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双黒のアルケミスト ~転生錬金術師の異世界クラフトライフ~  作者: エージ/多部 栄次
第一部三章 錬金術師のクラフトライフ ルマーノの町の日常編
70/214

幕間前編.ネコとゲスの化学反応

一人称で書いてみました。メルスト視点です。

息抜き程度に、あまり考えず思うがままに書いたので、多少ヘンな文章や展開があると思います。

 しとしと、しゃらしゃら。

 外から楽しげな音がやさしく聞こえてくる。しかし、誰も外へ出ようとはせず、じめっとした家の中に閉じこもったままだ。


 誰も来ないことに腹を立てたように、今度はザーザーと強く呼びかけるように音が大きくなる。より一層、外へ出る気にはならないことを知るはずもなく。


「雨ひどいなー」


 雨の日はどうも気分が下がる。

 窓の外から、むしろ感心するほどの大雨ぶりに、二階廊下から覗く俺は見て飽きることはない。エリシアさんもいつもの読書を中断し、一緒に水の音と冷たい景色を観賞する。あ、これ……めっちゃいい雰囲気じゃないか? 月は見えないけど。「なんか綺麗ですね」みたいなこと言えない。


「久しぶりに降りましたね。今日は外出しない方がいいかもしれません」

「エリシアさんって魔法で天気とか変えることできるんだっけ」

「ええ、できますけど、自然の摂理を大規模に変えてしまいますので、あまり軽い都合でそういうのはしないようにしています」

「確かにそうだな。魔力も多大に使うよね」

「それなりには」


 魔導士の一生分以上の魔力を消費するはずだが、それを大賢者のエリシアさんは「それなり」で済ませられる。とんでもないな。

 再び雨を見たとき、あることを思い出し、ふいに声を出した。


「あっ……洗濯物取り込んだっけ」

 さっき干してあったところを見かけていたので、少し心配になる。この外の様子では池の中に沈めるのとそう変わりないだろう。


「フェミルが取り込んでくれましたよ。今お風呂入って着替えているところかと」

「間に合ってないねそれ」

 風邪ひかなきゃいいけど。でもナイスファインプレーだ。あれ、意味二重になってる?


「濡れた分は工房内で干してます。あそこは蒸気やらで熱いですから」

「マジかよ、機械油とか火薬臭くなるじゃん」


 十字団の拠点の大半は工房だ。

 一階はルミアが持つ機械工房。切削加工機器をはじめ、武器や爆撃兵器を開発し、製造するためのスチームマシンが揃っている。蒸気機関を動かすための焼却炉もあり、常に汗が噴き出すような蒸し暑さが籠っている。その上の階は俺やエリシアさんが使用している錬金工房が設置されてある。


 渇いた熱さならともかく、蒸気熱もあるならば干す意味がないような気もする。干せたとしてもすっきりとした気持ちで着れるわけがない。


「あの香り私は好きな方ですけど」

 あ、先生も塗装や硝煙の匂いが好きな類の人か。パイプ嗅がせたら「これ好きですね、ハマりそうです」って言ってそのままヤクに走り出す系のやつだ。絶対にさせないでおこう。


「え、あの臭いを?」とあえて意外そうな顔をする。

「ここに住んでいるうちに適応したんです」

「ドヤるとこじゃないよ今」

 ふんす、と得意げになったエリシアさん。素でやるからかわいいわけで。


「ねーちょっとー」

 階段下からルミアの呼びかける声が聞こえてきた。

「どうした?」「どうしました?」


 あの爆弾魔のことだ、どうせろくでもないことを仕掛けるに違いない。だがエリシアさんは人を疑うことに関してだけは一向に学習しない。いい意味で黒くなることを、知らないのだ。超純水だってすぐに異物混入コンタミするぞ、と一部の界隈でしか通じないようなことを思う。そもそもどういう意訳なのかも分かってもらえなさそうな気がする。


