課題初日
いよいよ始まったアンデッドの大軍の討伐。初日は戦いの見学です!
城塞王国とも呼ばれるこの国の城壁は、国土全体を見上げる程高い城壁で囲んでいる。これは二代前の国王が、アンデッドの進行と他国との戦争が起きた場合を想定し、国民を守るために作ったものだ。
費用は国を守りたいと願う貴族達や有名冒険者達からの寄付と、昔から少しずつ蓄えていた国費の余剰分を使った。もしかしたら先代の王はこのことを想定していたのかもしれない。
そして、この城壁は上から外を一望出来るように作られている。アンデッドと戦う討伐軍の姿をここから見ることが出来る。
戦っている場所が遠いのが欠点だが、城壁に沿って耐魔法の障壁も張られているので安全性は抜群である。
そして、遠いという欠点も、遠くの討伐軍の姿を映し出してくれる魔導具が設置されるので問題にならない。
生徒達も向上心がある者達ばかりなので、映し出される討伐軍の戦い方を見ながら、自分ならどう戦うかを話し合ったりしている。
基本的には、国のためにと尽くそうとするいい人達なのだ。度が過ぎて先日の演習乱入の様なことも起きてしまうことはあるが。
アンデッド達は1万を超える大軍だった。城壁からは小さな黒い点が雪崩込んでくるのが見える。
討伐軍も国を守ろうと突っ込んでいく。そして二つの勢力がぶつかり、戦いの火蓋が切って落とされた。
討伐軍は数人の小隊単位で連携を組みつつ、前線を構築し応戦していく。盾を持った兵士がしっかりと攻撃を受け止めることで、後ろに控える魔法使いへの攻撃を防ぎ、魔法使いがその火力でアンデッドを一掃していく。横を抜けそうになった場合は槍士が長いリーチを活かしてしっかりと食い止めている。見事な連携だ。
ある程度戦うと後ろで待機している別の小隊に交代して、回復を行う。その判断は小隊を束ねる中隊長が行い。各小隊の状況に注意深く目を配っている。
そして、不測の事態に対しての救援部隊の派遣や前線の兵力の調整をそれらを束ねる大隊長が行っている。
統率の取れた見ていて安心できる戦いだ。兵士個人への負担もかなり抑えられている。これならばかなり長時間戦い続けられるだろう。
そんな中、スクリーンが一人の女性を映す。先程までの兵士達の様に、統一された鎧やローブではなく、所々に追加装甲を付けた制服の様な物を着ている。
その周りには他の兵士はおらず、その一帯にいるアンデッドを彼女たった一人で殲滅している。身体強化の魔法を使っているのか移動速度や攻撃力が明らかにおかしい。拳を軽くゾンビの頭に当てたら、その頭が吹き飛んで消えてしまう程だ。そして、蹴り一つで数体のスケルトンをまとめて吹き飛ばしている。
よく見ると昨日マグロさんの店の前で見た女の人だった。彼女はアンデッドを次々と倒していく。1000体は軽く倒すというのは本当だったようだ。あの調子なら今回の戦闘だけで2000体はいくだろう。
「おぉ!王女直轄部隊長様だ!」
「かっこいいですわ!」
「ふつくしい……」
生徒達も声を上げずにはいられない。女生徒側からの声がかなり大きいのは当然だろう。今、生徒達の将来の夢の一つが今映し出されているのだから。
討伐軍を目指す女生徒達の多くが彼女の様になりたいと願っている。彼女のように強く、美しく、国を守れる人になりたいと。
それ故に、その一挙一動に目が離せない。
今度は別の人が映し出される。白い髪を短く揃え、白い髭を生やした顔は、かなり年をとっているのがわかる。しかし、振る剣の速度、精度は他の兵と比べると圧倒的に速く、正確だ。
ジェイス・アクターノ、それが彼の名前だ。
「剣神だ!」
「おい!剣がまるで見えないぞ!どれだけ速いんだ!」
「渋いおじ様!素敵ですわぁ!」
剣神と呼ばれる彼がアンデットと戦い様はまさに鉄壁である。彼がいる限り、敵が来ることはない。
そして、彼の後ろに並ぶ魔法使い達が放つ魔法によって次々とアンデッドが倒れていく。
今度は男子生徒の方が声が大きい。あれは、魔法学区の隣にある戦士学区の生徒達だ。ジェイスの剣が振られる度に歓声が上がる。
戦士学区の剣士は彼を目指す者が多い。国を背負ったジェイスの背中には惹きつけられる何かを感じるのだ。
討伐軍はその後も順調にアンデッドと戦い、第一波を完封した。数時間にも及ぶ戦いに兵士達も疲れているようだったが、皆笑顔だった。
見学していた生徒達は、国を守った立派な人達に惜しみない拍手を送った。そして、いつか彼等のようになるんだと、今まで以上にやる気に溢れていた。
前回が少なかったので頑張って書き上げて早めに投稿してみました。喜んでくれたらいいなぁと思います。基本週一以内を守っていこうと思いますのでよろしくお願いします。
評価くれたら嬉しいであります(`・ω・´)ゞ