第二話:お姉ちゃん! 言質とったよ!
「お姉ちゃん、今日はどんな髪型にする?」
「んー、適当でいいよ?」
「えーっと、じゃあハーフアップでいい?」
「オッケー!」
朝食を食べ終わると、次はお姉ちゃんの準備を手伝う。
その中でも髪を結ぶのは私の仕事だ。
お姉ちゃんは自分でするっていうけれど、私が根気よく説得したら折れてくれた。
だってお姉ちゃんの可愛さを引き立てるのは妹として当然の役割だと思う。
まあそんなことしなくてもお姉ちゃんは最高に可愛いんだけど。
前に座っているお姉ちゃんの髪の両サイドからひと房ずつ、適度な量の髪を摘まんでくる。
すると掴み取れなかった一部の髪が、小川のせせらぎみたいにさらさらー……っと流れて戻っていった。
ああ……綺麗な髪……。
そのままシャンプーのCMに出られそうなくらい。
ふわっといい香りまでするし、頭がおかしくなりそう。
もしもこの中に埋もれたら何日でもぽーっとしたまま暮らせる。自信しかない。
そんなことを考えながらも私の手は半ば自動的にお姉ちゃんの髪を可愛く仕上げていく。
お姉ちゃんは髪を撫でられているときはとても気持ちよさそうに目を細める。
この瞬間は最高に幸せ。
比翼連理って言葉は私とお姉ちゃんのためにあると確信している。
「よし……出来たっ!」
「ありがと、凛」
「ううん、私が無理言ってやらせてもらってることだし」
「別に無理ってわけじゃないよ。ただ、そこまで凛に負担かなって」
「全然負担じゃないよ! じゃ、じゃあさ、これからもずっとしてもいい?」
「凛さえよければ、もちろん」
「やったぁ!」
やったぁ! 言質とった! これって一生一緒にいてもいいってことだよね? 結婚? 結婚だよね?
うわぁー……嬉しい……。涙でそう。
今日は記念日だ。帰りにケーキ買ってこないと。……ううん、作る方がいいかなぁ?
うん、それがいい。市販のケーキじゃ全然足りないよね。量じゃなくて愛が。
お姉ちゃんは「そんなに喜ばなくても……」と苦笑してるみたいだったけど、私にとっては一大事だ。
でも嬉しいな。お姉ちゃんもずっとずっとずーっと一緒にいてくれるつもりだったんだ。
しかもそれを当たり前だと思ってくれてるってことでしょ? 最高じゃない?
でも、それならときどき彼氏作ってくるのはなんのためなんだろう?
よくわからない。もしかして嫉妬してほしいのかな?
んー、でも何か違う気がする。
だってそれなら、彼氏を寝取った後、私を睨む意味がわからない。
もちろんそんなお姉ちゃんの視線も最っ高に大好きだし、私にとってはむしろご褒美なんだけど……。
あ、もしかしてお姉ちゃんも嫉妬してるのかな?
私が男の人と寝たりなんかしたから。
えへへ。それならそうと言ってくれればいいのに。
お姉ちゃんのあの蔑んだみたいな視線を浴びられないのは残念だけど、お姉ちゃんがどうしてもやめてって言うならもちろんやめる。
そしてふたりだけでラブラブぐずぐずになって暮らすんだ。
ただ現実的には、バイト禁止の高校生の私には財力が足りなくてまだ出来そうにない。
だけどそのための準備は欠かしてない。
将来の礎にするための学校の勉強はもちろんのこと、投資なんかも少しずつ学んでいる。
とりあえずその足掛かりとして、今度ファイナンシャルプランナーの試験を受けるつもり。
役に立つかどうかわかんないけど、とっておいて損をすることはないからね。
そしてそして、最終的にはお姉ちゃんにはずっと家を出ずに生活してもらうんだ。
仕事なんてさせるわけにはいかないよ。
だってお姉ちゃんの魅力にかかれば男も女も等しく危険だもの。どんな職場だって安心できないもん。
と、そんなことを考えていたらお姉ちゃんが立ち上がった。
準備の終わった鞄を掴んで凛とした姿勢で立つ。
ああ、かっこいいなあ、もう。
「――じゃあ、そろそろ学校行こっか?」
「うん!」
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