 とりあえず行ってみるか。

 顔を見合わせて、階段を下りた。


 ルミアが呼びかけてきたのは爆撃試験の相手になってほしいわけでも機械組み立ての手伝いをしてほしいわけでもなかった。


 ふわふわ、もふもふした真白の毛並み。くりんとした瞳――だがしかし俺に言わせればその愛らしいな眼差しざで幾億もの人間の魂を撃ち殺してきた凶悪極まりない破壊性のある能力を兼ね備えているといっても過言ではない。現に俺も、その被害者の一人だ。

 そう、目の前にいたのは――


「猫?」

「みゅー」

「かわいいですね! 子猫さんじゃないですか」

「ネコに……さん付け……?」


 その愛嬌さに、エリシアさんもすっかりメロメロだ。なんかの拍子でこの猫と入れ替わらないかな。

 傍から見れば真顔だが、実際俺の脳は「ネコ(以上にエリシアさん)かわいすぎ。まぢ無理」で溶けかけている。


(確かにかわいいけど猫にしては妙に変わった鳴声だな。形も俺の知ってる猫より毛深くてなんか丸っこい)

 と理性を保つように分析をしてみるが、


「みっ」

 でも可愛いからいっか!


「生後一カ月あたりでしょうか」

「リビングで見つけたんだけど、迷い込んできたのかな」とルミア。指でふにふにネコをつついてるが、されてるネコは嬉しそうにコロコロ鳴く。


「でも、今までそんなことなかったですよね」

「まぁ、蒸気機関の熱気と騒音と臭気で鳥すら寄ってこないからね。逆に寂しいというかなんというか」

 そのおかげで危険生物も寄ってこないけどな。


「じゃあ、誰かが拾ったってことか」

 それか捨て猫押し付けられたか。いやこの町に限ってそんなことはない。

「フェミルが拾ったのでしょうか?」

「あーありそう! 森ガールだし」

「エルフだし」

「ハイエルフですよ」

 どっちでもいいよ。生物学的に種族が違うっていっても犬か狼か程度だろ。


 しかし噂をすれば以下略なんとやら――というフレーズがあるが、あれの続きって「影が差す」って言うの、知ってる人あんまりいなかったんだよな――フェミルが来た。


 金の瞳をあまり見られたくないことから、と本人から聞いてるが、ルミア曰く無表情の顔を見せるのが少し恥ずかしいようで、けど全部隠すと尚更目立って恥ずかしいということから、帽子代わりのヘルムを深くかぶっている。精霊族の感性は少々容易に理解しにくいところがある。


「……みんな、なに、してるの?」

 話すのが苦手なようで、感情を察せない声で途切れ途切れに発する。

「あ、ちょうどいいところに」

「なぁ、この猫ってフェミルが――」

「……っ、かわいい……」


 堕ちたーっ!

 今度は猫に屈したか!


「いやーあれは違うね。初めて猫という未知との遭遇を果たした瞬間だよあの光景は」

「あんなフェミルの顔みたの初めてだ」


 元から顔立ちが綺麗とは言え、いつも無愛想なはずの彼女がまるで愛娘を愛でる母のような眼差しをするとは――と喩えたいとこだが、あれが「無理。尊い」と悶絶しているとは俺たち以外誰も思うまい。


「和みますねぇ」

「あたしも猫っぽいのに、なんでフェミルんはあたしにああやって甘えてこないんだにゃー?」

 首を傾げるルミア。そのちっさい頭をごんごん僕の肩に当てないでくれます?


