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理の魔術師は育てる。  作者: アイネ
対抗戦
10/16

①開幕

僕らがここに来て、1週間後経った。


戸惑いは突然、季節のようにやってくる。


「おい、お前らに魔術決闘が申し込まれたぞ」

まるで輩な低い女性の声、僕らは新しい学舎の外でアダム君の郊外授業を受けていたところ。ちょっと休憩の間で、皆んなへとへとになっている。


「…………どうせ、アナベルだろ?」

「あぁ、そうだ。なんか腹立ったから受けてやった。勝ったら金くれるって。1週間後だってさ、宜しくな」


 


「……………………は?」

 

我々の真ハイム魔術学院の学院長にして、シュゲイン王国に在籍する特級魔術師の一人、”ユメハマ・ルカ”さんだ。何歳かは分からないけど、30歳程度じゃないかな。


肌にはシワがないし、髪の艶も若々しい。多分魔力による細胞の老化が著しく衰退してる可能性もあるけど、それでもそんな訳はないだろう。


兎に角こういう性格なのか、初対面からこんな感じで全生徒と接している。誰でも隔てない空気感だ。

僕らは、特に女子たちは気安く「ルカちゃん」と呼んでいるが、めちゃくちゃ怒られる。でも徹底して辞めさせないから恥ずかしいだけなのかな。


特級魔術師の親しみやすさが、なんだかツボになる。

「…………一応この学院に申し込まれたんだから、お前の懐に入る訳じゃねえんだぞ」

「そんなことは知ってる。それよりも会った時にニタニタとバカにするような感じで申し込まれたから、ムカついたから受けた」

「お前なぁ…………」

「アダムも私のそんな気持ちぐらい察してくれよ。それにアナベルはこっちをまだ見下す気満々なんだって。だったらこの際に白黒はっきりさせた方がいいだろ。あとが楽だぜ」

「いや、寧ろ学生相手だったら時間の無駄だろ。もっと外の世界に行って、魔獣や他の種族との戦闘に慣れないと」

「おいおい、天下のアダムも効率の悪いこと言うようになったなぁ。今後もぐちぐち付き纏われる可能性があるなら、ここで決着させた方が先決だろうよ。特級魔術師が言ってるんだから、信用しろって」

「その特級魔術師を育てたのは俺なんだが」



何となく二人の関係性は理解出来た。でもやっぱり、陛下もそうだったけど、皆んなアダム君に対してフランクだよな。


それほど、親身になって魔術の授業をつけてくれたんだろうな。実際僕らも”人間じゃない”事実を聞いた後でも別に君呼びは変わんなかったからな。






でも先行きが凄く不安がある。恐らく学院対抗で魔術決闘をするってことは、向こうは先鋭で来る。選りすぐりのメンバーで僕らを倒しにやってくる。


B組のギャレンなんか、その程度ではないレベル。なんならこの国の未来の特級魔術師が僕らの相手をする可能性すらある。


そんな相手と、まだ魔術を真剣に習って1週間の学生が魔術決闘か。とても気が引けるな。まあ、僕らは聖域で何年も時を過ごしているわけだが。


結局あのあと、僕以外のみんなは聖域を出たあと、まだ実践的に動いた事が殆どない。転入して最初の4日間は聖域内で教わった以外の魔術の応用知識を座学で勉強していただけだし、昨日と今日で漸く外に出て、実践のための準備運動をしていた程度だ。



 

何でもアダム君には色々陛下以外もツテがあるらしく、それらとの魔術決闘も視野に入れていたのだとか。


それを加味して、今は体を壊さないような準備運動を長い時間かけて行っている。これがかなりきつい。あの時は優しかったけど、意外とみっちり教えてくれるスパルタ感は否めない。


現に昨日の魔力運動をしながらのランニングや戦闘訓練の疲労感は、今も残ってる。


ギャレンとの決闘を経た僕ですら、休憩が欲しくなる程厳しかった。これが毎日続くのかって思ってた矢先の、変わり種が舞い込んでたということだ。



 

「とりあえず決闘内容は5vs5の3本先取。一応エキシビジョンも考えているそうで、そこら辺はもっと詰めてから、決めるだってよ」

いや、曖昧だろ。何だよエキシビジョンって。そんなの、僕らを最後に叩き潰すための、余興がありますよって言ってるようなもんだ。


多分これは直前になって色々言われるパターンだな。学院長も面倒くさそうな立ち位置だな。


「…………はぁ、というわけで予定変更。急遽対人戦闘の訓練を入れなきゃな。みんなもそのつもりで」


「「はーーーい」」


心なしか、みんな別に不服じゃ無さそうな、感じだなぁ。意外と自信がついて、案外やる気なのかもしれないなぁ。


僕は少し面倒なんだけども。



 

あともう一つ変わった事がある。それはアダム君だ。

アナベル魔術学院の時は僕らを観察して成長させ、ここに勧誘する為に学生として入学した。でもその任務が終わり、僕らの成長だけを見ることだけに専念していいわけで、今は先生として僕らの教鞭に立っている。


まあ、必要経緯としてアダム君も特に何も言わなかった。僕らもその尊敬の念は変わらない。


というわけで、僕らは来たる魔術決闘に向けて、実践と術式の見直しをしなくてはならなくなった。


 


まあ、一朝一夕な術式の使い方より、多数の選択肢のある幅広い戦闘スタイルにしなくてはならない。場合によっては激しい戦闘の上で術式が使えなくなる事態に陥る可能性すらある。


全ての不測の事態に備えた戦い方を僕らは見つけなくては。そういう思うと、意外と時間がないと思った。


現に対戦相手が誰だか分からないから、僕ら全員で対策する必要がある。誰もが出たら勝てるように。




これから対抗戦編となります。

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