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なんでもないよ




 ふいに。


 あなたの服の裾をくん、と引っ張ってみる。


 足を止めて私の方に振り向き、あなたはきょとんとした顔で私を見下ろしながら「どうしたの?」って言う。


 私はあなたの胸にぎゅっと。


 静かに抱きつく。


 優しく、けれども強くあなたに抱きつく。


 あなたはなになに?と言いながら、私の背中を優しく撫でてくれて。


 私はあなたに抱きつきながら、顔を上げてあなたを見上げる。


 あなたは、心配そうな優しげな表情かおで私を見下ろして。


 私はそんなあなたを見上げながら、泣きそうになる。


 口を開いて────きゅっと口を閉じ。


 「……好きだよ」


 って、私は言って。


 誤魔化した。


 あなたのことが好きなのは嘘じゃない。


 けど、今その言葉を言おうとしたわけじゃない。


 本当は、もっと言いたいことがあったけど、やっぱ言えなくて。


 あなたは優しいから。


 本当に言いたかったことは、喉の奥に流してあなたに胡散臭い表情かおで微笑んだ────






 

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