーブルにお茶が置かれてゆく。
メイドかな? と、ちらりとそちらを確認すると、そこにいたのは何とフェリスであった。
いつもの黒いドレスではなく、メイド用のエプロンを付けたフェリスが、手際よくお茶の入ったカップを皆の手元へと配って行く。
何でフェリスが給仕をやっているのだ?
俺はフェリスに声をかけようとしたが、彼女はお茶を配り終えると静かに一礼し、そそくさと下がってしまった。
一体、俺のいない間に何が起きていたのだろうか……
「それでノア君、そちらのお嬢さんは?」
ルビーナ達との挨拶を一通り終えたネルソンは、ソファの隅っこにちょこんと腰を掛けてこちらをじっと見つめている少女の説明を俺に求めた。
その視線の先にいるのはヘリオトロープ。
彼女はスレイに預けてくる予定ではあったのだが、どうにも俺と離れたがらず、結局一緒に連れてくる事になってしまったのだ。
今はルビーナが施した魔法により目の色だけは髪の色と同じ紫に変わっている。
幼く見えるが俺の指示には非常に忠実で、かつ俺が許可した内容しか話さない。
その為、他人からは終始無言で非常におとなしい少女のように映るはずだ。
「彼女については……その……長くなるのですが」
「……うん、仕方ないね。でも君の話を聞かないという選択はないから、どうぞ話してくれたまえ」
ネルソンももう慣れたもので、俺の言いにくそうな顔を見てまた厄介事が増えたことは察したらしい。
とはいえ、厄介事というのは言い方を変えれば重要な事柄ということになる。
故にどんな話が飛び出そうが、ネルソンとしては確認しないわけにはいかないのだ。
「ええ、では……お言葉に甘えて。
エルフの村での滞在期間が伸びた主な要因なのですが……実は、ひょんな事から古代人の遺跡を探索する事になりまして……」
俺は諦め顔のネルソンに、これまでの経緯をかいつまんで話した。
――そして三〇分後。
そこには思った通り、頭を抱えてうずくまるネルソンの姿があった。
まあ、気持ちは分かるよ、俺も怒涛の衝撃の事実ラッシュで後半は頭がバーボンだったからな。
話は九割がた事実のみを伝えていったが、唯一、古代遺跡が兵器施設だったという事だけは伏せておいた。
あれはこの世界には過ぎた代物、あってはならないものだ。
もう稼働は不可能という事だったが、何かの間違いで人の手が入ってしまえば何が起きるか分からない。
あの施設に関しては、シエルが戻ってきたら相談して、完全に封印してもらう事に決めていた。
だからネルソンには“古代人が天族を監視するために作った地下施設”としか伝えていない。
騙すようで少し心苦しいが、どうせいずれ無くなるものだ、あんなものの存在は知らないなら知らないままのほうが良い。
一緒に行動したルビーナ達からは特に何の横槍も無かった。
かつてはエルフの村を一瞬で焼き尽くした施設なのだ。
いくらこれから交友を結ぼうとしている相手とは言え、そんなものの詳細が伝わらないに越したことはないということだろう。
「ええ、なにそれ面白そう! 私に黙ってそんな大冒険してきたなんてずるいわ!」
考え込んだネルソンに変わって、マリアベルが憤慨したように身を乗り出す。
「そんな事なら私も付いていくんだったわ!」
「お姫様が無茶言うなよ、何百何千っていう虫がひしめく洞窟とか通らなきゃいけなかったんだぞ」
「え……虫……」
マリアベルが少しだけ怯んだのを見て、俺はその時の様子を事細かに説明する。
隣ではルビーナとアリスが当時の状況を思い出したのか身震いしていた。
「――でなあ、ユニコーンが魔法で一層したんだけど床がそらもう虫の死骸で埋め尽くされてて、歩くと靴底がプチプチブチュブチュ……」
「や、いやあああ、やめて、もういい、もういいから!」
「ノアさん、思い出させるのは止めて下さい!」
マリアベルが耳をふさいでイヤイヤする……ちょっとだけ楽しい。
隣ではその時の事を思い出したのか、ルビーナとアリスが青くなっていた。
「……そ、それで、どうなったのですか?」
そんな中、一人だけ身を乗り出して俺の話に聞き入る女性がいる……クローディアだった。
クローディアは俺のグロ話に興奮したような面持ちで聞き入っている。
「え、あ、いや……それで終わりです」
「……そうですか」
何となく嫌な予感がしたので話を打ち切ると、クローディアは残念そうに身を引いた。
「お姉様、あんな話聞いて気持ち悪くないの?」
「いいえ、とっても楽しいお話でしたよ。
ノア様のお話は何でも楽しくて、つい聞き入ってしまいます」
そんな事を言いながら優雅にお茶を飲むクローディア。
その様子に特に変わったところはない。
だがしかし、さっきのあのうっとりしたような表情は。
……冒険話が聞きたかっただけだよね? グロ話に聞き入ってた訳じゃないんだよね?
