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4.巣立つ時。

応援して_(:3 」∠)_ください。

お願いいたします。






「両親との思い出の村、ね……?」

「良かったのですか、ケイロン様」

「本人が故郷を離れたくない、って言っているんだ。俺には無理強いする権利はないし、そんなことしたら嫌われちまうだろう?」

「それは、そうですが……」




 魔女と呼ばれた彼女の小屋を出て、ケイロンとニアはそう話す。

 彼女曰く、いくら嫌われようとも故郷に変わりはない、とのことだった。

 両親が住んでいた家は残してもらっているし、そこにはたくさんの思い出の品がある。だから、何もかもを捨てて出て行くことはできないのだ、と。




「たしかに、あの方の気持ちも分かりますが……」

「安直だ、って言いたいんだろ。ニア」

「う……」




 従者の口振りに、ケイロスは深くため息をついた。

 その上で、静かにこう語る。




「人の心ってのは、それだけ複雑なんだよ。帰る場所があるっているのは、心の安定に繋がる。その安定を捨てるっていうのは、簡単じゃない」




 ただ、その上でこう続けるのだ。





「だけど、俺も思うよ。この環境は、あの姉ちゃんにとって『猛毒』だ」――と。





 どれだけ縋っても、帰る場所が必ずしも安寧の地とは限らない。

 ケイロスはそう言ってふと、木々の生い茂る森の方を見た。




「どうされたのですか? ケイロス様」

「これはちっと、ヤバいかもな。――ニア、戻るぞ!!」

「ええ!?」





 そして、一気に駆け出す。

 ケイロスは真っすぐに、彼女の小屋のあった方へと向かうのだった。














「この場所を離れて、か……」





 今まで、そのような提案をされたことはなかった。

 私はケイロスの言葉を反芻し、噛み締めるように繰り返す。しかし、何度繰り返しても出る答えは同じだった。

 両親が残した場所。

 自分が生まれ育った村。

 そして、そこで病に苦しむ人々を捨てては行けない。




「もしかしたら、私は相当の馬鹿かもしれないな」




 もっと、利己的かと思っていたけれど。

 歳だけ重ねて、根っこの部分はまるで乙女のようだった。

 だが、もう遅い。ケイロスたちは帰ったのだ。戻ってくることはない。





「ん……?」





 そう、考えていた時だ。

 なにやら、外が焦げ臭いのが分かったのは。




「もしかして、火事……!?」




 立ち上がった私は、とっさに大量の『やけど治し』をかき集める。

 どれくらいの被害が広がっているか、まだ分からない。出来得る限り、村人全員を救えるだけの薬を抱えて、私は大急ぎで小屋を出て――。










「…………え……?」










 目の前で、農具を構えて立つ村の人々に言葉を失った。




「今日が、最後だ……この、魔女が!!」




 そう言って、先頭の男性が鍬で私の顔を殴打する。

 為すすべなく一撃を喰らって、薬を投げだしながら受け身も取れずに転がった。すると、そんな私目がけてさらに、他の村人からも攻撃が加えられる。



 ――痛い、痛い、痛い痛い痛い。



 皮膚が裂け、血が流れる。

 ぶたれた箇所が、うっ血して青くなっていく。

 骨が折れたのだろうか。足首が、変な方向に曲がっていた。




「さっさと死ね! 死ねといっているだろう!?」





 狂ったように叫ぶ村人たち。

 私はそれを見て、改めて自分が『魔女』なのだと悟った。

 どのように村へ貢献しようとも、人ならざる者であることは変わらない。人は己と違うものを恐怖し、排斥する生き物だ。とりわけ姿形が同じなら、より恐ろしい。


 私は結局、誰のためにもなれない。

 そう諦めて、ゆっくりと目を閉じようとした。



 その、瞬間だった。





「――控えろ、下衆共!」





 彼が、私たちの間に割って入ったのは。

 ケイロスは村人たちに向かって、威風堂々とこう宣言する。





「貴様たちが手を出したのは、俺の命の恩人であり、大切な親友に他ならない。したがって――」






 明らかな怒りを含んだ声色で。







「ガリア王国第三王子、ケイロス・ガリア・アスクレイオスの名のもとに、貴様らを処罰する!!」――と。










 







 ――すべてが終わった。


 村人は散り散りになって、どこかへ行ってしまった。

 残されたのはボロボロの魔女と、彼女に肩を貸すケイロスとニア。彼らは燃え盛る森から脱し、一つ高い場所にある丘に腰かけていた。




「…………ありがとう」

「ん?」




 そうしていると不意に魔女が言う。

 感謝を口にして、膝を抱えて、顔を隠すように埋めてしまった。

 ケイロスもニアも、それ以上はあえて何も言わない。ただ、数秒の間を置いた後にこう訊ねるのだった。





「そういや、姉ちゃん。……名前は?」――と。





 そういえば、自己紹介がまだだった。

 今さら元の場所には戻れない。




 こうなっていまっては、元の生活には戻れないのだ。

 それでようやく覚悟を決めた魔女は、王子に自身の名を告げた。






「…………アリス」






 小さな、気弱な女の子のように。

 あまりに愛らしい名前に、ケイロスは思わず微笑んだ。






「そっか、よろしくな。……アリス」






 ゆっくりと、彼女の隣に腰かけて。

 皮肉にも美しく瞬く星空を見上げるのだった。






 これが、一人の魔女と第三王子の出会いだった。





 


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