「ルミアはなんというか、猫の言う事聞かない自由奔放さが似てるよね」

「フッ、あたしはいつだってフリークスなフリーダムぅ!」

 まったそんな変なポーズをして。マイブームか。


「限度があります」

「改善しような」

「にゃー……」

「そのしょぼんとした顔やめい」

 そんな俺たちの姿など入ってるはずもなく、フェミルは猫に夢中だ。両手で抱き上げて見つめ合っていると思いきや、頬ずりを始めたではないか。悶え殺す気か。


「んん……んっ……!」

「みゅー、みゅっ」

「あっ、んん……っ」

 おい猫如きにそんなエロい顔すんな。


「これ猫が懐いてるのか、フェミルが懐いているのか分からなくなってくるな」

「あっ、ロダンさんはどうでしょう。今日いらしてますし」

「お、さっすがエリちゃん先生。それ可能性あるね。団長ああ見えて女心や子供心分かってるし、お茶目なところもあるし」


 俺もそう考えてたところだ。あの人はいい年してかわいいものや子供心くすぐられるようなものが好物だ。

 あと、時々俺たちに王都まで連れられてはご飯をおごってくれることがある。若い者と一緒に食べたり、その食べっぷりを視ることが好きだということは、それなりに前世で社会経験していた俺はすぐに汲み取れたものだが、俺も齢を取るとそういう若い力を求めるのだろうか。

 さっそく団長に訊いてみるか、と思っときだ。


「おい何集まってんだよ」


 げっ、ちょっとマズいんじゃないかこれ。

 この十字団の中で最も浮いてる――いや全員浮いてるキャラな気もするけど特に害があると言ってもいい下衆の極み野郎が、この女子力高い空間をぶち壊しにやってきた。不機嫌そうな声に、俺は振り返ると――

「あ、ジェイク、なんか猫がさー……」

「…………」


 俺だけじゃない。エリシアさんも、ルミアもフェミルも表情ごと硬直している。


 落ち着け俺達。これは何かの間違いだ。

 その思考を読み取ってくれたのか、同じ気持ちだったのか、ルミアは一つ一つ確認を取るように、ジェイクに問いかけた。


「念のために。念のために。万が一ってことも考えて訊くよ。何持ってるの?」

「皿」

「中は?」

「ミルクだ。それがどうした」

「水に溶かしたシンナーじゃなくて?」

「ミルクだっつってんだろ。目ぇ腐ってんのか」


 性根腐ってる腐れ外道に言われたかねぇ。


「……この猫は?」

「俺が拾った」

「……誰が拾ったって?」

「二度も言わせんな難聴。俺が拾ったっつってんだよ。賭博帰りン時、この雨ん中で弱ってたからよ」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 …………。


「…………は!? ジェイクが!? あの悪逆非道極悪非道のゲスの極みで! 酒! 金! 女! の! 3欲に強欲なヒモ男のジェイク・リドルが! 子猫を拾った!? 老若男女に容赦なく暴力を振るって美女には精力(意味深)を振るう弱肉強食がすべての下半身だけしか機能してない脳筋淫乱駄目男のジェイク・リドルが! 子猫を拾った!!?」


 ルミアの思考も爆発したのだろう、彼女の爆弾発言がいともこんなに簡単にポンポンぶっ放されるとむしろ気持ちがいいもんだが、ちょっと機関銃すぎやしませんか。


「うるっせぇぶっ殺されてぇか! 拾って何が悪いってんだよ!」

「いやいいって! そんなギャップ萌え狙わなくていいから! 不良が良いことして女の子のトキメキゲット☆とかベタだしいらないから! しかもミルクまで用意って、お母さんか!」