それから立ち直ったネルソンとしばし歓談し、とりあえず顔見せと簡易的な報告は済んだということで俺の方の用事は終わった。
その後は女性陣にエルフ族の接待を任せ、俺とネルソンが少し場所を変えて、今までのフィガロでの動きを簡単に説明してもらう。
俺がエルフの村に行っていた約二〇日間の間、政治的には特に変わった事は無かったようだ。
チェリス家に目立った動きはなく、強いて言えばオリバーがまた大荷物を積んでラギウスに向かったという事くらいだ。
オリバーが言うには、それも外交の一つという事らしい。
実際、それとなく監視を付けてみたのだが、帝国内でも特に変わった事はしていなかったらしい。
複数の帝国貴族に挨拶回りをした程度だったようだ。
もう一つ変化があったことと言えば、ラギウス帝国の第二皇子であるジラートがアポなしでフィガロを訪れたらしい。
名目は、年末の挨拶回りという事だった。
彼もまた、こちらの貴族家を回った後に、クローディアに散々ちょっかいを出して帰っていったそうだ。
迷惑な話ではあったが、これも特におかしな様子はなかった。
「あとは……ノア君が出ている間に、グール騒ぎが二回起きてね……少し数が多すぎるということで調査をしているくらいだ」
「グール? よく聞きますが、いつもはそんなに起きないのですか?」
「例年では年一回あるかないかという程度だよ、でも今年はもう六度目だ。
それも……こう言っては何だが、君達がフィガロに来た頃から急激に増えている」
困ったようなネルソンの言葉に、俺は思わず顔をしかめた。
ネルソンが言っている事が本当なら、客観的に見て関与を疑われる条件が揃っているといえるからだ。
「ああ、誤解しないでくれ、君達が何かしていると考えている訳ではない。
ただ、この数は異常だということも事実だ。
今フェリス殿やエルネスタに原因を探ってもらっているが、もしかしたら君達の住居を少し移動してもらう必要が出るかもしれない。
状況的に君達が意識していないにせよ、何らかの影響を与えているという可能性は否定できないからね」
ネルソンの遠慮がちな言葉に俺は素直に頷いた。
自分達が疑われているのは面白くないが、とは言えグールといえば一般人にとってみれば十分過ぎる脅威だ。
人々の不安が募り、その理由を俺達のせいにされてしまうという可能性も無くはない。
この政情不安の中では余計にその危険性が出てくる。
調査をして、それでも原因が分からなければ、ネルソンの言うように俺達が一旦フィガロから離れ、様子を見るしか無いだろう。
「分かりました、いつでも移動できる準備はしておきます」
「申し訳ないね、君達を追い出すような事はないから、それは安心してほしい」
「分かっています、今は敵に付け入られる隙を見せる訳にはいかないですからね」
「敵か……姿が見えない敵というのも厄介なものだね、いっそ全て勘違いであってくれればといつも思うよ」
そう言って笑うネルソンの顔には疲労の色が見え隠れしていた。
この二〇日間の間、様々な情報を洗い出していたのだろう。
問題が問題だけに軽々しく部下を使うわけにも行かない、かといって王の身では目立った行動も取れない。
その心労は察するに余りある。
「それでも君がエルフ族との同盟の話を繋いでくれたおかげで、大きく前へ進めそうだ。
報告を聞いた時は思わず耳を疑ってしまったよ。
無理を頼んでおいて申し訳無いのだけれど、たった一度の訪問で話が進むとは考えていなかった。
精々、手土産品を突き返されなければ上出来くらいに考えていたのだが……」
「いえ、俺は何も……殆ど偶然みたいなもので……」
ネルソンからの労いの言葉に、反射的にいつも通りの返事を返す。
