勘違い
「ほら、あたしってこんなナリじゃん? だから周りが警戒して近づかないのよね。目付きも鋭いし怒ってるように感じ取られてるのよね」
「はあ……」
どうでもいいけど、なんでこういうギャルっぽい容姿のやつって他人は自分のことを全て分かってる前提みたいな話し方なんだ。 なに、有名人気取り? 学校じゃ目立つのかも知れないが一歩外出れば有象無象な存在だからな?
「ちょい質問」
「どうぞ。異論反論抗議口答え以外なら認めるわ」
「ほぼ駄目じゃねーか! っていうか何で相談者のお前が上から目線?」
「あんたが先に相談持ち込んできたんだからその関係性はどうであろうと継続される。分かるわよね?」
ズビシとストローの先を俺に突き付け怪しい会社の契約項目の一つみたいなのを呟くユリカにため息を吐きつつ、反論の言葉を呑み込んだ。
確かにこればっかりは仕方ないのかもしれない。俺の相談に乗る条件がユリカの相談を解決させることなのだからユリカの言い分は一理正しい。
「俺が言いたかったことはだな……つまり今のお前の容姿に合ったレベルの子と友達になればいいだろって事だよ。つーか声とかかけられるだろ」
大抵は見た目がチャラいやつはチャラいやつとつるんでいる。地味めな子は地味めなことつるむ。チャラいやつ地味めな子と仲良くしている光景はあまり見受けない。
これは同姓に限らず異性にも適用する。誰しも自分に見合った相手と付き合いを共にしている。言ってみれば世の中の暗黙のルールだよな。まあ俺と悠人みたいああな特例もあるっちゃあるが。
これは悠人の特殊アビリティが炸裂しているだけだろう。いつだってあいつを中心に物事は回っているのだ。
「それが出来るなら始めからしてるっての」
「それもそうだな。いやでも顔は良いって周りからは言われてんだから声かけてきた子と仲良くすればいいじゃねえか」
俺がそう言うと、ユリカはあからさまに不満そうに唇を尖らせていじけた様子で鮮やかな金髪の毛先をクルクルと弄りだした。
「分かんないの……」
「は?」
「だからあ! そういうタイプの女の子と接してこなかったから全く会話が出来ないのよ!」
頬を朱色に染めてフンと照れた感じで窓側に顔を向けてしまったユリカにバレないように苦笑する。
そうだったな。ユリカはさっきも述べたが元は藤宮寄りの性格だった。姿こそこんな見た目だが中身は全く変わっていない。今だってユリカはかなり無理をしているはすだ。
あんなにも大切にしていた黒髪を痛めてまで金髪にしたユリカに「なら、黒髪に戻せよ」なんて無責任な発言はしない。
ユリカの金髪は反抗の具現化であり、また精神を安定させている存在でもあるのだから。
「なんとなく話の形は見えてきたんだけどよ。1つ気になることがある。何で今さらなんだ?」
「なにがよ」
窓から俺の方を向き腕組みするユリカ。本人はプレッシャーをかけているつもりなのだろうが未だにピンク色の頬のせいで台無しである。
「いや、お前って一匹狼の伏があっただろ。他人は信用しないなんて豪語していた時もあった。なのにお前の口から友達がほしいなんて聞いた時はビビッた」
そしてタイミングが良すぎる気がする。俺と藤宮が出会ったのをキッカケにして何かが動き出しているような。ユリカの裏で誰かが糸を引いてる気がしてならなかった。
「わ、わたしが友達ほしいなんていうのがそんなにおかしい? そりゃわたしだって欲しくなる時はあるでしょ。夕食時にアンタが楽しそうな顔して話してんだからさ」
「そんなの毎日のことだろ? 悠人や青葉の話なんて。それでこのタイミングで友達が欲しくなるとは……」
「悠人や青葉さんのことじゃなくてその人の話をしてるときのアンタが楽しそうだっていってんの」
ユリカは今までは意識して見ないように努めていたみたいだが観念したように苦虫を噛み潰した表情を浮かべ遠崎に視線を送った。
すると藤宮も今の話に反応し、勢いよく俺に首を傾ける。俺はその視線から逃げる為にユリカに顔を向けた。なんだこの三竦み。勘弁してくれ。
「里中さん、私のことご家族の方に話してたんですか!?」
「いやー、なんというかだな」
「しかも楽しそうに私の恥ずかしいことも話してたんですか!?」
「ん? ちょい落ち着けよ藤宮。楽しそうにっていうのを悪い意味に捉えてないかい?」
しかし藤宮は止まらない。顔は困惑した表情で視線が流れまくっている。とても聞く耳を持ちそうな雰囲気ではない。
「私が筑見君が好きだってことも言いふらしてたんですね。ショックです!」
「お、おーい! 藤宮さんどこに行くんだよ」
「帰ります!」
そう言い残し藤宮はファミレスから飛び出していった。あんな藤宮を見たのは初めてだ。誤解を解かなければいけないのだが俺は席から立ち上がれなかった。
今行っても逆効果というのもあるのだが、もう1つ大きな問題があった。藤宮が投げ捨てていった地雷の回収である。
「あの人、悠人のことが好きだったんだ。なんていうか以外っていうか、私はてっきりアンタと付き合ってるもんだと」
目を丸くし驚いた感じでコップに手をのばしたが掴みきれず、液体がこぼれ落ちた。慌てるユリカを後目にフキンでテーブルにこぼれた液体を拭った。メンタル弱すぎだろ。お前。
そう。里中ユリカもまた筑見悠人に好意を持っているのである。
◇◇◇
勘違いしてほしくないが、俺は藤宮のプライベートに対しては一切触れていない。悠人のことも好きなやつとしか言ってないし。
「まあ、ああいった一面もある面白い子なんだよ藤宮は」
「でも、あそこまで取り乱すってことは前にも似たような事があったんじゃないの?」
「昔か……」
誰にだって汚点や思い出したくないことがある。もしかしたら俺も間接的に彼女に何かしてしまったのかも。だったら謝るしかない。
「とりあえず藤宮のことは後でなんとかする。それで話を戻すが具体的にどんな子と友達になりたいんだよ」
「どんなことってわけじゃないけど1人なってみたいこはいる」
「へー地味めな感じか?」
コクりとユリカは首を縦に振った。だけど地味めな子はユリカを良くは思っていないに違いない。なにせ端から見たらただギャルだし。
「でも友達ってなりたくてなるようなもんじゃねえと思うんだよなあ」
「え?」
「いや……何でもない、そろそろ帰ろうぜ。時間も遅いし話しはまた明日だ」
俺は伝票を持って先にレジを目指すが未だに違和感は消えない。この違和感がなんなのかは詳しく伝えられないが、悠人と青葉が関係しているのは間違いなかった。