 今のどういう意味。


「そんなのジェイクじゃないから! いつもどおりクズなことしてみんなに罵られるのがジェイク・リドルだから!」

「なんだよその先入観!」

「事実だろ」

「じゃあこいつ見捨てればよかったのか? 今からこいつを蹴り潰して外に捨てりゃ俺らしいってか?」

「――ッ、そんなこと、私が赦さない」


 ネコ好きと化してしまったフェミルは守るべく、魔法槍を手から召喚させて……見事な一本フルスイングが腹に決まりました。これは痛い。

「おごぉ!? フェミルちゃん……俺ァまだ何も」


 ミルクこぼさなかっただけおまえの優しさが伝わってきたよ。


「ああジェイク、死んでしまうとは情けない」


 斜め後ろから唐突な変化球が来た。幻聴じゃないよね今の。


「あの、エリシアさん? あなたが言うとシャレにならないから。冗談いう人じゃなかったでしょあなた」

「へ? これを対象の名前と共に唱えると全快して復活するってカーターさんが……」


 あらもうやっだぁ、カーターさん何教えちゃってんの。


「なんでも信じ込むのはよくないと思うよ」

「えっ、嘘だったんですか!? どうして、なんでカーターさんが嘘を……」


 そんな絶望に瀕した顔をされなくても。


「いやーその反応が面白いというか素直に信じる先生が可愛いからだと」

「あーダメ信じられない。あたしの知るジェイクじゃなさ過ぎてごめんちょっと頭痛が痛い」

「頭痛が痛いって言ってる時点で相当だよそれ。というかルミアも言いすぎだろ。ジェイクだって人間なんだから別におかしいことじゃないだろ」


 いつもの行いがおかしいだけで。


「コレを人間というか」

「お前も大概だな」

「でも、確かに雨から助けたのはまさに善行です。褒められるべきことですよこれは」


 エリシアさん安定の立ち直りの早さ。

 ついでにジェイクの立ち直りも早いが、キレることなく何もなかったかのように起き上ってはミルクの入った皿をネコの元に置いた。さすがフェミルに惚れてるだけのことはあるな、沸点の差が激しい。


「素晴らしいです! これで一歩……業を積むことができたのですね……っ」

「先生、ここ泣くとこじゃない」

「……手を上げて、ごめんなさい。猫……ありがとう」

「ちゃっかり私物化宣言してるよ」

「まぁ、らしくはないけど、見直した。0.001mmぐらいね」

「1マイクロメートルしか見直されてねぇ」


「あーあーうるせーよおまえら。俺は単に女惹きつける道具として利用しようとしただけだ。使えなかったら煮て食うし。拾った理由はそんな感じだ。飼うつもりは毛頭ねぇ」

「……嘘だな」

「え、嘘なのですか?」

「だから信じすぎだって先生。そんな青ざめた表情しないの。ただの照れ隠しだよこいつの場合」


「黙れや童貞」

「お、おおう」

 ヤリ○ンに言われたくはないけど。


「もう付き合ってられるか。そいつの世話やっとけよ」

 付き合ってられなくなったのか、舌打ちしたジェイクはその場を去ろうとした。

「あ、猫……」

「みー」


 そんなジェイクを止めたのは白猫だった。ころころと転がるように足回りに寄り付く。

「おいついてくんな。あの女どもに可愛がってもらえって」

「みゅー、みっみっ」


 それでもすりすりと撫でるように身を委ねている。コロコロと喉を鳴らしているあたり、これはもう、


「懐いてるな」

「懐いてますね」

「懐いてるにゃー」

「羨ましい」


 フェミルの言う通り、これは羨ましい。今からでも町に出かけてずぶぬれになってるネコ捜してこようかな。

「この……目障りだからどっかいけってんだよ!」

「いや猫相手に怒鳴るなよ」

 はじめてだよこんなかわいい動物にガチギレしてるやつ。


「おいっ、なんでくっついてくんだよ鬱陶しい! 離れろ猫畜生!」


 ついに猛獣の足に引っ付くことに成功したようだ。よじよじと身体へと上っていく。それがかわいいもんで、俺も天国へ昇っていきそうだ。これを口にすれば白けるから心の中でとどめておこう。