本心はとても嬉しい、しかし心の奥では、それは過ぎた評価だと、結局俺は何も出来ないただのオマケだったという気持ちが残っているのだ。
これはもう癖のようなものだが、実際に大きな決め手となったのはユニコーンの存在があったからだ。
俺だけではとても実現不可能な話だった。
正直なところ、遺跡でルビーナに協力を断られた時、俺はもう殆ど諦めていたのだから。
「本当にそうかな?」
「え?」
「君は良くそういう風に自分を下げる言い方をする。
それ自体はさほど問題はない、謙虚な心とは尊いものだ。
だが私には、君のそれはどうも違うような気がしてならない」
「でもそれは……今回は本当に偶然が重なったからうまくいっただけで」
あんなものを俺の実力だなどと言える訳がない。
実際に俺は一人では何も問題を解決できていないのだ。
そんな俺の様子を見たネルソンは、困ったような顔で小さく息を吐き、続けた。
「偶然を支配できるような者は誰も居ないよ、そんな事が出来るとすれば神だけだ。
そんな事を言い出したら、私だって数々の偶然の上に、たまたまここにいるだけなんだよ。
たまたま王族に生まれ、たまたま王としての知識を学び、たまたま争い事に勝って仲間を得た。
そしてたまたま、ノア君という人間が私の元に現れた……それだけの事なんだよ。
重要なのは、偶然を突きつけられた時、どのような選択をするかということだ。
人にできるのは、与えられた偶然の中で選択するという事だけ。
そして君はその選択を選び続けて、今日という日がある。
それが素晴らしいものなのだとしたら、君は勝利してきたということだ、同時にそれこそが、間違いのない君自身の力なんだよ」
そう言いながら俺の両肩に手を置くネルソンの顔は、怒っている訳でも、落胆してる訳でもない。
作り笑いではあり得ない、優しい笑顔が浮かんでいた。
俺はこの素晴らしい王に認められているのだろうか?
認められて良い人間なのだろうか。
力もなく、勤勉でもない、善人ですらない、人より秀でたものなどない俺が、認められてよいのだろうか……
そんな考えが頭の中でこだまし、思わず目頭が熱くなる。
「王よ、我が主をいじめんでやって欲しいのう」
気が付けば隣にフェリスが来ていた。
俺はといえば、気を抜けば涙が溢れそうになってしまう目に力を入れ、必死にこらえている。
その為少し頭がプルプル震えていた。
「フェリス殿、私はノア君を讃えていたのだよ?」
「傍から見れば大男が妾の主に因縁を付けておるようにしか見えぬ」
「そんなに怖い顔かなぁ……」
ネルソンはそう言うと自身の顔を手で擦りながらおどけてみせた。
「とにかく私が言いたかったのは、この旅の中で絶対にノア君がいなければ切り抜けられなかった場面があるはずなんだ。
それが君の持つ直接的な力。
そして、私は不可能だと思っていた任務を、ただの一度で達成してみせた。
これが、君の持つ総合的な力だよ。
要するに運も実力の内って事、君を慕って集まっている仲間の力だって、間違いなく君の持つ力の一つなんだからね」
そこまで言うと、ネルソンはふっと顔を緩めた。
「君が頼りになる男に成長してくれて、私は嬉しいよ」
その言葉を聞いた時、もはや限界だった。
やっとの事で留まっていた涙はあっというまに溢れ、留まること無く流れ落ちていく。
俺は認められたのだ。
俺が尊敬するこの王に。
そう思ったらもうどうにもなかなかった。
「あ、ありがとう、ございます!」
自然と言葉が出て、頭が下がる。
仕事で謝辞と礼をする事は数え切れないほどあったが、こんな気持になった事はない。
本当の“ありがとう”とは、こんなにも気持の良いものだったのだ。
