・37・元大道芸人と救世主とショックなニュース
下水処理場の水槽のほとりに、男が二人。膝を付き悶絶する少年と、それを笑って眺める中年。
「どう?ミスター・フリゼルが大道芸人なんかじゃないってわかってくれた?」男が笑って言うが、
少年はまったく動かない。
「芸人じゃないことだけはね。」
「というと?」
「夢どうのこうのってのは信用してない。」
「ああ、なら簡単だよ。イアン君さ、今見てる景色は全部見たことあるだろ?」
あたりを見渡し、うなずく少年イアン。
「この空間が僕の幻術ならあまりにも無駄が大きい。やたら解像度は高いし、環境音まで入ってる。普通ならもっとシンプルな空間でやるよ。それをしないのはここが夢の中だから。そのくらいすぐわかんないとね」
うなずく少年イアンと、溜息ついて悪態までつく中年フリゼル。
「さてと。それじゃ本題に入ろうか。」指を鳴らして机と椅子を出し、スーツに着替え、机に座った
フリゼル。両手を組んで、顎を乗っけて喋りだす。
「イアン君さ、幸せなところ、さっきみたいなところににずっと居たいと思わない?」首を傾げて苦笑いのイアンと、目をかっぴらいて回答を待つフリゼル。「いや、そんな事できないでしょ」イアンが、言うと其処に被せてまた喋るフリゼル。
「いや、できる。僕の固有式”夢想百貨店”ならね」
「夢の中でしょ?意味ないですよ。」
「じゃあ聞くけど、君はこの空間が夢だと言い切れる?普段の世界が現実だと言い切れる?その区別は驚くほど曖昧だ。君が現実だと思えば夢も現実になる。」
「やりません。」「そっか。なら仕方ない。」そう言って手をふると、中にはナイフが一本。おおきく振りかぶって、フリゼルが斬りつける。「何するんですか?!」「言ってなかったけどさ、僕って君のとこの対立組織所属なんだよね。しかもNO。2。つまり、君は無力化できなきゃ殺さなきゃいけない。ごめんね」
「くっ・・・”鋼絹”なっ?!」「ああ、使えないでしょ。ここじゃ僕の式に勝てないよ。」そういってフリゼルがナイフを振りかざし、イアンの腕に突き刺さる。意識がなくなったイアンは、きれいに膝から崩れ落ちた。
「おい。生きてるか?」という声と謎のペチペチ音。清々しい朝とはとても言えない。
「あ、起きた。」イアンが目を開けると其処にはアルミナント。
「なんでここに?」当然、そう聞いた。アルミなんとはため息を一つと一言、口から吐いた。
「ジョヴァンニ・アウレリオ=ノヴァーラが、お前の相棒が、裏切った。」