「完全に懐いてるな」

「ぶふっ、マジウケる」

「ふふ、微笑ましい光景です」


 微笑む女神。人類全員がエリシアさんみたいな人だったら平和すぎて世界衰退レベルだよ。


「こんの、ちょこまかと……! 猫鍋にされてぇか!」


 なんか平和な方の猫鍋を思い浮かべてしまった。


「にゅふふ、にしてもあの猫、思った以上に粘り強い越えてMっ気があるにゃあ」


 おまえはいつまでその猫口調を続けるつもりだ。もとからそうだけども。


「恨めしい」


 おい羨ましいから一段階危ない方にランクアップしたぞ。逃げろジェイク。今度は刺されるぞ。


「さっきから怒鳴り声が聞こえるんだが、何の騒ぎだ?」

 二階から降りてきた老兵――にしては筋骨隆々のロダン団長。俺たちの騒いでいる声が気になったようだ。


「だんちょ~、なんかゲスの極みが子猫拾ってじゃれ合ってるのよさ」

「おい馬鹿、俺はじゃれ合ってなんかねぇ!」


 弁解は厳しいよジェイク君。猫引きはがそうとしているんだろうけど、シルエットだけで見れば楽しんでいるようにしか見えないからね。

 当然、ロダン団長は大笑いする。


「ははははは! そうか、良かったじゃないか。これを機にジェイクの心も清らかになるといいな! はっはっは」

「クソ団長! 俺はこんなちんけな動物如きに――おい顔面に張り付くんじゃねぇ、クッソ、ぶっ殺されてェのごぉお!」


 引きはがそうとしたところ目に肉球押し付けられている。ああ、みじめ……ルミア大丈夫か? 笑い堪えすぎて千鳥足になってるよ?


「あれは痛そうですね」

 冷静に見なくても。感心してる風だったけどすっごい他人事に聞こえたよエリシアさん。


「はっはっはっは! いやぁ羨ましい。私も動物は大好きだが、どうしてか威嚇されるか逃げるかで懐いてくれないんだ」

「団長はライオンでさえ脅えられる始末だからね」

「本当に悩ましいことだ。どうしてだろうね」


 いやもう見た目とオーラと実力の差でしょう。覇気すごいもんロダン団長。


「それで、あの猫飼うのか?」

「いえ、それは……まだ決めてな――」

「いっしょにいたい」


 そう言ったのはフェミルだった。じっと見つめたままお願いの眼差しをしてるが、まぁ、反対意見が出たら消されそうだな。槍で。


「あたしも飼っていいと思うよ。作業の邪魔をしなければね」

「エリシアさんは?」

「私も……ええ、私は別に問題はありませんが」

「素直になろうぜエリちゃん。本能をくすぐるあの魅力に委ねちまおうぜ」


 身長差もあってか肩を頑張って組み、悪魔の声を囁くルミア。いや悪魔でもなんでもないんだけどなんでわざわざそういう言い方するんだろうか。


「その言い草だと認めたくないですが……私も育ててみたいです」


 とりあえずエリシアさんのお許しが出たところで、ロダン団長もうなずいた。にしてもみんな飼い方わかるのかな。


「よし、それじゃあ飼うんだな。大事に育てるんだぞ」と猫をなでようとしたが、

「みゅーっ」


 おびえてしまい、ジェイクの方に逃げてしまった。


「おっと、すまないな。怖がらせてしまったか」

「団長がダメでジェイクはイイって……団長、ドンマイ」

「やっぱり助けた恩が大きいのでしょうね」


 ふむ、とロダンは少し悩む。割と本気で猫を撫でたいようだ。あれだ、猫好きなのに猫アレルギーを背負うジレンマ。


「んー、私もラザード王に頼んでみようか……懐いてくれる猫の手配」

「団長も本気だな」

「あ、それなら魔法で脳内操作すれば懐いてくれるかもしれません。リスク高い上に違法ですけど」

「ダメじゃん。てかえげつない」


「あたし知ってるよ、脳の扁桃核をぶっ壊せば恐怖心や嫌悪感とか、あと怒りも感じなくなるって」

「ルミアのやり方でそれやったら猫死ぬよね。あとそれ、好きという感情も失うから」

「マジでか。メル君物知り~。やったことあんの?」


「君と一緒にされちゃ困る」

「いやあたしもやってないからね!?」


「てことでジェイク、正式に飼うことになったから。よかったな」

「おい待て! 俺ァ雨が止んだら逃がすつもりだったんだ! 勝手に面倒増やすんじゃねぇ!」


 これを機にジェイクが変わっていくのかどうか。その変化があるのならば是非そうなってほしいと、俺は少し好奇心が湧いてきた。なにより改心されるのなら万々歳だし。

 ルミアほどではないが、このあとが面白くなりそうだ。

後半に続く。

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