俺は流れ出る涙もそのままに、ネルソンに向かって頭を下げ続けた。
「落ち着いたかの」
色々あってひどい顔になってしまっていたので、フェリスに連れられて休憩室に入り、顔を洗って仕切り直しをした。
頭は今までにないくらいスッキリとしている。
「ありがとうフェリス、もう大丈夫だ」
休憩室のソファに座り、身支度をしている間にフェリスとは色々な話をした。
基本的にはどれもこれもビッグニュースではあったが、その中でも遺跡の中で見たシャルルの記録には大きく興味を引かれたらしい。
自分の亡き父が映っているとなれば、そうもなろう。
「妾もそこに行ってみたいのじゃ」
「ああ、時間ができたら行こう、景色のいい滝もあるから皆で小旅行だな。山の中だから春になってからになるけど……」
「うむ……それは仕方がないのう……」
フェリスは自分が付いて行けなかった事をひどく悔やんでいたが、俺が遺跡旅行を提案すると喜んで飛びついてきた。
「ところで、何でそんな格好してるんだ?」
「うむ、今妾は王の身辺警護も行っておるのじゃ。
しかしいつもの格好でずっと王の近くをウロウロしておる訳にもいかんからのう。
国王付きのメイドとして雇ってもらう事にしたということじゃ」
「国王付き……」
「今は寝泊まりも城で行っておる。
微妙な時期であるからのう、念には念をという訳じゃ」
国王付きのメイド……城で寝泊まり……
俺の中で別の妄想が膨らんでいく。
いやいや、そんな事があるはずはないのだが、久しぶりの長旅の後とあってイヤラシイ妄想ばかり浮かんでしまう。
「ところでじゃ……この格好、どうであろう?」
フェリスはそう言うと、俺の目の前に立ってスカートの裾を持ち、クルクルと回転する。
目新しい格好という事もあるのだろうが、何というか、すごくイイ。
「ああ、すごく可愛いよ」
「そ、そうか! そうであろう! ふひひ……かわいい……かわいい……」
上機嫌になって五割増しで回っているフェリスを見て、俺の中に悪戯心が芽生える。
「じゃあフェリス、もっと可愛くなってみよう!」
「な、なんじゃと! これ以上可愛くなれるのか!?」
「なれるよ!」
「お、お願いするのじゃ!」
久しぶりに会えた反動からか、フェリスの警戒心もだいぶ下がっている。
これはいける!
「ではまずスカートの裾を持って、目線は左斜め上四五度を見よう」
「こ、こうかのう」
俺の支持通り、フェリスはスカートを摘んで顔をちょっとだけ上に逸らす。
「両手を一〇センチ上げて!」
「うむ」
「両手を一〇センチ上げて!」
「うむ」
「両手を一〇センチ上げて!」
「う、うむ……」
「両手を一〇センチ上げて!」
「……あ、主よ、み、見えてしまうのではないかのう」
意外に早く気付かれた。
既に白く綺麗な足が膝上まで露わになっている。
本当なら今すぐにでも飛びつきたい、何せ二〇日間も女の子に囲まれながらの禁欲生活だったのだ。
メイアのおっぱいは揉んだけどな!
「フェリス、ここからだ、ここからが重要なんだ!」
「ふ、ふえっ?」
「ここから毎秒一センチずつスカートをたくし上げてくれ」
「ふええええ? あ、主よ、目が怖いぞ」
「今以上に可愛くなる為だ! さあ! さあ!」
戸惑いながらもフェリスはスカートを徐々にたくし上げていく、斜め上を向いた顔は赤くなっており、足はすこし内股気味。
イヤイヤ言いながらも律儀に主人の言いつけを守るメイド。
パーフェクトだ!
心の中でガッツポーズを取ったその時だった。
「パーフェクトじゃないわよ! 死ね変態!」
どこからともなく飛来した光の矢が俺の頭に衝突し、俺の視界はそのまま暗転した。




