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呪いをかけられ婚約破棄をされた伯爵令嬢は仕事に生きます!なのに運命がグイグイ来る。  作者: みなみのうさぎ


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56/63

56 誘拐

「ダミアン」


 どんどんと遠くで何かが叩かれている音がする気がしてリリーは重たいまぶたを開けた。


「ええ?」


 見たことのない天井にリリーは驚き飛び起きる。すぐさま頭をぐわんと痛みが襲った。


「うぅぅぅ」


 もう一度布団の中に潜り込んだリリーの耳にドアを叩く音が届いた。


「ダミアン。ダミアン。起きてるか?」


「ジョージ?」


 回らない頭でここがどこなのかを考えたリリーはやっと自分の今いる場所がわかった。


「食堂の部屋だ……」


 給仕の女性が連れてきてくれた記憶が蘇る。

 大丈夫大丈夫と繰り返してドアに自分で鍵をかけた覚えがある。


(よかった。女だってバレるところだった)


 リリーはベッドから抜け出し、床に落ちていたかつらを深くかぶり直す。

 少しふらふらするがなんとかドアに辿り着く。ドアを開けるとジョージがドアの前に立っていた。


「おはようございます」


「お前まだ寝ぼけてるな。しっかりしろ。どうやらアデノフォラ家のご令嬢がさらわれたらしい」


 そういってジョージは気まずそうにリリーを見た。


「は?え?どういうことですか?」


 言われた言葉の意味を咀嚼するのに時間がかかる。リリーはまだ寝ぼけているようだ。


「昨日の夜のことだ、アデノフォラ家の、ご令嬢を、さらう賊が、目撃された」


 もう一度ジョージが言葉を区切りながらリリーに告げる。


「昨日の夜、賊が……」


 やっと言葉が理解できたリリーは叫んだ。


「そんな……リア!!」


(いったいどうしてリアが。お腹に赤ちゃんがいるのに。早く見つけ出さないと)


 わがままだがたった一人の妹なのだ。ましてや妊娠中にさらわれるなんてどんなに怯えているかとリリーはリアのことを思い動転していた。


「犯人は?騎士団の手配は?すぐに助け出さないと赤ちゃんが!!」


 ジョージの服をつかんでリリーは叫んだ。


「赤ちゃんって。それは……やっぱりお前の子供なのか?」


 リリーの勢いにジョージは戸惑いを隠せない。


「いいえ。アルフォンスの子供かもしれないですがまだ分からなくて」


 リリーはそう手短に言うとジョージを押しのけて部屋を飛び出そうとした。


「待てよ。騎士団の方で今探してる。落ち着けよ。一緒に王宮まで行こう。心配なのは分かる。お前の大事な人だからな」


「はい。すみません。取り乱しました」


「いいさ。宿屋の裏に馬車をとめてある。いくぞ」


 ジョージがリリーの肩をたたきあるき出し、リリーもともに進んだ。

 が、数歩進んでついてこないトリスタンの気配を探して振り向いた。


「子供。やっぱりダミアンは男なのか……アデノフォラ嬢とそういうことを……」


 トリスタンは廊下の隅で自分の手を見つめて首を傾げていた。


「なんだっていうんだ?」


 その姿を見て自分も首を傾げるジョージであった。







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