②開幕2
「やっぱり決闘にジーン君出てもらっていい?」
「………………え?」
明日の魔術決闘の備えて、最後の調整。といっても今のところ誰が出るのは決まってない。僕らは全員出てもいいように準備はしているものの、誰が出るかのドキドキで準備がままにならない。
「僕が出るの?」
「うん、今のところ対人経験があるし、術式も肉体に順応してきてるから別に拒む理由もないでしょ」
「…………言葉ですが、すごく嫌なんですけど」
「えー、じゃあ勝ったら金貨あげる」
「ギャレン君みたいで嫌だよ。なら何も貰わずに出る」
「じゃあ、そういうことで」
こんな風に僕の出場が決まってしまった。本来は当日発表の予定でそれまでドキドキするはずだったが、そんなこと言ってられる場合ではなかった。
やりたくない理由は簡単である。関わりたくない。
完全なる嫌悪するわけではないが、何か僕に悪影響がある人間たちの可能性があって、どうにも近づきたく無い。
まあ、多分あんな醜態を晒したギャレン君は出ないとして、今からでも何か対策しないといけなくなってしまった。とても面倒だし、ため息が出る。
あくまでも将来有望な魔術師見習いがくるとなっては、こっちも手を抜いて決闘するつもりもない。それに場合によっては最悪の怪我なんて、可能性もあり得る。
難しいなぁ。まあ、あれから色んな術式の試行錯誤を試してはいる。それに実用的なものも色々生まれてきた。だから無策に挑むつもりはない。しっかりの僕なりの爪痕を残せるように、僕の魔術師としての可能性を魅せる。
それにしても難しい。
対人戦闘の慣れてしまう事に越したことはないが、魔術決闘はある種格式があるせいで、魔獣や戦争のような殺意むき出しの対人ではない。
明確な殺意のある戦いが起きそうになった場合の戦い方を我々は知らなければならず、だからアダム君は最初怪訝な反応だったのだろう。
でもルカちゃんが受けちゃったから、我々も渋々やる。アダム君はかなりイライラしていたけどね。
“いや、未来を見ればその苛つきも分かるでしょ”って僕は思ったんだ。だからこの素朴な疑問をアダム君にぶつけてみた。まあ、特に変なことを聞くわけじゃないし。
「基本的には、地殻変動だったり惑星規模の未来なら何となく把握しているけど、個々の人物の未来を全て確認はこの際してない。だからお前らが成長するのは、全てお前ら次第。見ることは出来るけど、やる意味ないし」
だってさ。兎に角未来の可能性をすっ飛ばして楽しようとするなよ、ってことだろうな。そのぐらいの意図は流石に伝わった。
とりあえず、魔術決闘での対人戦闘には気が引ける。
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当日。僕らは全員でアナベル魔術学院に来ていた。1年間通った学舎だが、今となっては思入れもない。新しい場所が心地が良いもんでね。
この時、全員真ハイム側はかなり威圧感がある。僕にはそう見えてしまう。魔力を無駄に消費しないように、皆制御をしている。
聖域内での修行と2週間ばかりの基礎と対人戦闘訓練。
多分国内にいる野良の魔術師や冒険者よりは、魔力総量や技量含めて全て格上と呼ばれるほどの実力となっている。
それがわかるほどのみんなのレベルと余裕。
それを分かるほどの僕の認識能力。
「やっぱり成長してるんだなぁ」
僕はこんな風に不意に口に出してしまった。
彼と会うまでは、僕はこんな自信を前に出す人では無かったと思う。少なくとも魔術技量や人格もここまでは無かったし、境遇もこんな風にはならなかった。
人生は不思議なものだ。
「それじゃあ、敵陣へ。レッツゴー!!」
今度は打って変わって、意気揚々なアダム君。彼は僕らより何万年上の先輩。先輩が燥ぐ姿って、なんか痛々しいね。
こんな事思われるなら、彼”人間じゃない”っていう真実言わなくてよかったんじゃないかな。僕らはみんな彼の弾む姿に憐れむ目をしていた。そんな中に、本当の敵陣。
僕が決闘した場所、魔術第一訓練場。
会場内に入ると僕らを見た、既にいた観客たちが騒ぎ出す。罵詈雑言の嵐、ブーイングと嫌悪の対象の声。
なるほどね、こういう空気感でやるのね。意外と燃えるね。早くやりたくなってきた。
「いやー来ましたか。真ハイム魔術学院の皆さん、本日は宜しくお願いしますね!!!」
見覚えがある。アナベル魔術学院の負の伝統を馬鹿らしく活かす男、学院長だ。
多分彼の存在は、僕ら全体で嫌な意識で感じている。
そりゃそうだろうな。差別や格差を利用した学院生活を受けさせられて夢まで捨てそうになったところの諸悪の根源。またこの前ルカちゃんが言ってたみたいにニタニタと笑ってこちらにやって来る。
そういえばルカちゃんは今日はいない。
理由を聞いたら「あんな奴ら見たくないし、どうせお前たち勝つだろ?買った時の金貨はしっかり持って帰ってくれよ」だってさ。
それはある意味興味があるってことじゃないのかな。ルカちゃんって案外天然だし、そういうところあるんだね。僕は心の中で見直した。
一応こちらはアダム君が教師をしている。
「宜しく」
一切の敬意の念など込めずに、タメ口を一発。
やっぱり人間じゃないな。そこら辺違う。
「よし、行くぞ。お前ら」
無意味な学院長など、皆見向きもせず、アダム君が歩く道を続く。皆しっかりと嫌悪している。その魂胆も含めて今日は漲る次第だ。
こうして僕らは誰にも案内されない”真ハイム魔術学院側の控室”をアダム君頼りに向かう。アダム君の感知能力はここで遺憾無く発揮される。
こうして僕らの戦いは既に始まっていた。
さぁて、次回からまた戦闘描写が入りますよ。僕が描きたかった魔術描写の数々、沢山仕込んでいます。
お楽しみに。




