表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光の距離  作者: 鈴音サラ
PR
2/12

2日常

 翌日、怜と一緒に帰る時に週末の予定を話した。


「今度親戚の集まりあるんだよ。マジ行きたくねー」

「へえ、大変そうだね」


 怜はいまいちピンと来ていないようだった。変わりに「今日もうち来るの?」と聞いてきた。


「行く行く!今週の週間ジャンボ読ませてよ」

「じゃあお昼食べたらまた」

「ほい」


 ふと、母さんに言われた手土産のことを思い出した。まだ何もないけどまぁいいか。

 近所という気安さから、半日授業をいいことに毎日怜の家に行った。そんな俺を怜のお母さんも笑顔で必ず迎え入れてくれる。

 

 そんなふうに過ごしているうちに、あっという間に憂鬱な週末がやってきた。

 

 俺たち家族は義男(よしお)叔父さんの一周忌に向かう。お寺でのお経は退屈だし、会食も気が重い。結局叔父さんを口実にして、親族みんなでお喋り会をしたいだけなのだ。

 やたらと広い座敷の間で食事を取った。親たちの話は聞きたくないので、早々に食べ終わった俺といとこの翔太は距離を取って待機する。


「佳奈ちゃんT大合格おめでとう」

「圭介くんは今年受験よね、結局どこにしたの?」


 親戚の叔父叔母はそんな話で盛り上がっていた。毎回よく飽きないものだ。母さんは適当に愛想笑いをしているが、父さんはその中で普通に会話をしている。

 嫌な予感がしたが案の定、その話題は俺に飛び火してきた。


「陽介くんは私立落ちたんでしょ?サッカーやめないからじゃない?」 

翔太(しょうた)くんは、O学園受かるなんて頑張ったわよねぇ」


 遠巻きに座っていた俺と翔太に対して誰かが言う。そして奥にいた叔父が、じろりと睨みを効かせてきた。


「陽介はどうせゲームばかりしてたんだろう」


 その場が一瞬静まり返る。そんな中「ゲームじゃなくて漫画だよな」と、横にいた翔太がニヤニヤしながら横槍を入れる。


「どっちも同じだっ!」


 叔父が大きな声を出すので、俺も思わず体がはねた。


「まあまあ、陽介くんだってまだ進路どうなるか分からないでしょう」


 その一言で、また適当な相槌やら会話がはじまる。


「お前余計なこと言うなよ」


 翔太を肘で小突いた。


「陽介が悪いんだろ」


 翔太は俺を小突き返すと、悪びれもせず持っていた文庫を読み出した。



 

 週があけると、いよいよ楽しみにしていた部活見学がはじまった。俺はもう決まっているので、他の部活には興味がない。

 怜には「美術部行くの?」と聞いたら、文化部は一通り見る予定らしい。ちょっと寂しいが、時間が合ったら一緒に帰ろうと約束した。

 サッカー部の見学には結構たくさん来ており、うちのクラスの吉田もいた。吉田も入る予定らしい。

 顧問の先生と部長の説明を聞く。部長は他の先輩よりひときわ体が大きく、高校生のように見えた。部員達に指示する時も、大声で怒鳴っていて結構怖そうだ。

 仲間がいたことに感謝する。

 初日だからか、参加できることはほとんどない。見学と少しだけボールを使った練習をさせてもらったのち、吉田とは軽く話して別れた。

 怜は終わっただろうか。下駄箱まで行ってみることにした。靴は残っている。サッカー部は結構時間を使ったので、そろそろ怜も来るかもしれない。

 人気のない下駄箱で、遠くの騒ぎ声を聴きながら待ってみた。日差しがないので少し冷える。

 身震いしていると、後ろから近づいてくる足音がして、振り向くと怜が立っていた。


「待っててくれたの?」

「いやそんなに」

「部活どうだった?」

「先輩めっちゃ怖そうだった」

「でも決めてるんでしょ、がんばって」


 笑いをこらえながら、怜は靴箱から靴を出すと丁寧に揃えた。


「そっちは決まりそうなのかよ?」

「やっぱり美術部かなぁ…」


 そういうと怜の顔が曇った。口ぶりから、美術部もそんなに入りたい感じではなさそうだ。


「まぁそっちもがんばれ」


俺は怜の前で軽く握りこぶしを作って見せ、そのまま歩きだした。


「そういえば、陽介は委員会のアンケート書いた?」


 怜はカバンからプリントを取り出し俺に見せる。


「あ、忘れてたわ。怜は何にする?一緒にやろうぜ」

「僕は美化委員かな」

「美化委員って掃除の?」

 怜に苦笑をされる。

「清掃もだけど、花壇の世話とかもあるよ。そういうの好きだからいいかなって」


 部活の時とは違ってはっきり決めているようだ。正直面倒くさそうだが、怜がいるならまあいいか。


「俺もそうしよ」


 そんな話をしているうちに、別れの十字路に着く。日がだいぶ伸びてきたせいで、そのまま遊びに寄れそうな気になるがもう17時をすぎていた。


「なぁ、怜のうちって土日どっちか遊びに行っても平気なの?」

「え?別に僕の部屋でなら大丈夫だよ」

「じゃあさ、土曜日学校終わったら遊ばない?」

「わかった、お母さんたちに言っておくね」


 そう言ってまた別れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